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クライブ殿との会談が上手く行き、安堵しつつ見回りを再開した。
「いやあ赤竜の旦那の言う通りにしてよかったわ」
「だよな、旦那の言う通りにしてなかったら主殿に迷惑かけちまう所だったっすわ」
「そうそう、俺達だけだったら争いになってたかもしれねぇもんな」
「まぁ、クライブ殿が話の分かる方で助かったと言うのも有るが・・・む・・・・・」
だが直ぐに足を止め北へと視線を送った。
「如何したんで?旦那」
「何か気になる事でも?」
「もしかしてクライブ殿が何か?」
「・・・皆の者、見回りは中止だ!急ぎ山へと戻るぞ!」
北方の、山の遥か地下から強大な力を感じた。この感覚は間違いなくこの身を焦がし〝我〟と言う存在を創り上げた物と同質の力だ。
「へ?一体何が?」
「山に戻るって・・・あっ!」
「そうだ!我等の主が山に現れるのだ!行くぞ皆の者!我に続けええぇぇぇ!!」
歓喜に高ぶる気持ちを抑え切れず同胞達への指示にも力が入った。
「「「「「おおおぉぉぉ・・・・・」」」」」
背中の翼を広げ低空を飛び、真っ直ぐに山の頂を目指した。同胞達が迷わぬようにと、多少遅れたとしても辿り着けるようにと、皆の導となり常に先頭を進み、木々や獣を薙ぎ倒し吹き飛ばして道を造りながら突き進んで行く。
山を登り始めた頃には遅れだす者も増えたが、遅れずに我の背後に付いて来れる者が百は居る。これだけ居れば失礼にはならないだろう。
それにしても恐ろしく早い。地下から頂きまでかなりの距離が有った筈だが我が到着するのと左程変わらぬ頃には到着されるようだ。
だがそれ以上に気になるのは山の反対側から昇って来る者達だ。我と同等の力を持った者を先頭に四、五百は居る。しかも誰一人として遅れずに、我等よりも早く頂に到着するだろう。
敵か味方かは解らんが、敵であった場合はばらけてしまった此方が不利となるだろう。尤も、相手方の先頭に立つ者さえ我が押さえてしまえば負けるような事は無いであろうがな。
頂に到着して少し驚いた。かなりの広さが平坦に均されておりその中央に四角い金属の箱が置かれていたのだ。
この箱の中から主が現れるのか・・・・・
金属の箱へと近づいて行くと反対側から集団が現れ、先頭に立つ白い色をした我と同じ姿の者が口を開いた。
「へぇ・・・色違いとわね」
「ふむ・・・其方等の目的は我等と同じか」
色違いだと?我との違いを色だけだと本気で思っているならばこ奴に同胞を率いる資格は無い。
「ああ、多分な。俺は白竜と呼ばれてる、あんたは?」
「我は赤竜と呼ばれておる・・・む、いらしたようだな」
話の分かる者のようでよかったと安堵した時に主が箱の中に到着されたと感じた。何やら妙な音が聞こえて来るが・・・内部で何が起こっているのだろうか。
「だな、話は後だ、皆静かにしてろよ」
「「「「「へ~い」」」」」
こ奴の資質を見極めるのは後回しだと、主が現れるであろう金属の箱の一辺に注視した。
ガシャガシャと変わった足音が近づいて来る。
箱が開き中から二足歩行の黒鉄の物体が現れたが直ぐに閉じてしまい白竜と目を合わせ首を傾げた。今のは間違いなく主殿の筈だが何故に?
そして暫くの後、再度箱が開き主殿がそのお姿を現し、我は歓喜の表情で挨拶をと口を開いた瞬間、主殿がガシャンと大きな音を立ててその場に倒れ込んで動かなくなった。
「「「「「主殿おおぉぉぉ!!」」」」」
「何だ何だ?!如何なってんだ?何が有った?!」
「解らん!だが主殿が意識を失った事には変わらん!」
何と言う事だ、漸く御会いする事が叶ったと言うのに。
「お、おお・・・だ、大丈夫ですか!しっかりして下さい主殿!」
突然の事態に我も白竜も、その場にいた同胞達の全てが取り乱し、助け起こしたいが恐れ多くて触れる事も出来ず、我は主殿の身に何が起こったのかを思案し一つの答えに辿り着いた。
「・・・ま、まさか・・・我等に力を与え過ぎてしまったと言う事なのか・・・・・」
我と同等の者に加え、千にも及ぶ同胞を生み出す程の力を行使したのだ、倒れてしまったとしてもなんら不思議ではない。
「そ、そんな馬鹿な!」
「主殿・・・・・」
「俺達のために・・・・・」
「解らんが他に思い付かん」
「もしかして現れるまでに時間が掛かったのもそう言う事・・・なのか・・・・・」
「・・・だがそのお力の全てを無くされた訳ではないのだ、我等が出来る事があるとすれば・・・主殿が回復するのをお待ちするしか・・・・・」
「そう、だな・・・おい皆、主殿の回復を祈って待つぞ」
「「「「「へい・・・・・」」」」」
我々は主の回復を祈願してその場に伏して待ち続ける事にした。いや、他に出来る事が何も無かっただけだ。
主殿・・・貴方様のために祈る事しか出来ぬ不甲斐ない我等をお許し下され・・・・・
ここまで読んで頂き有難う御座います。




