リュバン家
あれから3人でお茶をしながら、マダムを介して令嬢を紹介された。
「こちらはエイル伯爵のご息女ピーアニー嬢。さっきも言った通りうちのお得意様なの」
「はじめましてピーアニー・エイルと申します」
「こちらこそはじめまして、リアンです」
なんと彼女は伯爵家のご令嬢だった。さすがリュバン家のコネクションはすごいなと思いつつ、リアンは学術院の生徒であると自己紹介をした。
するとこの状況に戸惑い気味だったピーアニーの表情が一変した。
「あ、あの!私っ…年の近いお友達で、学術院に通っている方がいなくて……」
アラステア王立学術院には各国の貴族の子女達も在籍しているが、そのほとんどが人脈づくりなど何かしら目的がある。
単に教養を身につけさせるだけなら、貴族は家庭教師が一般的であり、わざわざ学術院に入学する必要がない。要するに一種の憧れに近いものが彼女にはあるのだろう。
学術院内は学生以外の利用が可能で、多くの民間人が出入りしている。そんな中、彼女が関心を示しているのは図書館だった。
リアンは本が好きでよく利用していると伝えると、好きな本の話で盛り上がった。初対面の、しかも貴族の子女とどのような会話をすればいいのかと悩まずにすみそうで内心ホッとする。
カトレアはお茶とお菓子を楽しみながら、たまに会話に入っては相変わらずニコニコとこの状況を楽しんでいた。これがリュバン家の血か、とリアンは痛感する。
その後は穏やかに時間が経過し、15時を知らせる時計の音でピーアニーは「そろそろ帰りますね」と腰を上げた。
「あの…よろしければ、またお話ししていただけますか?今日とっても楽しかったので」
「え……あ、はい」
帰りがけに手紙を送りたい旨を伝えられた。リアンは送り先を教えた。貴族の連絡先を聞くのは気が引けるので、あえて聞き返せずに手紙が来たら返すスタンスでいるつもりだ。
「ピーアニーちゃん、よかったわね。社交界以外のお友達ができて」
「はい!読書仲間が増えて嬉しいです」
ではまた、と彼女は外から御者に呼ばれてその場を後にした。
「ありがとうリアンくん。あの子とお喋りしてくれて。仲良くしてくれると嬉しいわ」
「それは全然問題ないです。本当に懇意にされているんですね」
「えぇ、あの子アンティーク大好きなのよ」
貴族間ではファーストネームで呼び合うことは、とても親しい間柄の証拠である。彼女はいたくカトレアに心を許しているようで、短い時間でもそれが伝わってきた。
ほう、とため息をつきながらカトレアはうっとりした表情で呟いた一言に、リアンは度肝を抜かれることになる。
「はぁ…良い子よねぇ……うちの未来の姪っ子」
「はっ!?」
ほんと、これだからリュバン家は。




