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機械神編 商売

 多くの家電を作った俺は、ユリーナと一緒に商会にやってきた。

 商会の建物は他の建物よりも少し大きく、木材と石材で作られている。

 古めかしいが、とても美しい建物だ。

 職人の丁寧さや美しさを追求しているのがよく分かる。


 今日、俺は……この商会で商品を売る。


「紹介してくれてありがとな、ユリーナ」

「いいわよ。ちょうど私も商会の社長には用事があったし」


 ユリーナはどうやら商会の商人とは知り合いらしく、俺に紹介してくれるのだ。


「さ、行きましょう」


 ユリーナは俺の手を引っ張って、商会の建物の中に入った。

 建物中では数人の男神たちが働いている。


「こんにちは」


 ユリーナが挨拶すると、男神たちは「おお、ユリーナちゃん!」「こんにちは」「いらっしゃい」と笑顔で対応する。


「ルークおじさんはいますか?」

「ルークさんだね。今、呼んでくるよ」


 そう言って男神の一人が階段を上っていった。

 それにしても……相変わらず美形だな、神は。

 

 三十秒後、階段から一人の男神が降りてくる。

 その男神は背が小さく、ねずみ色の短い髪を伸ばしていた。


 なんだろう。見た目は十一歳ぐらいの少年みたいな感じなのに、なんか大人びているっていうか…日本トップの商会の会長みたいな貫録を感じる。


「やぁ、ユリーナちゃん……待っていたよ。新しい剣、届いているよ」

「ありがとう、ルークおじさん」

「で、そっちが……商品を売りたいっていう男神くんだね」


 ルークという名の男神は、優しそうな微笑みを浮かべながら俺に視線を向けた。


 ちゃんと挨拶をしないとな。


 俺は頭を下げ、自己紹介を始める。


「初めまして。私は製作の男神、神崎輝と申します。今日は時間を作っていただき、ありがとうございます」

「君のことは聞いているよ。ユリーナちゃんを助けてくれたんだって?僕の親友の子を助けてくれてありがとう」

「いえ……助けてもらっているのは私のほうです。えっと……お二人は知り合いなのでしょうか?」

「そうだよ。ユリーナちゃんの父親と僕は親友同士でね」

「そうなんですか」

「さぁ……部屋で商売の話をしようか」


<><><><>


 俺とユリーナはルークに案内された部屋に移動し、ソファーに座った。

 対面に座るルークは手を組みながら、尋ねる。


「さて……どんな商品を見せてくれるのかな?」

「はい。私が売りたいのは……これです」


 俺はポケットからスマートフォンを取り出し、指で操作した。

 するとなにもないところから掃除機や洗濯機、乾燥機などの家電が現れる。

 それを見てユリーナとルークは目を見開く。


 驚いているな。それもそのはず……家電なんてこの世界にはないものだからな。


 このゴットワールド聖神界は文化を大切しており、化学力が進歩していない。

 故にこの世界は家電などの便利な道具が存在しないのだ。

 そんな世界で家電を売れば……きっと多くの神が買うだろう。


「それは……いったいなにかな?」

「この道具たちは家事を助けてくれるものでして」

「違う!君が手に持っているものだよ」

「え?こっち?」


 ルークは俺の手にあるスマートフォンに指を指す。


 え?……こっちに興味を持つのか?

 家電じゃなくて?なんでだよ。


「えぇ……と。これはもともと持っていた道具でして……それを私の力で改造したものです。名前はスマートフォン・神威(かむい)です」

「それでなにができる?」

「指定したものを転送させたり、記録を取ったり、写真を撮ったり、遊んだりとかですけど?」

「すごい……アキラくん!それ量産できる!?」

「え……でき……ますけど」

「なら作って!それ一つ、八角形の神硬貨(しんこうか)五枚で買い取らせてもらうよ」

「八角形の神硬貨五枚!?」


 嘘でしょ!?

 この世界の常識やお金のことは、街の図書館で調べたけど……八角形の神硬貨を五枚って!?


 この世界では、虹色に輝く硬貨―――神硬貨というものをお金として使う。

 神硬貨は色んな形をしているものがある。

 日本円で分かりやすく説明すると、


 三角形の神硬貨は百円。

 四角形の神硬貨は千円。

 五角形の神硬貨は一万円。

 六角形の神硬貨は十万円。

 七角形の神硬貨は百万円。

 八角形の神硬貨は一千万円。


 そして円形の神硬貨は一億円。


 という感じだ。

 

 ルークはスマホ一台を五千万円で買い取ると言っているのだ。


「あの……なんでスマホをそこまでして買い取ってくれるんですか?」

「……アキラくん。そのスマホの価値を君は分かっていない」

「え?」

「いいかい?手のひらサイズで……しかも色んなことができるその道具は、上級の神が喉から手を出すぐらい欲しがるものだ。オークションに出せば、最低でも円形の神硬貨一枚で落札される」

「そんなにですか?」

「その道具一つで転送、記憶保存、ゲームができる。そんな道具……この聖神界で作れるのは君だけだと思う」


 まずい……スマホ一つでここまで高く売れるとは思わなかった。

 待てよ?

 じゃあ……家電はいくらで売れるんだ?


「ところでなにもないところから現れたこの道具たちはどんなものかな?」

「あ……え~と一つずつ説明します」


 俺は転送した家電を一つずつ説明した。

 全ての家電の説明を聞き終えたルークさんは呆然とする。

 これ……思っていた以上に驚いている?

 そりゃあそうだよな。スマホ一つであんなに驚いていたんだもの。


「アキラくん……いや、アキラ様」

「え?様呼び?」

「あなた様が用意した商品……高く買い取らせていただきます」

「あ、ありがとうございます」


 突然、敬語で話された俺は内心驚いた。

 だって急にくん呼びから様呼びになったんだ。

 驚かない方が無理だ。


「えっと……因みにどれくらいで売れますかね?」

「円形の神硬貨五十枚で買い取らせていただきます」

「五十!?」


 まさかの買い取り価格五十億円。

 俺は思わず目玉が飛び出るかと思った。

 いや……人間だった頃は転送装置とかを作って何億ぐらいは稼いでたけど……家電でそこまで買い取られれたことはない。

 地球では考えられないな。


 けど……ここまで金を出して買い取るってことは……それぐらい機械道具がこの世界では貴重なのかもな。

 この世界に来て、見た機械は……あの神を殺す機械兵しかないし。


「アキラ様。今後とも我が商会と末永くお願いします」

「あ……ありがとうございます」


 俺はルークさんと握手をした。

 これから長い付き合いになりそうだ。

 読んでくれてありがとうございます。

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