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第二話 家族

 

 ◇ ◇ ◇


 十年ぶりに実家に帰ってきた俺は、弟の英と再会し、そのまま家の中へと連れ込まれた。

 驚愕する父に無言の母、仕事を終えて帰ってきた妹達を含め家族みんなで話をしよう、ということになり、現在に至る。


「それで?なんか言うことは?」


 我が家のボス、母の美和の声がリビングに響く。

 父に双子の妹、弟の英に関しては驚いていたものの、再会を素直に喜んでくれた。

 しかし母に関しては俺が帰ってから今まで、一言も発していなかったのである。

 そして第一声がこれだ……怖すぎじゃありません?


「えーっと、信じられないと思うんだが……」


「そんな事?十年ぶりの家族に言う事は?」


 ヤバい、めっちゃキレてんじゃん。

 母よ、異世界の暗殺者みたいな目をしているぞ。


「ま、まぁまぁ美和さん、豪が無事に帰ってきたんだから、まずは再会を喜ぼうじゃないか、ハハハ……」


「あんたは黙れ、私は今豪に聞いているんだよ」


 発言した途端、一瞬でカウンターを喰らう父の猛。

 昔から思っていたが名前負けが半端じゃない。

 母さんは十年経っても恐ろしいほど変わらないが、父さんは見事に老けたなぁ。

 まぁ、理由は察するが……。


「父さん、何言っても無駄、母さんがこうなったら無理」


 これが俺の二歳年下の双子の妹で、姉の叶絵。

 昔から静かなクールな子だったが、クールなところは変わっておらず、見事に大人の女性になっているな。


「豪にぃウチお腹空いたぁ、久々になんか作って〜」


 こいつが双子の妹の方の羽月。

 昔から横着でヘラヘラしてる子だったが、見事にギャルへと進化した様である。


「兄貴なんか体凄くねぇか?鍛えてるのか?」


 そしてこれが英。

 こいつは見た目はまともなのだが、悲しい事にとにかくバカなのだ。

 俺に虐められていたとか言っていたが、九割は俺に謎に掛かってきたこいつが原因である。

 向こうの冒険者でこんなのいたなぁ……マジで脳筋な奴。


 うわぁ、それにしても無法地帯かこの家は……。

 そして相変わらず親父は弱いな、うん、頑張れ。


 あぁこの感じ、本当に戻ってきたって自覚する。

 相変わらず元ヤン夜露死苦な母に、まるで緩衝材の様にみんなの間を取り持つ父。

 真面目クールと横着ギャルな双子の妹に、アホで馬鹿な弟。

 うちの家は相変わらずバラエティに富んでるというか……。


「はぁ、取り敢えず十年前のあの日から今まで、俺に何が起こっていたのか説明するから黙って聞いて欲しいんだが?」


 そこから俺はこの十年間で何が起こったのかを説明した。

 学校からの帰宅途中に異世界に突然転移。

 その後異世界では、生き抜く為に冒険者となり今まで過ごしたこと。

 数年経ったある日、帰る手段を得て、今無事に帰ってきたなど……。

 そして、話した家族の反応が……。


「…………」母

「ハハハ、それは凄いねぇ……」父

「兄さん、知り合いの精神科を紹介する」双子姉

「ふーん、取り敢えずご飯まだぁ?」双子妹

「え!?んじゃ魔法とか使えるのかよ!」弟


 で、ある。

 下二人に関しては頭が痛いところだが、父と叶絵の反応が普通である、信じるわけねぇよな。

 母は何考えてるか分からんし、無言が一番怖い。


「それが本当だったとして、証明できる?

 そこのバカが言ってる風に魔法とか使える訳?」


 おいおい母よ、実の息子に対してバカは可哀想……いや、あいつならいいか、恐らく脳みそまで筋肉になってしまったのだろう……。


「あぁ、ここじゃ流石に危ないから目には見えない魔法を使うけど、それでいい?」


「明らかに超常の物だったら納得するしか無いからね」


 よし、母の言質も取ったところで、何をするか。

 んーっと、そうだな……。


「英、お前今体重いくつ?」


「ん?へへっ、昔と違って俺今部活で鍛えてっから、百十キロもあるぜ?」


 いや、そんな自慢気にされても……。

 今なら俺に勝てるとか思っているんだろうが、ごめんな……兄貴は向こうで化け物ばかり相手にしたから、お前如き人差し指でも倒せるぞ?


「んじゃ、俺の人差し指の上に足を乗せてくれ。

 このまま持ち上げるからバランス取れよ?」


「……え?いやいや、流石に…」


 冗談だと思っているのか、ヘラヘラとバカにしている英。


「早く」


「あ、はい」


 英がしゃがんだ俺の人差し指に乗る。

 ここで身体強化をかけて……


「よいっしょ……これが身体強化の魔法だ」


「おっ、えっ、わっわっ!!」


『えええぇー!!!』


 俺が人差し指で英を持ち上げると、父と双子の三人が驚いて声を上げる。

 母を見ると口を開けて呆然としている。

 ははは、あの母が驚いている。

 もう少しサービスしてやるか?


「よっ、はっ、ほらっ」


「うわっ、兄貴っ、やめてっ、これっ、こわっ」


 俺が片手で英をボールの様に投げていると…。


「豪、分かった。

 あんたの事は信じるから、取り敢えず下ろしてあげな」


「はいはい」


「ふぇー、助かったぁ……」


 そして無事全員信じてくれた様で、俺がいなくなってからの家族の動きや、俺のことを詳しく聞こうとなったのだが。


「ねぇーえー、お腹すいたんだけどぉー」


 と、羽月の言葉により一先ず夕食の準備に取り掛かる事になり……。


「豪、あんた酒は飲むのかい?」


 突然、母が話しかけてきた。


「ん?あぁ、向こうじゃ友達のドワーフに認められるレベルで酒は強かったし、酒も好きで次の日休みだと飲んでたよ」


「へぇー、そりゃいいこと聞いた。

 あんた達明日は仕事休みにしな!

 今日は飲んで明日は爺ちゃん達に顔見せに行くよ!」


「はぁ仕方ない、有給使う……」


 母の突発的発言にも冷静に対応する叶絵。


「えぇー、明日イベントあんだけどぉー。

 ま、しーちゃんに任せときゃ大丈夫かなぁ」


 羽月がイベント?何の仕事をしとるんだお前は。


「えぇ、まぁどうにかなる……いや、どうにかするけどね。

 ……明日も潰れるとなると今のうちに……」


 父の猛は弁護士で個人事務所だから都合は何とでもなるんだろうが、仕事が残っているのだろうか…ブツブツ何か呟いている。


「うぇーい!って事は明日も飲みじゃん!

 バイトも大学も休みだから、最高じゃん!」


 と、英が踊り喜んでいる。

 っというか、お前大学入ってんのか?

 そんな頭……いや、絶対部活で推薦入学だなこいつは。


「豪あんた向こうでも料理はしてたの?

 まあどっちでもいいけど、英連れて買い物に行って、先に料理してな?

私は今から会社に行って、仕事片付けて酒買ってくるから」


「……はいよ」


 我が家の暴君こと、母の美和は自身のアパレルブランドを持つ女社長である。

 あれでも一応、凄腕弁護士である父よりも稼ぎが良いらしいから、我が家のカーストトップに君臨している。


「って事だ、英。

 車出してくれるか?」


「おっけー、俺兄貴の手作りピザ食いたいわ」


「はいはい」




 こうして、各々動き出したのであった。





第二話になります。

ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

良ければ評価して頂くと幸いです。


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