〜私を一番にしないなら私もしない〜
コンセプト
愛は汚い醜いドブのようなもの。
親友以外信じてなかった女が、周りわ見渡しながら生きる話
とりたてて特徴のない自分が嫌いだった。
なんでもできて、人気者で、家族や周りに反抗しても愛される兄と違って、私には性別しか取り柄がない。
祖父母はたいそう私を可愛がった。
女の子らしくありなさい。かわいいね。この服を着なさい。
そう言われるたびに泣きそうになるくらい痛い胸を抑えて、私は『ありがとう』と笑う。
自分から話しかけたり、遊びに誘うのが苦手で、
必死にテレビを見て勉強した。話の間合い、人との距離感、誰かに嫌われないように、毎日馬鹿みたいに大声で笑っていた。
なるべく濃い味のものを食べないと味を感じられなくなった。
人がたくさんいる場所で目眩がする。
15になる頃には、無条件の愛なんてないんだと思った。
いじめられたりハブられたりするのが当たり前すぎて、学校に行きたくないなんて感情すら生まれなかった。
本や漫画の中の世界に憧れた。
親は無条件で子供を愛し、当たり前のように幸せを口にする。
私はそこへ逃げながら、いつか自分も人を愛することがあるのだろうかと思った。
生きていたくないと思ったけれど、私が死んだ後に家族は周りからどんな目で見られるだろうか。と考えると、踏み切れなかった。
だから、君と出会えたことは奇跡だと思った。
同じような境遇。不幸を嘆く姿。上手く生きられない事。
全てが私を見ているようで、二人で分かり合っている時だけ、私は幸せを感じられた。
君が言う。
『彼氏を作ったって優先は君だよ』
『やっばり君といる時だけが素で笑ってる』
『ましでずっと親友すぎる。魂の双子』
頭の中で笑う君を思い出して、笑ってしまう。
「私の代わりができたら、やっぱり私はいらないんじゃん」
真っ暗な部屋の中で、Discordを開いては閉じてを繰り返す。
誕生日おめでとう私。
そっちが私を捨てるなら、私だってもう誰もいらない。
今日が終わったら、全ての連絡先を消す。
誰でもない、誰も知らない私になって、
私はこの世を一人で生きていく。