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審判の実  作者: 葉月 涼
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「戻って来てナい者達が居る?」


 すっかり日が昇り切った頃、戻って来た者達からの挨拶もやっと終わったと思ったら、白竜さんから戻って来ていない者達が居ると聞かされた。


「ええ、俺達北の担当の中で俺の次位に強い狼が率いてる連中が戻って来てないんですよ」

「ああ、あ奴か、確かに戻って来ておらんな」


 白竜さんの次位に強いって結構な強さだよね?


「でも別に日が昇ッたら戻って来いって言ッておいた訳じゃナいんでしょ?」


「いや、そうなんですけど、他の連中もだけどロビー殿にお会い出来るのを楽しみにしてたし、倒れた時も凄げぇ心配してたから・・・・・」

「うむ、他の者達が戻って来ていてあ奴等が戻って来ていないのは少々不自然であるな」


 赤竜さんの言う通り不自然と言えば不自然だよなぁ・・・もしかして何か有ったのかな?


「う~ん、何か有ったのかもしれナいし、心配なら探しに行ッて来る?白竜さんナら直ぐ見付けられるんじゃないかナ?」


 下手したら何かやらかしてるかもしれないし?グリム山の北側は白竜さんの縄張りみたいだから彼に探しに行って貰う事にした。


「解りました、直ぐに見付けて来ます。赤竜、ここは任せたぜ」


「うむ、此方の心配はいらぬ。一刻も早くロビー殿が目覚めたと知らせてやるが良い」


「おう。それじゃちょっと行ってきます」


「うん、気を付けてね」


 白竜さんが背中の羽を広げて飛んで行くのを見送った。皆仲間思いで優しいんだよなぁ・・・見た目は怖いけど。


*


*


*


 日が昇り始めたので小さき者を起こして移動を開始した。


「取り敢えずは真っ直ぐ森を抜けるか」

「そっすね。そしたらこいつも仲間の居る方向が解るかもしれねぇし」

「だな。それでいいか?」


「うん」


 そんな訳で俺の背中に小さき者を乗せ北へと向かった。


「なに!お前呼び名が有るのか?!」


 話をしながら移動していたら小さき者が自分の名前を言い、俺達の名前を聞いて来て驚いた。


「え?おおかみさんたちはなまえないの?わたしたちはみんななまえがあるよ」


「そ、そうなのか・・・・・」


 正直羨ましかった。仲間内じゃ呼び名が有るのは赤竜さんと白竜の兄貴だけだ。だがこいつ等は全員名前が有ると言う。


「わたしはマリアでしょ、おとうさんはテッド。おかあさんはなくなっちゃったけどリアーナっていったんだ」


 おとうさんとおかあさんがなんだか解らなかったが、見た目とは関係の無い呼び名に興味を持った。


「へぇ~面白いな。その名前はどうやって付けたんだ?何か意味はあるのか?」


「ん~?あるのかな?わかんないや」


 戴した意味も無く付けているみたいだ。だったら俺達もなんかいい感じに付けてもよさそうだよな。


「やっぱ帰ったら兄貴達に話してみるか。お、森の切れ間が見えてきたな」


 森の切れ間に向かって進んで行くと、西側に幾つかの気配を感じた。


「もうちょい向こうに幾つかの気配が有る。お前の仲間だといいな」


「うん!ありがとうおおかみさん!あ、ほかのみんなも!」


 他の連中は獲物を咥えているからもごもごと返事をしていた。俺はこいつの仲間がこれを食えればいいなぁなんて考えてたんだ。


 まさか兄貴だけじゃ無く主にまで迷惑を掛ける事になるなんて知りもせずに―――


*


*


*


 大陸北部中央付近を国土に持つノーフェスト王国では震災の対応に追われる中、首脳陣が最大の懸念事項に頭を悩ませていた。


「そうか、持って後一月程か・・・・・」


「はい・・・周辺国に支援を頼みましたがどの国も同じような状況下と思われますし・・・その、望み薄かと・・・・・」


 大陸北部は雪は殆ど振らないが今の時期、冬場は特に作物が育ちにくいため収穫は殆ど見込めない。そのため減り続ける食料の備蓄に不安を抱えていた。


「で、あろうな・・・・・仕方ない、騎士団精鋭三十名を南部の森林地帯へ送れ。狩りと採取で冬場を凌ぐのだ」


 国王は最終手段として禁足地であるグリム山北部の森林地帯へ兵を派遣する決断をした。


「へ、陛下、禁足地に踏み入るだけなら誤魔化しも効きましょう、ですが狩りをすれば足が付く可能性が御座います!」

「そうですぞ!教会が何を言って来るか解かったもんではありませんぞ!」


「だから何だと言うのだ?寄付に頼らねば生きて行けぬくせに緊急時に僅かな怪我人しか救えなかった者共なんぞ放っておけ。なに、奴等も信者達が飢えて死ぬ事を望んではおらぬだろうよ」


 国王は黒い笑みを浮かべ反対する大臣達を一蹴し、教会からの抗議が来た場合の対応を暗に伝えた。


「た、確かに・・・・・」

「ま、まぁそれならば・・・・・」


 大陸北部ではグランバート教の影響力は低い。本部との間にグリム山を挟んでいる事も有るが、収穫量の少ない農村で税以外に寄付を取られている事を知っている大臣達も良く思っていなかった。


「うむ。ではそのように取り計らえ」


「はい、畏まりました」


 そのためそれ以降は反論も無くあっさりと決定が下された。


 そしてこの決定を受け騎士団は南へと精鋭三十名を即時派遣、物資運搬用の荷馬車も可能な限り集めて後を追わせた。


 これが後に大陸北部の国全てを巻き込む事態に発展する事になるのだが、この時点では国王を含め誰一人として知る術はなかった。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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