1番輝ける場所へ
適性のある人材に手を差し伸べることは、適性のある人物に行わせることに意味がある。
『才能は輝きだ。君のギフトは君が大事にするんだ』
『君が1番輝ける場所に行ってみないかい?』
その言葉はエト自身を照らした希望の光なのだ。彼女はその手を掴んだ日から、己の道を歩み始めた。
エト・アメルスはネビュラルきっての生え抜きである。
そうして育った環境で才能を見る目を養うのだ。
自分の領域と関わる分野を熟知している年下を彼女は知らない。リアンという少年はその時点で知的好奇心を大いに煽ったのだ。
それから通い詰めること数ヶ月、リアンを知れば知るほど目を見張るものがあった。
彼は長年鉱山に勤める職人たちと同等に渡り合うための何かを既に会得している。それをどう覚えたのか、無意識なのか、詳しいことは教えてくれなかった。
通い始めてすぐにわかったことではあるが、彼はとても物静かだ。エトが10質問して1返ってくればいい方で、本来彼女のようなタイプは苦手なのだと思う。
それでもエトが一生懸命、魔力鉱物について聞いてくるものだから、リアンも珍しく口数が増えるこの時間が悪くないなと感じ始めていた。
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「え、見つかったの?」
「うん!リアンのおかげで、新しいアイテム開発に欲しかった動力源の鉱物!やっぱりディーダラスに来てよかったぁ〜」
「……そう」
ある日、いつものようにエトが鉱山にやってきて、世間話とともにそう言った。
坑道の入り口あたりで黙々と石を仕分けるリアンの口数はもともと少ないため、いつもと違う様子に気付かずに、エトは入り口の近くで今後について忙しなく語り始めている。
これで自分の望むものが作れるのだ。あとは卸の状態でネビュラルに手配させるだけだ。
制御の実験は原石の状態からおいおい進めるとしても、不安が残る。どうしても諦められない。
「だからね!リアンも一緒に来ない?」
「…………」
「ねぇ!?聴こえてる!?」
「あ……何?」
相変わらず脈絡のない会話は、様子の違うリアンはさらに聴き取れていなかった。
ぽかんとした様子で声の方を見ると、花が綻ぶような満面の笑みを向けるエトが逆光の中でこちらに手を差し出していた。
「“君が1番輝ける場所に行ってみない?“」
その言葉に、リアンはまるで最初から決まっていたかのように、ふらふらと近づいてしまう。
入口から差し込む光に目がくらむも、リアンは無意識に光の方へ手を伸ばしていた。
掴んだその手が、震えていたことを知っているのは__
互いに二人だけだ。