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会議室へと着くと扉の前に立っていた近衛が『皆様お待ちです、どうぞ中へ』と言って扉を開けてくれたので中へと歩を進めた。
「会議中失礼します」
「いや、寧ろよく戻って来てくれたなクライブよ。先ずは座ってくれ」
中へ入ると陛下と大臣方が席に着いていて、頭を下げて挨拶をすると陛下が席を進めてくれたので空いている席に着いた。
「クライブ、先ずは聖王の件から聞かせて貰えるか。その後は赤竜と申したか、その辺を其方の口から直接詳しく聞きたかった所なのだ」
「はい。私も両件を伝令で正確に伝えるのは不可能と判断し戻って来た次第に御座います。では、先ずは聖王の件から」
陛下が知りたいであろう聖王騎士団との交戦の件をその過程から全て伝え、その後に赤竜殿との接触からその強大な力を可能な限り正確にお伝えした。
「・・・そうか、多少の齟齬は有るが聖王の言っていた『魔王が生まれた』と言うのは嘘ではなかったのか・・・・・」
「陛下、私はそうは思っていません。確かに赤竜殿は『主が現れた』と言いましたが、それが魔王だと言う証拠にはなりません。何より赤竜殿も含めた全ての者達が言葉を解し、理知的な行動をとったのです」
「だが、魔物には変わらぬのではないか?ならばその主は魔王であろう?」
陛下を含めた大臣方が彼等について大きな勘違いをしていたので私は私の考えを述べた。
「陛下、魔物は言葉は発しませんし理知的な行動はとりません。あれは、彼等は魔物とは別の新たな知的生命体だと私は感じました」
「「「「「なっ?!」」」」」
「そ、それは些か突飛過ぎませんか?クライブ殿」
「そうですぞ!だとすればその者達の主は―――」
「造物主に当たる存在だと私は考えています」
大臣方が驚くのも無理はない。だが、彼等の振る舞いだけを見れば友好的な人間と変わらなかったのだ。ならば彼等を造り、主と呼ばれる存在は神にも等しい存在に他ならないと考えるのが妥当だろう。
「ば、馬鹿な!」
「其方は気でも違ったのか!」
「皆様のお気持ちは解りますが私は正気です。もう一度言います、私はこの目で見て赤竜殿と言葉を交わし、約束をも取り付けたのですよ。彼等が魔物とは別の存在である事は明らかではありませんか。陛下、国防を預かる身として今ここで判断を間違えば確実にこの国は滅びると断言します。如何か賢明なご判断をお願い致します」
大臣達の私の正気を疑う発言を一蹴し、陛下へ判断を仰ぐと陛下は暫く顎に手を当てて考えた後に私に会談までの期限を確認した。
「・・・・・クライブ、確か返答期限は七日後だったな?」
「はい。ですが私一人でも戻るのに二日掛かりましたので残りは五日になります。馬が潰れる可能性を加味しますともう一日は頂きたい所ですが」
「・・・ふむ、では馬車だと何日かかる?」
馬車?何か贈答品でも運ぶのだろうか?
「馬車、ですか?馬車ですと五日か六日は掛かりますが・・・・・」
「そうか、ならば間に合うな。其方は明日一日休みを取るがよい。私はその間に準備を進めておく故、赤竜殿との待ち合わせ場所に連れて行くのだ」
「「「「「陛下?!」」」」」
陛下が一瞬何を言っているのか理解出来ずに呆けてしまったが大臣達が上げた驚きの声で我に返った。
「私が直接赤竜殿と話をせねばならん事態だと判断したのだが何か問題があるか?それとも誰かが私の代わりになるとでも言うのか?そもそも私が数日居らぬ程度で国政が滞るようでは其方等の資質を疑わねばならんぞ」
「い、いや、そのような事は・・・・・」
「しかし陛下に万が一の事が・・・・・」
「私に万が一の事が有るなら遅かれ早かれ国ごと無くなるのであろう?クライブよ」
「はい、私はそう考えております」
良かったと、陛下は事態を正確に理解しておられたと胸を撫で下ろした。
「では問題無いな。クライブ、明後日は宜しく頼むぞ」
「ハッ!失礼します!」
席を立ち、陛下方に一礼して会議室を後にした。
この時陛下が下した判断が大陸中を敵に回す行為に繋がるとは思いもしなかったが、私は、私達は間違ってはいなかったと全ての国が思い知る日が来る事になる。
廊下を歩き騎士団本部に顔を出して副長に会議内容を伝え副長を無理やり自宅に帰して休ませた。彼には明日からまた頑張ってもらわねばならんからな。
そして一日休んだ翌朝、陛下を乗せた馬車に加え護衛の近衛十人と共に北へと向かった。まさか赤竜殿以外に背中に羽の生えた少女と彼等の主が付いて来るとは知らずに。
お互い思いがけない首脳会談となったこの非公式会談が陛下の、王家の命運を分ける事になるのだが、この時点では誰も知る由もない。
いや、正確には一人だけ知っていた者が居た訳だが、信じ難い事が次々と起こり過ぎて麻痺していたためにその時は余り気にしておらず、後に気付いて未来を予知をしていたのかと血の気が引いたのだった。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




