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審判の実  作者: 葉月 涼
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 ノーフェスト王国国王の命を受けた精鋭三十名の騎士達がグリム山北部の森林地帯近くの街道脇の草原に到着した。


「二班と三班は簡易拠点の設営を急げ!私と一班は周辺の警戒だ!」


「「「「「ハッ!」」」」」


 三つの部隊の総隊長を務めるのはこの国最強と謳われる男、騎士団長ドランデ・マルターヌ。

 子爵家の三男と少々不釣り合いの身分ではあるが、火、水、風の三種の魔法と剣技を組み合わせた独自の戦闘法を国王に認められてこの地位を得た。


 簡易拠点の設営を開始する部隊と周辺の監視をする部隊へと別れ、監視部隊は簡易拠点設営地を中心に草原に広がって行った。


「総隊長、南東より魔物八体が迫って来ております」


「む、総員防御態勢のまま設営地まで下がれ」


 監視を始めた隊員の一人から齎された情報にドランデが指示を出し、隊員達が移動を始める。


「一班は防御態勢を維持、二班と三班は魔物が森を抜けた瞬間に『ファイアアロー』を打ち込め。魔物が怯んだ隙に突撃だ」


「「「「「ハッ!」」」」」


「今だ!放て!」


「「「「「ファイアアロー!!」」」」」


「おおっ?!爪撃!」


 精鋭達による魔法が放たれ、魔物に着弾すると思われたその時、先頭に居た狼の魔物が右前足を振るうと魔法が全て掻き消された。


「「「「「なあっ?!」」」」」


「行き成り何すんだよ!危ねぇじゃねぇか!」


 驚きの声を上げる隊員達と、行き成り魔法を打ち込まれた事を批難する狼の魔物。


「え?あ、はい・・・済みませんでした?」


 それに対しドランデはつい謝罪をしてしまった。


「・・・そ、総隊長、自分は言葉を話す魔物を初めて目にしました」


「私もだ・・・・・」


 総隊長を含めた精鋭達に動揺が走り騒然となる。


「まぁいいや。俺達ゃそこの森を縄張りにしている者なんだけど、こいつが迷い込んで来てたんで送り届けに来ただけだ。戦闘の意思は無いしあんた等の縄張りを荒らすつもりも無い。可能であればお互いの縄張りを侵さないように主同士で話し合いが出来ればと思ってる」


 狼が人間の子供を背中から降ろしながら相互不可侵の提案を申し出てきて隊長は混乱した。


 魔物が言葉を介するだけでも異常事態だと言うのに、人間の子供を救った上に相互不可侵条約を結びたいと理知的な提案をしてきたのだから無理もない。


 このまま事が進めばお互い平和的に解決する筈だった。だが一人の隊員の言葉と行動が全てを台無しにした。


「総隊長!何を迷ってるんですか!相手は魔物です!信用など出来る訳がないじゃないですか!それに陛下の命をお忘れですか!これでも喰らえ!フレイムランス!」


 彼は何故総隊長の命令も無くこのような行動に出たのかと言えば、彼はグランバート教の敬虔な信者で魔物は悪魔の使いと教え込まれていたからだ。


 総隊長が止める間も無く放たれた魔法が狼の魔物へと向かう。狼の魔物は先程と同じように右前足を振るって魔法を打ち消そうとした。


 狼の右前足が魔法を捕らえたその時、破裂音と共に炎が広がる。


「きゃああぁあぁぁぁ!!」


「マリアアアァァァ!!おい!水魔法だ急げ!」


 破裂した魔法により狼の隣に居たマリアに炎が移り、全身が炎に包まれた。マリアは蜥蜴の魔物が放った水魔法で一命は取り留めたが重度の火傷を負い危険な状態だった。


「マリア・・・てめぇ・・・・・同胞になんて事しやがる!!」

「許さねぇぞ!てめぇら!!」

「生きて帰れると思うなよ!!」


 マリアの惨状に友好的だった魔物達の雰囲気が一瞬で変わる。彼等の中では同胞に危害を加える事は禁忌に当たるためだ。


 怒り狂った八体の魔物が騎士団へと襲い掛かる。騎士団精鋭三十名は魔物達の怒気に中てられ、戴した反応も出来ずに一瞬で切り刻まれた。


「マリア・・・・・」


 血溜まりの中、狼の魔物が逸早く振り返りマリアへと駆け寄った時、上空から白竜が飛来した。


「お前達・・・これは如何言う事だ!俺は無駄に狩りをするなと言った筈だぞ!!」


 目の前の惨状を目の当たりにした白竜は怒りの形相で狼達に問いかけた。


「あ、兄貴!マリアを!こいつを助けてやってくれ!」

「兄貴の命令を護れなかった罰は何でも受けるから頼むよ!」

「俺達じゃ助けられねぇんだ!」

「頼むよ兄貴!俺達にゃどうする事も出来ねぇんだ!!」


 だが彼等の口から出たのは謝罪や言い訳ではなく、マリアを助けて欲しいと言う懇願だった。


「はぁ・・・仕方ねぇ奴等だ。ちょっと待ってろ」


「すまねぇ兄貴・・・・・」


 白竜が溜息を吐き、マリアへと近寄りその身体を抱き上げると白竜の身体が淡い光に包まれた。


「俺に出来るのはここまでだ・・・解ってると思うが長くは持たねぇぞ」


「そ、そんな・・・・・」

「兄貴でも治せねぇのかよ・・・・・」

「くそっ!如何したらいいんだよ!」


 頼みの綱の白竜に完治させられないと聞かされ、狼達は涙を流し項垂れた。


「お前等山頂に戻るぞ、主殿が目を覚ました。挨拶してねぇのはお前等だけだ。そん時俺から頼んでみるが、主殿が治せるとは限らねぇからな?」


 だが白竜はロビーなら治す事が出来るかもしれないと狼達に告げてグリム山山頂へ戻るよう促した。


「解りました。有難う兄貴、何が有ったかそん時話しますから」


 狼達は白竜の言葉に納得して礼を言い、ここで何が有ったのかは戻り次第説明すると告げた。


 白竜が翼を広げて飛び上がり山頂へと向かうと、狼達はその後を追って駆け出した。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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