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機械神編 神器

「なんでここにいるの……アキラ!」


 ユリーナの問いかけに対し、俺は一瞬黙った。

 やっぱ怒るよな、ユリーナ。

 本当に悪いと思っている。

 だけど、


「ユリーナを……死なせたくなかった」

「だからって……ここは戦場になるのよ!?それにその鎧はなに!?」

「……ごめん、ユリーナ。約束を破った」

「え?」


 武器は作らない。

 俺はユリーナとそう約束をした。

 だけど俺はその約束を破り、作った。


 俺が最も嫌う武器を。


 機械鎧(パワードスーツ)型戦闘神器―――【神威・白猿(はくえん)】。


「ユリーナ。あとで俺をたくさん怒ってくれ。あとで詫びとしてなんでも言うことを聞く」


 俺は誰かを傷つける道具は嫌いだ。

 だけど……ユリーナを死なせるぐらいなら、俺は武器だろうが兵器だろうが作る。


「だから頼む、ユリーナ。……俺にお前を守らせてくれ」


 俺は視線を機械兵の大軍に向ける。

 機械兵との距離……あと3キロメートル。


「雪姫」


 俺がそう呼ぶと、右肩あたりに小さな銀髪少女—――雪姫が投影される。


「全力でサポートしろ」

『了解だよ。ご主人様』


 俺は自分の首にそっと触れた。

 するとヘルメットが形成され、俺の顔を覆う。

 ヘルメットに投影したディスプレイが、機械兵を綺麗に映し出す。


『敵の数は一万三千六百五十二機だよ』

「投影されている武器は?」

『分析したところ、どうやら指先から爪を出すだけみたい』

「なるほど……つまりガラクタだな」


 俺は足に力を入れ、


「行くぞ」


 駆け出した。


「アキラ!!」


 後ろからユリーナの声が聞こえるが、俺は止まらない。

 弾丸の如き速さで機械兵達に突撃。

 そして―――高く跳躍した。


「雪姫。【波乱(はらん)】」

『了解。爆発弾発射砲型神器―――【波乱】を転送するよ』


 右手にバズーカを転送させた俺は、構える。


「ぶっ飛べ」


 俺が引き金を引いた直後、バズーカからロケット弾が発射された。

 ロケット弾は機械兵達のど真ん中に着弾し、爆発。

 大きな爆発音が鳴り響き、爆風で機械兵達が吹き飛ぶ。

 ロケット弾が着弾した場所には、何も残っていない。


『敵機三百二十一機、撃破。残り一万三千三百三十一機』

「【業火(ごうか)】百機。【乱絶(らんぜつ)】二丁を転送」

『了解。浮遊自動攻撃光線銃(ドローン)型神器―――【業火】百機と敵殲滅連射銃砲(ガトリング砲)型神器―――【乱絶】を転送』


 バズーカを投げ捨て、地面に着地した俺の両手に二つのガトリング砲が転送される。

 そして空中に人間一人分ぐらいの大きさの浮遊する銃が百機現れた。


「殲滅開始だ」


 俺の言葉を合図に、浮遊する銃―――【業火】百機は高速に空を飛ぶ。

 そして銃口から光線を放ち、次々と機械兵達の頭を破壊する。

 

「来いよ、ガラクタ共」


 機械兵達は俺を敵と認識し、一斉に襲い掛かる。

 迫りくる機械兵達に、二つのガトリング砲を向けた。


「ファイア」


 俺は引き金を引いた。

 するとガトリング砲は高速回転し、いくつもの銃口から弾丸を連射。

 無数の弾丸の雨が、機械兵達の身体にいくつもの風穴を開ける。

 ドルルルルルルルと音が鳴り響き、ガトリング砲から大量の空薬莢が排出され、地面にカランカランカランと転げ落ちた。


『敵機残り五千六百九十三機だよ』

「よし、このまま殲滅させるぞ」


<><><><>


「なに……あれ」


 ユリーナは自分の目を疑った。

 ユリーナだけじゃない。

 他の女神達も敵を次々と倒す輝の戦いに呆然としていた。


「男神が……戦ってるのよね?」

「普通なら死ぬわよ」

「なのに……圧倒している」


 ゴットワールドの世界で、男神とは非戦闘系の神。

 女神よりも身体能力も戦闘のセンスも圧倒的に低い。

 だというのに輝は戦えている。


(アキラが戦えているのは恐らく武器……神器のおかげ)


