表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
審判の実  作者: 葉月 涼
5/15

05

「おとーさん、お山から声が聞こえるよ」


 震災から一夜明けた早朝。その異変に最初に気が付いたのはグリム山東部の農村に住む一人の少女だった。


「あん?声?・・・・・別になんも聞こえねぇじゃねぇか。いいからお前も手伝え、怪我しねぇようにな」


「う、うん・・・・・」


 少女は一度グリム山に目を向けた後、父親が横に除けた瓦礫から薪に使えそうな木材を選り分けていった。


「・・・ハァ・・・・・村長は当てになんねぇし、他の村や町も似たようなもんだろうしなぁ・・・・・自分等で何とかするしかねぇか・・・・・」


*


*


*


 熱い―――


 我が自我を得て初めて感じたのは己が身を焼き続ける激しい熱と破壊と再生を繰り返す痛みと苦しみ、そしてその度に込み上げて来る強大な力と歓喜だった。


 グアアアァァァ!!


 呻き声を上げ地面を転がり続け、熱と痛みが収まったのは夜明け近くだった。


「・・・・・クックックックックッ・・・ガハハハハ!!よい、よいぞ!なんと素晴らしい力だ!!」


 腹の奥底から湧いて来る魔力と言う名の力に歓喜の声を上げた。


「さて・・・この力を授けて下さったお方は・・・・・ふむ・・・まだ現れてはおらぬか・・・・・」


 感覚を研ぎ澄まし周囲を探る。己が身から溢れる魔力と同質同等の物は幾つか感じるが我以上の物は何処にも感じなかった。


「となれば、我が成すべきは唯一つ!主が現れるその時までこの地を護り抜く事!さあ!集え同胞よ!!我等が主の顕現するその時まで、共にこの地を護り続けようではないか!!」


「「「「「おおおぉぉぉぉ!!」」」」」


 周辺に居た者達が我下へと集ってくる。我等はその数を増やしつつ山を下って行った。


 主よ、そのお姿を拝謁出来る日をお待ちしておりますぞ。


*


*


*


 帝都を出てから一晩中馬を走らせ、帝都の北に位置する町へ到着したのは翌早朝だった。


 正直このままでは私はまだしも、部下達の体力が持たないだろうし、間違いなく馬が潰れてしまう。聖王殿には悪いが町の状態次第では数人に休みを取らせる事を進言せねば。


「酷いなこれは・・・・・」


 だが町の状態を目にし、休息など取っている場合ではないと判断した。


「至急陛下にお知らせしませんと」


「うむ、誰か急ぎ陛下にこの状況をお伝えするのだ!」


「団長、私が行って参ります!」


 崩れかけた外壁や南門、そしてその隙間から覗く倒壊した建物と泣き崩れ、打ち拉がれた人々。その余りにも酷い惨状を目にし、部下へと伝令を頼むとアルベルト殿が制止の声を上げた。


「待て!勝手な真似をするな!今の貴様等にはその権限は無い!!」


「なっ!?」


 聖王騎士団長のアルベルト殿ともあろうお方が信者を含めた臣民を蔑ろにするかのような声を上げた事に驚きの声を上げると聖王殿が口を開いた。


「良いですか、魔王討伐が私達の最優先事項です。相手の戦力が未知数な以上、他の事に割く人員など無いのです」


 言っている事は理解出来る。だが、我々帝王騎士団の最優先は本当に居るのかも解からない魔王の相手などではなく臣民を護り助ける事だ。


「聖下、申し訳ありませんが承服出来兼ねます。緊急事態条項はあくまでも民のために有り。目の前で助けを求める民達を放っておく事は帝王陛下の命に背く事になります。この先の御山の麓に点在する四つの農村の内何処か一つでも魔物や魔王に襲われていると言うのであればこの命を賭ける事は厭いません。ですが今、目の前で助けを乞う臣民達に対し、たった一人の伝令すら出すなと言うのは帝王騎士団団長として看過出来かねます」


「ふむ・・・良いでしょう好きにしなさい。ですが、この件で貴方の進退とマルクスの責を後日問う事とします」


「ご随意に。伍長!大至急陛下に今見聞きした全てをお伝えするのだ!!」


「ハッ!了解しました!」


 私の判断は間違っていない筈だ。陛下ならば私の意図を正しく汲み取り、私を罰する事などないと伝令を送った。伍長、頼んだぞ。


 私の主は帝王陛下只一人。貴様の言いなりにはならんぞ聖王。


*


*


*


「グギギギギ・・・・・くゥ~・・・ま、ガ、れええぇェぇ!!」


 魔導炉から出した鉱石を棒状に伸ばした物を万力に挟んで設計図通りに曲げて行く。


「ッアぁぁぁ・・・ふぅ・・・・・デ、これにマどうかいろヲきざむのか・・・・・ん?ん~?・・・すみマせん!だれか~・・・・・そっか・・・おレひとりにナったんだよナ・・・・・」


 自分の感覚ではつい昨日まで皆が居た。だがそれはもう昔の事なんだと泣きたくなった。


「・・・・・ハァ・・・ひとりにナるのはあのときいラいだけど・・・なンばいもつれぇよ・・・みんナぁ・・・・・」


 ベインさん、ジャスパーさん、スライブさん、リッキーさん、ルーカスさん、セントスさん、エリンさん、ハロルドさん、ゴルドさん、そしてベルモンド所長・・・皆俺を家族として扱ってくれた。


 俺の出自を知っても誰一人として追い出す事無く普通に接してくれて様々な事を教えてくれた。


 だからどんなに辛くとも、俺には難しくとも、続けなくちゃいけない。


 皆が俺のために残してくれたのだから、如何に困難だとしてもやり遂げなくちゃいけないんだ。


 そうだ、俺なら出来るとそう信じて残してくれたのだから。

ここまで読んで頂き有難う御座いました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