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星を見つける【完】続編あり  作者: 壱原 棗
不調のワケ
8/20

貴女はお星様

「ねえ、エトちゃん。最近何か嫌なことでもあった?アロせんせに意地悪されてない??」

「……って誰だっけ?」


 不調の理由を探るべく、エトに投げかけると出鼻を挫かれた。ナルムクツェに対する嫌がらせというヨハネスの思惑は功を奏している。


「ほら、エトちゃんと同期で黒魔術科の。ナルムクツェ・アロせんせーですよ〜」

「ナ?……あぁ!この前、一緒にお茶したよ」

「は?」


 予想しなかった言葉に思わず普段からは想像もつかないような低い音がこぼれた。

 明らかに変わった声色もお構いなしに、エトは斜め上に視線を移しながら思い出すように続けた。


「違うな。あたしがご飯食べてたのね。そしたらアロせんせが同じテーブルに来てお茶してた。でも怒ってたの」

「……へ、へぇ〜?そうなの」


(僕がいない所であの人何してくれちゃってんの)


 ヨハネスは口元を引きつらせながら無理やり口角を上げて応えた。

 言い方からして調子を崩す前のようで、特に要因ではなさそうだ。

 しかしまさかナルムクツェの方からエトを構っているとは。わからないでもないが予想外だ。

 エトは友達のような気安い雰囲気を纏っており、多くの生徒や職員から慕われている。加えてどこかへふわふわと飛んでいってしまうタンポポの綿毛のような、危なっかしい日常を送っているので、学内の至る所で声をかけられている様子を見る。


「そうなの!せっかく間違えずに『アロせんせ』って思い出せたのに。何で怒っちゃったのかなぁ」

「アロせんせはカリカリしてるから、エトちゃんと波長が合わないんだろうね」

「不思議だねえ」


 今日はいつも以上にぽやぽやしてるな。

 会話ができているようで実際は上の空なのだろう。

 それでも先ほどよりは調子を取り戻したのか、飲み切ったカップを手元で弄びながら、メロディを口ずさんでいる。


「CC〜GG〜AA〜G〜♪」

「飽きちゃったの?ほら、カップちょうだい」

「〜♪ありがと〜♪♪」


 ヨハネスはスツールから立ち上がって、彼女の手からカップを受け取ると、備え付けの流しに向かう。

 耳に入ってきた音は、時折「言葉」になったり無意味な「音」として紡がれるが、耳馴染んだメロディだった。


 これだ。

 エト・アメルスはおそらく「歌う」ことで何かしらの魔力を作用させている。

 理論よりも感覚的に魔術を発動させているのではないだろうか。音楽療法学科に何かヒントがあるかもしれない。



「エトちゃんそれ好きだよね」

「え?何が??」

「『きらきら星』、よく歌ってる」

「そうだっけ?なんでだろ」


 ふと、エトの脳裏に知らない光景がチラついた。




 真っ暗な夜の空を縦断する無数の白点。

 それをなぞるぼんやりと浮かんだ不思議な色の光。


 __ほらエト、綺麗ねぇ。

 __私たち、アレが好きなの。


 頭上から声が聞こえる。首の自由が効かず、声の方向を見ることができない。

 視界の端から指差す手が現れる。指す方向は空。いっぱいに広がる満天の星。

 身体に伝わる一定のリズムと、歌声。

 あれは一体何だった?


 __あなたは、神様がくれた御星様エトワールなのよ。



「ずっと前に、聴いてたからかな」

続きは本日の21時に更新します

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