 輝が装備している鎧や武器は全て神器。

 製作系の上級の神でも作ることができない超高性能な兵器のおかげで輝は戦えているのだと、ユリーナは理解した。


「アキラのバカ……約束を破って」


 輝はユリーナを守る為に武器を作った。

 恐らく武器を作る時、輝は苦しい思いをしたはず。

 そう思うとユリーナは自分が許せないという感情が胸の奥から湧き上がった。


「アキラ……今、行くわよ」


 ユリーナは輝の手助けに行こうとした。

 だがその時、彼女の肩を女神アーラが掴む。


「待って」

「離してください、アーラ様。アキラの手助けをしないと!」

「今、あんたが行っても足手まといよ」

「!!」

「私たちは……ここで見ていることしかできない」


 ユリーナは唇を強く噛む。

 アキラに武器を作らせただけじゃなく、手助けに行くこともできない。

 自分の不甲斐なさに、ユリーナは腹が立った。


「アキラ……」


 ユリーナはただ……アキラの戦いを見ていることしかできなかった。


<><><><>


 戦闘を開始して三十分。

 ほとんどの敵を倒した俺は、フゥと息を吐く。

 地面には大量の空薬莢と機械兵達が転がっていた。


「雪姫。敵の数は?」

『残り一機』


 俺は最後に残った機械兵に視線を向けた。

 視線の先にいた機械兵は他の機械兵と違った。

 紫色に光る目玉のようなカメラ。

 剣の如く細長く鋭い爪。

 そして頭部から発生している青い炎。

 まるで悪魔のような見た目をしたその機械人形は、カメラを俺の方に向けていた。


「明らかにヤバそうなやつだな」


 俺は二丁のガトリング砲を構えようとした。

 次の瞬間、紫目玉の機械兵は素早い蹴りを放ち、ガトリング砲を弾き飛ばす。

 コイツ!一瞬で距離を詰めて、俺に武器を手放せやがった!!


「雪姫!コイツの攻撃を予測。そして【業火】すべてでコイツに攻撃!」

『了解!』


 機械兵は口の部分から白い蒸気を吐きながら、細長い爪を振るう。

 迫りくる爪撃を雪姫の予測機能で計算。

 そして爪撃を紙一重で躱し、距離を取る。


 百機の【業火】は紫目玉の機械兵に銃口を向け、弾丸を放つ。

 無数の弾丸の雨が機械兵の身体に風穴を開けようと高速に飛ぶ。

 だが紫目玉の機械兵は十本の鋭い爪で、全ての弾丸を斬り裂いた。


 なるほど……他の機械兵とは違う。

 だが、


「所詮はガラクタだな。雪姫、【嵐炎】を転送」

『了解。切断機(チェーンソー)型神器【嵐炎】を転送するよ』


 俺は大型チェーンソーを右手に転送。

 そのチェーンソーの無数の刃は赤熱化しており、排気口から白い煙を吐き出していた。


「これで終わりにしてやる。ガラクタ」


 俺が引き金を指で引くと、赤熱化した無数の刃が高速回転。

 火花を散らすチェーンソーを俺は力強く振るう。

 紫目玉の機械兵は十本の細長い爪で防ごうとした。

 だが高速回転するチェーンソーが、十本の爪を切断する。


 爪を失った機械兵は俺の頭に蹴りを叩き込んだ。

 大きな打撃音が鳴り響く。

 いい蹴りだ。

 だが、


「俺の被っているヘルメットは特別でな。そう簡単に壊れねぇよ」


 俺はチェーンソーを横に素早く振るい、機械兵の首を斬り飛ばす。

 頭を失った機械兵は糸が切れたマリオネット人形の如く崩れ落ち、爆発した。

 一万以上の機械兵を倒した俺はヘルメットを外し、ユリーナのところに向かって歩く。

 だが歩いている最中、俺は眩暈を起こし、片膝を地面に付けた。


「アキラ!」


 ユリーナは泣きそうな顔で俺に駆け寄る。


「大丈夫!?」

「ああ……初めての戦闘で疲れたみたいだな。ハハハ」


 俺が作った神器とフルダイブ型VRアクションゲームで培った戦闘経験のおかげで、機械兵達を倒すことができた。

 ただ……予想以上に命懸けの戦いで疲労してしまったようだな。

 やっぱり非戦闘系の神にはきつかったか、ハハハ。


「笑えないわよ!私……女神でもないアキラが機械兵達と戦っているのを見て……すごく怖かった」

「すまん」

「家に帰ったら説教するから」

「ああ」

「詫びとして私の言うことをなんでも聞くのよね?」

「ああ」

「なら……ずっと傍にいて」

「え?」


 俺はユリーナの顔を見て、言葉を詰まらせた。

 ユリーナは真剣な表情で……俺を見つめている。

 よく見ると彼女の耳が赤く染まっていた。


「一生、私の世話をしなさい。掃除、洗濯、ご飯。これから私の代わりに家事をしなさい!あなたは……私のものよ」

「え?それって……プロポ―」

「返事は!?」


 ユリーナから放たれる威圧感に思わず俺は「はい」と答えてしまった。

 こりゃあプロポーズじゃなくて、世話係になれって意味か。

 はぁ……一瞬期待しちゃった俺がバカみたい。


「それと……」

「?」

「助けてくれて……ありがとう」


 花が咲いたが如き微笑みを浮かべながら感謝を言うユリーナ。

 彼女の笑顔を見て、俺は……助けられて良かったと思った。

 読んでくれてありがとうございます。

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