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第四話 宴会

 


 ◇ ◇ ◇


「取り敢えず、バカ息子が無事に帰ってきたことに乾杯!

 そして、頂きます」


『カンパーイ!頂きます!』


 我が家のボスこと、母の音頭によってグラスの打ち合う音が鳴り響く。


「んんー、やっぱ豪にいの料理うまぁ!

 十年ぶりだけど腕上げてるねぇ!」


「違いねぇ!これ美味っ!兄貴のピザ美味っ!」


「はいはい、お前ら今年二十五に二十二だろ?

 少しは落ち着いて食えよ」


 我先にと、羽月と英がピザを貪っている。

 てか、ピザ貪る姿が昔と変わっていないのは……微笑ましいのか?

 俺には残念にしか見えんぞ。


「兄さん、相変わらず料理が上手。

 特にこのパエリアは美味」


「羽月は昔からパエリア好きだと思って、作ったんだよ」


「良き」


 お前はもう少し感情のバリエーションを増やしたほうがいいんじゃないか?叶絵よ。


「豪、このアヒージョも絶品だよ、ワインに凄く合うね。

 調理方法はシンプルな筈……いや、だからこそ違いが出るのか。

 何故僕が作るのと、ここまで違うのだろうか……」


「ん?あー、それは多分ニンニクの入れるタイミング、それにスライス、微塵切り、潰すの、三つに切り方やらを分けているからだと思う。

 気が向いたら教えるわ」


「それは嬉しいね」



 優雅にワインを飲みながらアヒージョを楽しんで居る父。

 異世界での食生活は、食に関しては地球と近しい物があり、さすが日本ほど食文化が豊富では無かったが、苦にはならないレベルだった。


 まぁ、流石に醤油や味噌なんかは無かったけどな。

 しかし酒に関しては、エールと果実酒、あとは火酒の三種類のみで、実は地球に帰る楽しみの一つに地球の酒も含まれていた。


 初めて飲んだ酒が異世界の酒だったから、地球の酒はめちゃくちゃ楽しみである。

 そう思いながら、隣に座る和寛に注いで貰ったエールを眺める。


「緊張するな……俺初めて地球の酒飲むわ」


「確かに、お前が異世界に行ったのは十六の頃だったもんな」


「豪ちゃん喧嘩ばっかで、煙草は吸っててお母さん達に怒られてたけど、何故かお酒は手を出さなかったもんね」


 娘の日奈の様子を見つつ、和寛の隣に座る真子がニヤニヤ懐かしむような顔で話す。


「真子……忘れてくれ、若気の至りだ。

 それじゃ、頂きます」


 何故か皆が俺を見ている……。

 そっか俺以外の連中からすると俺が初めて酒を飲むところを見るのか。

 そんなに気になるものか?……って!?!?!?



「うまぁ!んだこれ!このエールうまぁ!!

