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車窓に憧憬を望む

作者: 音月風香

伊吹はその日、とてつもなく退屈していた。なので、伊吹は初めてドライブすることに決めた。



─────────────────────────────────────



車に乗り、車窓からの流れる景色を楽しむ。スタートは雪国だ。


季節は春のはずなのに、寒い地方故の雪と梅。その色のコントラストに感嘆する。

未だ、本物の姿を見たことのない梅、匂いは如何程なのだろうか。非常に芳しいとは聞く。知識欲に塗れる心を置き去りに景色は進む。


いつのまにか雪は眼前から消え、市街地の景色がやってくる。昔ながらの建築物と背の低いビル、遠方には城が見える。かつては大きく見えたのだろうか、時の流れに思いを馳せる。


景色の揺れに酔い始めた頃、話に聞く、トンネルとやらに変わった。思っていたよりかは暗く、ドライブルートには狭く感じた。

見るものも少ないので丁度いいと思い、少し早めの昼食にする。あらかじめ用意しておいたバケットに入った さんどうぃっち? に挑戦する。まずは一口齧ってみる。思っていた以上に美味かった。今日は新しいことばかりだ。そして、その全てが正解とは素晴らしい。


「ドライブにおすすめ!片手で食べれるサンドウィッチ!」を食べ終え、必要無くなったバケットと包み紙をダストシュートに突っ込む。もうすぐトンネルが終わる。


「トンネルの向こうは雪国」が昔はお決まりだったらしい。季節が夏でもそうだったのだろうか。一体どういう理屈でそうなっていたのだろう。

トンネルの向こうは山間だった。葉のついていない生きた樹木は初めて目にする。正確には車窓越しだが。山中にも花のなる木があるのか。新しい発見だ。まさか自生する花のなる木があるとは。既に葉のついている木も見受けられる。麓の集落には梅の木も見え、いかにも春の山といったところか。


またもやトンネルに入ったので午睡とする。予定時刻を見てタイマーをかけ微睡む。



※※



高い電子音によって引き戻される。うっかり寝過ぎていないかと心配したのも束の間、少し早めに掛けたタイマーのおかげで丁度、景色が変わるところだった。


いつのまにか、ドライブの終わりが迫っていた。車窓に映る景色にはビルが増え、桜や葉のある木はほんの少しになってしまった。こんなにも多くのビルはだいぶ久しぶりに見る。しかも一つたりとも崩れていないのだ。どこを見ても崩壊の跡を残さないビル。このドライブは素晴らしい。最高だ。




─────────────────────────────────────



ドライブは終わり、贅の限りを尽くした娯楽に伊吹は大満足だった。ドライブの前の退屈は見事になくなり、伊吹は穏やかな笑みを浮かべ、映写室を後にする。

ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

よければ、感想や評価をよろしくお願いします。m(__)m

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