第3話:魔力を測ったら全属性MAXになっていたけど、村人たちは気づいていない
辺境の村。
王都から馬車で三日、徒歩なら一週間。
地図の端っこにちょこんと描かれた、小さくて静かな農村。
その薬草畑の真ん中で、今日も聖女リセリアは昼寝をしていた。
「……太陽がまぶしい……薬草がしゃべる……あー、これは夢……。よし、起きない……」
ハーブピローを両腕で抱きしめて寝返りを打つと、鼻先にふわりとラベンダーの香りが届いた。
それだけで幸せ指数が爆上がりである。
が。
「リセリアさん!! いま、すごいことが村で──!!」
がさっと草をかき分けて飛び込んできたのは、村の薬師見習い・ルーク少年。
薬草袋を抱え、汗をにじませながら走ってきた。
「……ん。なに? 火事? 洪水? それともまた誰か勝手に死にかけてる?」
「違いますっ! 王都から、魔力測定士が来てるんです!」
「…………。は?」
リセリアの片目が、うっすらと開いた。
「なんでこの田舎に、そんな面倒くさい人種が……。しかも測定士って、“自称・魔力見えます”の詐欺師でしょ」
「いや、本物です! 王都の魔術研究院から派遣されたって……。
あの伝説の“七色の石板”を持ってて、村人みんな測ってもらってるんですよ!」
「……七色の……あー、アレか。魔力属性の適性を測れるっていう、あの」
「そうです! だからリセリアさんもぜひ!」
「断る」
即答だった。
「え、えええええ!? ど、どうしてですか!? 絶対、面白い結果になりますって!」
「いや。だってバレるじゃない。いろいろ。私がサボってる理由とか、全属性持ちとか、うっかりすると聖女じゃなくて災厄扱いされるとか」
「(めっちゃ自覚あるんだこの人……!!)」
ルークは心の中で叫んだ。
「頼むから一回だけ! せめて属性だけでも見せてください! お願いです〜〜!」
「はあ……しょうがないなあ。昼寝10分分の価値があるかどうか、見極めてあげましょう」
ため息をついて、リセリアはようやく立ち上がった。
ゆるく結んだ髪がふわりと揺れ、草の間からひょこりと姿を現したその姿に、
すれ違った村人たちは「おお……」「なんて神々しい……」と拝みはじめた。
「(いや、やめて。村の信仰対象になるのも面倒なの。マジで)」
村の集会所
測定士が持っていたのは、七色に輝く透明な石板。
触れた者の魔力属性を可視化する、国家機密レベルのアイテムらしい。
「はい、それではお嬢さん。石板に手を添えてください」
「はーい。はいはい、添えましたよっと」
測定士の男が目を細めて石板を見つめる。
……だが次の瞬間。
ピシィッ!!!!
石板がまばゆく光ったかと思うと、バリバリと音を立ててヒビが入り、
そのまま“爆ぜた”。
「──え?」
測定士、固まる。
ルーク、口をあんぐり開ける。
周囲の村人たち、全員沈黙。
その中でリセリアは、ただひとこと。
「……ごめん、壊した?」
■ 測定結果(後に回収された破片により判明):
- 炎:MAX
- 水:MAX
- 風:MAX
- 土:MAX
- 光:MAX
- 闇:MAX
- 精神:MAX(※禁忌属性)
- 神聖/呪詛:両立(※人間では通常不可能)
測定士は、その場で失神した。
リセリアは、肩をすくめる。
「だから言ったじゃん。測らない方がいいって。昼寝の邪魔してまで出てきた意味、なかったな……」
その日以降、村ではリセリアを“森の守り神”として祀るべきか、本気で議論が始まったという。
だが本人は――。
「神格化とかほんと無理だから。次やったら、神の座ごと浄化するからね」
今日も毒舌、でもちゃんと癒して、そしてまた昼寝に戻るのであった。