 エールを冷やすだけでこんな美味いのか!!」


「ビールな、向こうだとエールが主流なのか?」


 一人テンションが上がりグビグビ飲んでいると、横に座る母が聞いてきた。


「ん?あぁ、そっか……これがビールか。

 向こうじゃエールしか飲んだ事ないな。

 しかも温いし冷やすって文化が無い」


「それは地獄だな、ぬるいビールなんか美味しか無いだろう」


 酒好きな母の事だから想像したのだろう。

 苦汁を飲まされたような顔をしている。


「だからこんだけ驚いたんだよ。

 っていうか、そもそも酒を飲んだ事がなかったから、ビールは冷えてるもんって意識がなかったわ……先入観怖ぇ。

 氷魔法つかえるんだから、冷やして飲めば良かった……」


「あとはどんな酒があったんだ?異世界には」


「俺が知ってる限りだと、エールに果実酒、あと火酒って言うドワーフ秘蔵の酒の三種類だな」


 エールや果実酒は比較的にどこでも飲めるが、火酒に関してはドワーフの里からは基本出回らない酒だから、ドワーフの里に行った時に初めて飲んだんだっけ。

 何も知らずにそのまま飲んだら、喉が焼けた思い出がある。


 ちなみになぜ出回らないかといえば、自分達が飲む分が減るから、出来たらある分飲んでしまえって精神のドワーフのせいである。

 酒好き過ぎだろ……。


「火酒ってウィスキーとブランデーだっけぇ?」


 羽月が俺たちの会話に入ってきた。

 ウィスキーにブランデー、名前は知ってるが勿論飲んだ事がない。


「火酒ってのは、簡単に言うと蒸留酒の事だよ。

 だから、製法も材料も様々だね。

 ウィスキー、ブランデーの他にもジン、ウォッカ、焼酎なんかも火酒の一種だよ」


 へぇー、そうなのか。

 てっきり火酒っていう酒の一つだと思ってた。


「父さん詳しいな」


「いやぁ昔ね、美和さんに連れ回されて覚えたんだよ。

 性格的に何事も知っときたいタイプだから」


 なるほど……。

 そして、その連れ回した本人は横で昔と変わらず飲みまくっている、と。


「英から和寛達も来るって聞いたから色んな酒を買ってきた甲斐があったね。

 ほら豪、異世界のしょぼい酒と違って地球はこんなにも酒があるんだぞ」


 おいおい、しょぼい言うな、ってか誰かボスを止めてくれ……。

 おい!誰か目を合わせろよ!


「英、席変われ」


「えぇー、俺母さんの隣はちょっと……」


『あ゛?』


「はい、今すぐ変わります!」


 俺と母さんの睨みにすぐに立ち上がる英。

 よし、それでこそ俺の弟だ。


「豪は美和さんに似たんだろうねぇ」


「いや、父さんが行ってよ」


「英!良いウィスキー買ってきてやったんだよ!

 そのまま氷と炭酸持ってきな!」


 おぉ、怖っ。

 俺たちは勿論、和寛まで体ビクッ!ってなってるぞ……。


「あっ英、氷は入れ物だけ持ってくれば良いぞー」


「ん?了解……っと、はい。

 氷はいらんの?」


「氷は……っと、はい」


『おぉ!!』


 いちいち氷を取りに行くのも面倒だから、氷魔法でグラス用の氷を作り出すと、歓声が上がった。


「異世界って本当だったんだなぁ、それが魔法か」


「ん?信じてなかったのか?車持ったじゃん」


 氷を見ながら和寛が呟く。


「ほぉー、こりゃ便利だね。

 わざわざ英や猛に取りに行かせなくても済むじゃない」


 英、父さん……。

 なんか……少しは優しくしてやろうかな。

 ま、英に関しては末っ子の宿命。

 父さんは年上女房を持った宿命だな。

 うちは母が強過ぎる、そして英と父さんはそのキャラなのが悪い、うん。








 ◇ ◇ ◇


 その後、俺の詳しい異世界話や、他の皆の俺の知らない話などを話していると、時間も時間になった。

 和寛の娘の日奈ちゃんが眠りについた為、真子はそのまま日奈ちゃんと就寝。

 母さんも珍しく酔ったのか続けて眠り、羽月もお肌が〜とか言って寝てしまった。


 残りの、俺、父さん、叶絵、英、和寛の五人はまだまだ飲み会継続中。

 そして、酔っているのが五人も集まると必然的に……。


「そうか、お前も大変なんだなぁ」


「和さんもそんな悩んだりするんすねぇ」


「和さん、ちっちゃい」


「ま、若いうちはねぇ。

 時間が解決する事もあるさ、夫婦と言っても元は他人なんだからねぇ」


 と、和寛の悩み相談に突入していた。

 というより、叶絵よ。

 いくら昔から知ってる兄の幼馴染とは言え、ちっちゃいは辞めてやれ、ほらビビリでセンチな和寛が落ち込んでるじゃんか……。


「っと、そう言えば、叶絵に英、お前達相手は居ないのか?」


 ピキッ!


 俺の一言によって一瞬で空間が凍りついた。

 え?……俺何かやっちゃった?







第四話になります。

今のところ順調に投稿できており、このまま頑張ろうと思います。


ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

良ければ評価などして頂けたら幸いです。

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