機械神編 サポートAI“雪姫”
「よし……こんなものかな」
ルークさんに頼まれたスマホと家電の量産。
それを終えた俺は背伸びをして、椅子に座る。
流石に疲れたな~。とりあえずスマホと家電を一万個ずつ作ったけど。
さて……どれくらい売れるかな。
「おつかれ……アキラ」
俺の視界の横から、ユリーナの顔が入り込んだ。
「ユリーナ」
「すっごい頑張っていたわね」
「まぁ……お金は欲しいからな。ユリーナにこれ以上、世話になるのは悪いし……なんかよさそうな家を買おうと思う」
「え?」
ユリーナはどこか寂しそうに表情を曇らせた。
いや……そんな捨てられた子犬みたいな顔をしないでくれよ。
「この家から……出て行くの?」
「まぁ……家を買う金は手に入ったし。それに俺にはやらなくちゃあ、いけないことがある」
「やらなくちゃあ……いけないこと?」
「妹を見つけることだ」
そう。俺がやらなくちゃあいけないこと。
それは妹を探すことだ。
「妹は俺と同じくゴットっワールドに来ている可能性がある。だから見つける……絶対に」
「……そっか」
ユリーナは一瞬だけ暗い表情を浮かべた後、すぐに微笑んだ。
「頑張ってね」
「ああ……頑張るさ」
ユリーナと別れるのはちょっと寂しいけど、恋人でもないのにこれ以上…男女二人が一緒の家にいるのはまずい。
それに変な噂が流れたらユリーナに迷惑だろうし。
というか街の神達に「あの二人……付き合ってるの?」ってな感じで思われているからな。
できるだけ早く家を買わないと。
俺があれこれ考えていると。
『まったく……ご主人様は鈍感だね』
俺のポケットから女の子の声が聞こえた。
その声を聞いたユリーナは、パチパチと目を開けたり閉じたりする。
「今の声は?」
「ああ……こいつだよ」
俺はスマホ・神威をポケットから取り出した。
するとスマホ・神威の画面から小さな少女の立体映像が投影される。
その少女は銀色の短い髪を伸ばしており、両目にはルビーの如く赤い瞳が宿っていた。
顔立ちは中性的で、胸が大きい。
ダメージジーンズを履いており、白いタンクトップを着ていた。
そしてタンクトップの上には、黒い羽織を羽織っている。
「この子は?」
「こいつはサポートAI“雪姫”。俺の製作作業とかを手伝ってくれる存在だ」
俺が説明を終えると、雪姫は人懐っこい笑顔を浮かべてユリーナに挨拶する。
『こうして会うのは初めましてだね。ボクは雪姫。ご主人様のサポートをするのが仕事だよ』
「へぇ~……アキラはこんなのも作れるのね」
興味を持った目で、ユリーナは雪姫を観察する。
そして特に見つめたのは……雪姫の大きな胸だった。
「……なんか胸が大きいわね」
『ああ、それはご主人様の趣味だよ』
「へぇ~」
『ご主人様はボーイッシュで、銀髪巨乳美少女が好みだからね。だからボクはこういう姿をしているんだ。喋り方もご主人様の好みだよ』
「ふ~ん……そうなのね」
ユリーナはサファイヤの如く蒼い瞳を少しだけ黒く染め、俺を見た。
とっさに視線を逸らす。
やばい……なんかユリーナ、怒ってる。
顔から流れる汗が止まらない。
「アキラも男ね~。やっぱり胸なのね~」
「いや……それは……」
「こういうのが好みなのね」
「えぇ……と、はい」
俺が正直に答えると、ユリーナは少しだけ眉を顰めて……指をパチンと鳴らした。
するとユリーナの足元に魔法陣が出現。
魔法陣が白く輝き出すと、ユリーナの胸が大きく膨らみ、金色の髪が銀色へと変わる。
突然、銀髪巨乳美少女へと偏したユリーナに、俺は呆然とした。
え?なに!?
なんでいきなり胸を大きくしたの!?
なんで髪を銀色に変えたの!?
イメチェン?イメチェンか?
すっげぇ俺好みの姿になったんですけど!?
「……どうかな。今のわ……ボクは?」
少したどたどしいボクっ子口調で喋るユリーナ。
そんな彼女を……俺は素直に可愛いと思った。
なんだこの女神は。女神だけど。
こんな不慣れなボク口調で喋るユリーナ……可愛すぎる。
あと胸でっか。
可愛い……本当に俺の好み……だけど、
「ユリーナ。無理にボク口調をしなくてもいいぞ。あと胸も元に戻して」
「べ、別にボクは無理してないよ?」
「いや……そうじゃなくて……その」
恥ずかしい。
これを言うのはめっちゃ恥ずかしい。
だけど……言わないと。
これはちゃんと言わないとな。
「俺は……普段のユリーナが……その……一番好きだ」
「え?」
「金色の髪も、私口調も、壁みたいにまっ平らな胸も……俺は好きだ」
そりゃあ確かに俺は銀髪巨乳のボーイッシュな女の子が好きだけど。
やっぱり……ユリーナはいつものが一番いい。
「ふ、ふ~ん。そう……そうなのね」
少し頬を赤く染めて、髪をいじるユリーナ。
照れるユリーナも……とてもかわ、
「ちょっと待って。今、壁みたいにまっ平らな胸って言ったかしら」
あ……やっべ。
慌てて俺は口を押えたが、もう遅い。
ユリーナは額に青筋を浮かべて、ニッコリと笑う。
あははは……すっげぇ怒ってる。
威圧感が半端ないわ。
「そうなのね……私の胸を壁だと思ってたんだ」
「……ユリーナ」
「なにかしら?」
「貧乳はステータスだ」
ユリーナは俺の頬を勢いよく引っぱたいた。
スパン!といい音が鳴り響く。
『ご主人様って……意外とバカだね』
ユリーナに叩かれた俺を見て、呆れた雪姫はやれやれと首を振るう。
やっかましいよ!
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アキラを手のひらで叩いた後、ユリーナは自室に戻った。
「なによ……貧乳はステータスって」
文句を言いながら、ユリーナは自分にかけていた魔法を解く。
銀色の髪は金色へと変わり、大きく膨らんだ胸は小さく縮む。
「……普段のユリーナが好き……か。フフフ」
アキラの言葉を思い出したユリーナは、頬を緩めた。
その時、換気のために開けていた窓から、一羽の白い鳥が入ってくる。
「手紙?」
鳥の口には封筒が咥えられている。
ユリーナが封筒を受け取ると、白い鳥は飛んで行った。
「いったいなにかしら」
魔法で封筒を開き、手紙を取り出してユリーナは読む。
手紙を読み終えたユリーナは……ゆっくりと目を閉じて、ふぅと息を吐く。
「そっか……ついにこの時が来たのね」
ユリーナは壁にもたれて、天井を見つめる。
「アキラ……」
そう呟いたユリーナは、とても悲しそうに目を細めた。
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