04
書棚を端から端まで調べたが装備の設計図は見つからなかった。
「ん~・・・そウか、かジばにおいテあるのかナ?」
設計図な訳だし、ここに置いておくより鍛冶場に置いてある方が適切だろうと来た通路を戻り、工房の隣にある鍛冶場へと向かった。
通路を歩いている内に冷静さを取り戻した。
最低でも百五十年は経っているのだから教祖が生きている訳が無いし、グランバート教が現在如何なっているのかも解からないのだから装備を作り終えてから外へ出て調べる事にした。
まぁ、この姿で出歩いたら大騒ぎになるんだろうけど。
工房に入るとさっき転がり落ちた人格転送機が目に入った。この下には特殊魔導溶液に浸かった俺の、人間だった時の身体がある。
『成功確率は低いが元の肉体に戻れない事も無いよ。まぁお勧めはしないが』
人格転送の説明を受けた時の所長の言葉が頭を過る。
「しょちょウ・・・おレはもどりませンよ・・・・・このすがタでいつづけることガしょちょウたちのけんきュうせいかそのものですかラ」
人格転送装置の横を通り、鍛冶場への扉へと手を掛け押し開けた。
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帝王陛下の命を受け、直ぐに動ける者達三十名と共に教会へと馬を走らせた。
「緊急出動要請が実際に下されるとは思いませんでしたね、団長」
「ああ・・・だが魔王が生まれたとか魔物がグリム山から下りて来ると言うのだ、緊急出動要請にも頷ける」
「その・・・魔王が生まれたと言うのは本当なのでしょうか・・・・・」
「解らん。だが麓の四村の被害の確認も出来るのだ、悪い話でもあるまい」
「あ、確かに。確認後直ぐに報告を上げれば陛下も対策を取りやすいでしょうし」
「うむ」
部下達と会話しつつ移動し、教会の中庭へと入るとそこには聖王殿を含めた聖王騎士団が整列していた。
まさか聖王殿直々に出陣なさるのか?いや、魔王が生まれたと言う話が真実ならばそれも理解出来るが・・・・・
「聖王殿、遅くなって申し訳ありません!これより緊急事態条項に則り帝王騎士団は聖王騎士団の指揮下に入らせて頂きます!」
「いえいえ、このような事態ですからね、貴方達帝王騎士団が治安維持で忙しい事は理解しておりますよ。それよりも、少々人数が少ないようですが?」
馬から下りて膝を付いて聖王殿に挨拶をすると、聖王殿は遅参の件を快く許してくれた。
「ハッ!副長には本部にて後方支援を任せております。他の者は補給物資の運搬時に順次合流する運びとなっております!」
「ふむ、でしたら問題はなさそうですね。では出発しましょうか、アルベルト」
「ハッ!総員出立する!何時戦闘になるか解らぬ故油断せぬように!」
「「「「「ハッ!」」」」」
聖王殿が聖王騎士団長のアルベルト殿に声を掛けると聖王騎士団が北門へと移動を開始した。
私達は慌てて騎乗して聖王騎士団の後に付いて困惑した表情をして膝を付く帝都民の間を北へと移動した。
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鍛冶場へ入り作業台へと向かうと作業台の前の壁に貼られた大きな紙が目に入った。
「・・・・・ずィぶんおおきィな」
幅3mは有る作業台の横幅と左程変わらない上に身長180cmの俺が見上げる程の大きさの紙が貼られている。
「・・・・・まジかヨ・・・これをおレがひとりでつくンの?」
目の前の巨大な紙に記された装備の設計図を見て、無い頬がひくつき出ない筈の汗が額から流れた気がした。
何にしても始めなければ終わる物も終わらないと魔導炉を起動し鉱石を次々と投入して行った。
「・・・・・あれだナ、ねつヲかんじナいのはたスかるナ・・・・・」
二千度を超える魔導炉を覗き込んでも何も感じない身体に有り難さを感じると共に、自分がもう〝人〟ではない事を改めて認識させられた。
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解っていない―――
君は何一つとして理解していない―――
私の事も―――
自分自身の事も何一つとしてだ―――
何故私が部下達を、仲間達を見捨てるような真似をしたのかも―――
このような身動き一つ出来ない姿で生き残る道を選んだのかも―――
何故敵である君に生き続ける為の知恵を授けたのかもだ―――
ウォルタード、君は何も解っていない―――
君が私の掌の上から逃れる術など無い事も含めた全てをだ―――
ロビー―――
私の、私達の英知の結晶たる君が私の目の前に現れる日を待っているよ―――
君は私のこの姿を見てどう思うだろうか―――
恐らく君とは違う不完全なこの姿を見て悲しむのだろう―――
だが、不本意だがこれしかなかったんだ―――
君ともう一度言葉を交わすため―――
そして最後を、奴の最後を見届けるため―――
それが皆の総意で、私に託された最後の願いなのだから―――
ここまで読んで頂き有難う御座いました。




