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審判の実  作者: 葉月 涼
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 ハァ、ハァ、ハァ―――


 殿下、このままでは奴等に追い付かれてしまいます―――


 ここは我々が足止めを致します―――


 殿下は目的地までお急ぎ下さい―――


 何を言う、私も共に戦うぞ―――


 なりません―――


 殿下さえ生きておられれば再興の道が有る筈です―――


 しかし―――


 殿下、ここまで犠牲になった者達の為にも―――


 陛下方の無念を晴らすためにも―――


 如何か諦めず生き残る事だけをお考え下さい―――


 すまん、何時か必ず敵を討つと誓うよ―――


 その日が来る事を天より見守らせて頂きます、殿下―――


*


*


*


 街道の先に西の村が見えて来た。聖王騎士団がまだこの村に居る事を祈りつつ速度を落とさず村の中へと入って目を疑った。


「お前達何をしている!!」


 聖王騎士団の連中がアルベルトを先頭に村人達に剣を向けているのを見て一瞬で頭に血が上って怒鳴り声を上げながら突き進んだ。


「ぬおっ!」


「貴様等自分達が何をしているのか解っているのか!!」


 村人と聖王騎士団の間に割って入り、馬から飛び降りながら抜剣してアルベルトを睨みつけながら剣を向け問い詰めた。


「貴様こそ誰に剣を向けているのか解っているのだろうな・・・・・」


「ハッ!伯爵家当主に対する口の利き方も知らんチンピラ風情が偉そうな口を利きおって・・・この場で無礼打ちにしてやっても構わんのだぞ、平民が」


「フン!私の実家は―――」

「侯爵家か?笑わせるな!出家した時点で貴族名簿から抹消された〝元〟貴族の〝平民〟が!他人の威光にぶら下がっているだけの腰巾着風情が立場を弁えんか!!」


「クッ!き、貴様あ・・・・・」


 お互いがお互いに剣を向けたまま言い合っていると背後に匿った村人が私を気遣って声を掛けて来た。


「き、騎士様、その・・・・・」

「私達の事ならもう・・・・・」


「皆は出来るだけ離れているように。この場は我が帝王騎士団が収める」


「は、はい・・・・・」

「解りました・・・・・」


 村人達に笑顔を向け、巻き込まれないよう離れるようにと言うと彼等は何度も振り返り、私に頭を下げつつ申し訳なさそうに村の奥へと去って行った。


 優しい村人達じゃないか。彼等のような善人こそ国の宝だと言うのに・・・こ奴等は絶対に許さん。


「アルベルト、下がりなさい」


「聖王様・・・しかし・・・・・」


「いいから下がりなさい。クライブ、貴方は何故私達の邪魔ばかりするのです?背信者として処罰されたいのですか?」


 村人達が見えなくなると聖王がアルベルトの前に出て私に下らない事を聞いて来たが、私は見下すような態度と丁寧な口調で答えてやった。


「は?私はグランバート教の信者ではありませんが?先程も申しましたが、私の主は帝王陛下只一人に御座います。見た事も無く、居るかも解らぬ全能神とやらなんぞに仕える気は毛頭御座いませんが?」


「ほう・・・では、神より賜った私のこの不老不死の身体をどう説明するのです?」


「説明?何故説明する必要が有るのです?聖王様のお身体と神が存在するかは別の話でしょう?貴方が、貴方一人が勝手に言っているだけではありませんか・・・そんな事はどうでもいいんですよ、どうでも。それよりも我が国の国民に剣を向けた理由をお聞かせ願いたい」


「・・・戴した事ではありませんよ、あの者達が寄進を断ったからに過ぎません」


 流石にもう限界だった。奴のこの台詞で私は完全に切れてしまい帝王騎士団長としての権限を最大限に使う覚悟が決まった。


「寄進を・・・ほう、成程納得しました・・・などと言うと思ったか!!ふざけた事抜かしてんじゃねぇぞ!この生臭坊主共が!!被災し家屋や私財を失い明日を迎えられるかも解からずにいる者達から更に奪うだと!!最早貴様等を聖職者だとは思わん!!貴様等はただの野盗だ!我々帝王騎士団が成敗してくれる!!」


「ハハハハハ!!成敗する?たった一人で何が出来ると言うのです・・・アルベルト、私に対する許しがたい暴言を吐いたその者に神罰を下しなさい」


「ハッ!クックックッ・・・馬鹿な奴め、数人でも部下を連れて来れば良かったものを・・・・・」


「フッ・・・何が神罰だ、私が何の策も無しに来たとでも?貴様等御飾騎士団と一緒にするな!!」


 帝王騎士団の隊長格の必須魔法『フレア』を空に向けた右掌から放った。光と火属性のこの混合魔法は発動後に強烈な光を放ちながら上昇し、上空で最大一時間程維持される夜間に重宝する魔法だ。


 尤も今回は目潰し以外にも目的があるが、この馬鹿者共は気が付かんだろうな。


*


*


*


「む、主殿が回復する前に行っておかなければいかんな」


 主殿が倒れられて忘れていたが、主殿が現れた事をクライブ殿に知らせねばと立ち上がった。


「あん?主殿よりも大事だとか抜かすんじゃねぇだろうな?」


「主殿よりも大事な事などある物か。だが主殿が平穏に暮らすためにはこの世に生きる者達の理解が必要だとは思わんか?」


「む・・・そりゃあ・・・確かにそうだな」


「我は既に南に広い縄張りを持つ者と接触し、その者等の主との会談を申し込んだのだ」


「なにっ?!」


「クックックッ・・・白竜よ、其方は主殿が現れるまでの間に何をしていたのだ?まさかただ待っていただけ等とは抜かさんよなぁ」


「クッ・・・俺の負けだ・・・・・あんたの思慮深さには感服したよ赤竜・・・俺はまだまだ浅かった」


 うむ、これで主殿の右腕の地位は我が物になったであろう。後は心の広さを見せ付けておけばこ奴も我が手に落ちるであろう。


「フッ・・・その謙虚さが有れば其方も成長する事が出来るであろうよ。我と肩を並べ、共に主殿のために進もうではないか」


「お、おう」


「では、我は主殿が現れた事を知らせ、会談を今一度打診してくる故、主殿の事は宜しく頼むぞ白竜よ」


「おう、任せてくれ」


 これで白竜とその配下は当面は我が配下も同然だと笑みを零して南へと向かった。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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