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審判の実  作者: 葉月 涼
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「あっ!あいつロビー殿が連れて来いって言ってた奴じゃないか?」

「なにっ?!本当か?!」

「おお、確かにこの前見た似顔絵とか言う奴とそっくりだな」


「間違いなさそうだ。赤馬は黒狼さんに連絡だ!急げ!俺達は壁から離れて誘き寄せるぞ!黒狼さんが来るまで待機だ!」


「「「「「おう!」」」」」

「了解!」


「あっ!何だその了解って!」


「へへへ、この間の休みにロビー殿に教わったんだ。どうだ、かっこいいだろ?」


「狡いぞてめぇ!」

「何で教えてくれなかったんだよ!」


「ここ一番で使ってやろうって決めてたんだぜ?教える訳ねぇだろ」


「おい!お前等お遊びはその辺にしとけ!」


「「「「「了解!」」」」」


 グリム山北部の監視班が壁の向こうにウォルタードを発見し、班長の角蜥蜴が指示を飛ばすと赤馬が黒狼の下へと走り他の者達は壁から距離を取った。

 彼等はここ数日に渡る混成軍の暴挙に腹を立てていて全員が早く入って来いと願っていた。


 入って来る奴は一人以外皆殺しにしてやる。


 待ち受ける彼等の気持ちは一つになっていた。


「角蜥蜴さんよぉ、似顔絵の奴以外はやっちまっていいんだよな?」

「黒狼さんが来る前でも攻撃されたら反撃してもいいんだろ?」

「ロビー殿の命令だから大人しくしてたけどよ、俺ぁもう限界なんだわ」


「ああ・・・俺もお前等と同じ気持ちだ、止めやしねぇよ・・・但しだ、似顔絵の、ウォルタードとか言う奴には傷の一つも付けるんじゃねぇぞ」


「おう・・・解ってらぁ」

「巻き込むような攻撃はしねぇ・・・直接牙と爪で一体づつ切り裂きゃいいだけだろ」


「一応最終勧告は出す。が、その後は好きにしていいぞ」


「ありがてぇ・・・やっぱあんたの許可がねぇとな」

「ああ、後で問題になるのはちょっとな」

「兄貴やロビー殿に迷惑はかけらんねぇからな」


 角蜥蜴を先頭に壁から10mは離れた所で身を低くして今か今かと待ち構えていると、壁に赤い亀裂が走り、爆音と共に壁が砕け散った。


*


*


*


 白竜の兄貴から言い渡された俺の担当は恐ろしく退屈な物だった。

 繁殖場の前で報告を聞いて兄貴に報告を上げるだけの日々に最初は嫌気がして周囲をうろうろと歩き回っていたが、ここ数日はじっと動かずに半分眠っていた。


「・・・来たか・・・・・」


 以前、ロビー殿が現れる前に白竜の兄貴が狩りもしないで眠ってばかりいた時の気持ちが今ならよく解る。


「黒狼さん!奴が!似顔絵の奴が現れました!!」


「おう、ご苦労さん・・・青豹、兄貴に連絡を頼む」


 兄貴も言っていた『力を溜めているんだ』って。


「はい!任せて下さい」


「じゃ、俺は現地に向かうから赤馬は少し休んでから戻って来な」


 だからと言う訳じゃないが俺も何時の間にかそれに習って横になっていた。


「は、はい・・・・・」


「どうした?」


「い、いや・・・なんか何時もの黒狼さんと雰囲気が違うなって・・・・・」


「ああ、まぁなんだ・・・漸く、漸くこの時が来たんだ・・・あの日の汚点を濯ぐ機会が巡って来たんだぜ?全身の血が滾って押さえらんねぇんだよ」


 そうだ、あの日俺は堪え切れなかったために兄貴と主であるロビー殿に迷惑を掛けてしまった。

 その罪を、汚点を濯ぐ機会がやっと訪れたんだぜ、抑えられる訳がねぇ。


「お、ぁ・・・そ、そりゃあそう、ですよね・・・・・」


「じゃ、先に行ってるぜ・・・アオオオォォォォン!!」


 今こそその力の全てを解き放つ!!


「・・・・・ぉ、おっかねぇ・・・あんな黒狼さん見るの初めてだぜ・・・・・」


 全身を歓喜が突き抜ける。


 大気を突き破り、風さえも置き去りにして北へと、俺の到着を待っているだろう仲間達の下へと薄暗い森の中を駆け抜けた。


*


*


*


 昨日の会議で決めた通りに朝食の後に最前線となる壁へと混成軍の団長達と向かった。


「ふむ・・・先程こちらを覗いていた魔物以外に何体確認していますか?」


 到着直後に壁の上から魔物がこちらを覗っていたので、ノーフェストの団長に確認している魔物の総数を聞いた。


「ここ数日で確認したのは先程の魔物達を含めて十種類になります」


「そうですか。まあその程度でしたら問題無く倒せますよね?」


 僅か十体と聞いて私一人でも問題無く倒せそうだが万が一に備えて適当な事でも言って混成軍に任せる事にした。


「ハッ!あの壁さえ破って頂けるのでしたら直ぐに安全の確保をして見せましょう」


「宜しくお願いしますね。私は神力を使った後は少しの間動きが鈍くなりますので」


「ふむ、やはり大きな力を行使すると言うのは代償が必要と言う事ですか」


「ええ。私は不老不死を含め様々な御力を授かりましたがこの身体は人のそれと左程変わりませんから、代償と言いますか制限が有るのですよ」


 フッ・・・馬鹿な奴等だ。これなら私が何を言っても全て信じてしまいそうですね。


「では聖王殿、宜しくお願いします」


 団長に促されて壁へと足を向ける。


 兵士達の見守る中、壁との距離を測り、剣先が壁に刺さる距離まで下がって深呼吸をした。

 勿論唯の演出で、このような真似をする必要は一切無い。


「フゥ・・・神力開放破魔穿孔!!」


 うむ、即興で作った割には良い技名だ。


 剣先が壁に当たる直前に剣の柄に刻まれた魔法陣に魔力を流す。

 発動した魔法剣が壁に突き刺さると同時にいけるとほくそ笑んだ。


「はああああっ!!」


 壁に刺さった剣をそのまま押し込みながら上下左右に振り回して壁を切り裂いていき、最後の仕上げだと声を張り上げると同時に剣先にファイアーボールを発動させて壁を破壊した。


「「「「「おおおおぉぉぉ!!」」」」」

「「「「「聖王様バンザーイ!!」」」」」


「総員突撃!入口周辺の安全を確保せよ!!」


「「「「「ハッ!」」」」」


 私を称える歓声が上がった次の瞬間、団長の指示が飛び、私の横を兵士達が壁の中へと駆け込んで行く。


 フム・・・魔物からの攻撃は無しですか・・・・・


 私は兵士の半数近くが侵入するのを待ってから悠然と歩いて壁の中へと入って行った。


 フフフ・・・やはり馬鹿共には多少大袈裟な方が効果がありますねぇ・・・・・

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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