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第十六話 オープン

お待たせしました!!




 ◇ ◇ ◇


 俺が日本に戻ってきて早一年。

 ようやくこの日がやってきた。


「兄貴ー、あっ、店長!仕込みの方完了しました!」


「うむ、よろしい」


 バロンが仕込みを完了させたようである。

 そう、遂に、爺ちゃんから受け継いだ焼き肉屋【肉呑】のオープン当日である。


 本来はアルバイトやパートも入れて、ランチから夜までシフト制で回そうとしていたのだが、結果的に全員社員として雇う事になった為、まずは営業時間を夕方から深夜までとし、フルメンバーで営業していく事になった。



 ちなみに建築会社さんが、一から作ってくれた店舗は見事以外の言葉が出てこなかったほど完璧であった。

(四階の我が家も完璧であった)


「さて、あとは六時のオープンまで適当に過ごしてくれて良いぞ。

 今日は最後の説明と確認を踏まえて全員で仕込みや掃除なんかしたが、明日からは仕入れ込みで、キッチンとホールそれぞれ交代制にするから、そのつもりで」


『はい!(おう!)』


「それじゃ、解散」


 俺の掛け声で全員がそれぞれ動き出す。


 爺ちゃんがやってた時は、十一時から十四時までのランチ帯と十七時から二十二時までのディナー帯と言った具合に、二部制で営業していたのだが、俺のいない十年もの間で街の開発がどんどん進んでおり。

 更に賑やかな繁華街へと進化していた為、一先ず十八時から二時までの営業とする事にした。

 一旦辞める事になったランチ営業は、様子を見るつもりである。



 近所や知り合いからは復活を喜ばれ、どんどん人口が増加しているうちの地元での、飲み屋街のド真ん中。

 正直オープンから数日くらいは満席が理想なのだが……。


「さて、どうなることやら……」









 ◇ ◇ ◇


「いらっしゃいませー!何名様ですか?

 店長ー、四名様です!」

「いらっしゃい!咲、四番卓に通して」

「はーい、こちらへどうぞー!」



「五番、六番、新規です」

「はいよー、注文順に伝票置いといて。

 ミラ、そのまま三番にオーダー聞き行って」

「分かった」



「ゴウ、一番でバーカスがなんでも良いから良い酒もってこいだそうだ」

「はいよー、遠慮無く一番高い酒持ってってやれ」

「了解」



「あに、店長!

 十番で兄貴のお袋さんがいつものアレを持ってこい、だそうで……いつものって何すかね?」

「はぁ!?なんだそれ。

 今手放せないから、何が欲しいのか具体的に聞いてこい!」

「えぇ、兄貴のお袋さんめっちゃ怖いんっすけど……」

「うるせぇ!バロン!早く行け!」



「兄貴、咲ちゃんが酒のオーダー詰まってきてるから少し任せるわ!」

「おいっ!てめぇ、英!

 ……ってもう居ねえし、ああもう、この状況でキッチン一人にするバカいるかよ!」



 と、こんな感じでまさかの大盛況である。

 客の半分以上が身内だが……有難い事にほぼ満席状態である。

 基本的にキッチンが俺、英、ミラの三人。

 ホールが咲、バロン、サラの三人で回すつもりだったのだが、まさかの盛況っぷりにホールが足りなくなり、ミラに臨時でホールに出てもらっている状況である。


 そして今、彼女である咲が酒のオーダーが詰まっているのに気付いた英が、ホールへと助っ人に行ってしまった為キッチンは俺一人。

 あのくそ野郎……覚えてろよ。





 有難い事に大盛況の初日を乗り越え、現在閉店後のミーティング中。

 まずは一日やってみての感想や意見を聞いている最中である。


「やっぱ十八時から二十二時くらいはアルバイト雇ってでも人増やした方良いんじゃね?

 今日みたいに閉店まで満席って状態は、流石に毎日続くとは思わないけどさ。

 ざっと計算しても、今日の三分の一以下の売上でも、全然余裕で利益は出てるしさ」


 流石に体力バカの英も疲れたようで、アルバイトの増加を提案している。


「そうだなぁ……。

 まぁすぐ募集したとして来るかも分からんし、研修する暇もないから、落ち着くまではこのままのつもりだが……。

 うん、そうだな、その方向で話を進めてくれて良いぞ?


 それと英、お前咲がヤバそうだからって直ぐに手伝いに行くのはやめろ」


 急にキッチン抜け出してから、二十分も俺を一人にしやがって、魔物以外で初めて死ぬかと思ったわ。


「ごめんごめん、居ても立っても居られなくてさ……でも、兄貴ならいけたっしょ?」


「結果論な、それ。

 元々三人で回すつもりなのに、途中から二人で回してたのは分かってた筈だぞ?

 お前がドリンクの方に気が付いた事は良い事だが、周りを見てるようで咲ばっかじゃねぇかよ」


「ゾッコン……バカップル」


「うっ」


 俺の言葉に続けて、ミラの指摘に言葉を詰まらせる英。


「み、ミラちゃん!?

 バカップルって、私はちゃんと仕事してたよ!」


「咲は常にキッチンチラ見してた。

 もはや普通に眺めてた」


「うっ」


 おいおい、普通に仕事しろよバカップル。

 常にチラ見してたら、もはやチラ見じゃねぇだろ。


「まぁバカップルは置いといて、他なんかあるか?」


「初日で多少ぎこちなさはあったが、ホールに関してはほぼ問題ないと思う。

 まぁ今日は酒飲みが多かったからだろう、先程話していたドリンクが滞っていたくらいだな」


「「ぐっ」」


「どうしたんだ?」


 サラの無意識パンチを勝手に食らっているバカップルは良いとして……。

 そうだなぁ、今日は予想以上に酒飲みばっか来てたからな(忙しくしてたのはほぼ身内です)。


「キッチンに関しては、二人だとめっちゃ忙しかったが、回せない事は無かったな。

 基本は三人で回すつもりだから、キッチンの募集は必要ないかな」


「問題ない」


「そうだな、ミラもお疲れ。

 それに、接客嫌がってた割には良く出来てたと思うぞ?」


「むふー」


 嬉しそうで何よりである。

 本当は男連中でキッチンのつもりだったのだが、ミラが接客を嫌がった為、バロンをホールにしたのだ。


「バロンもお疲れ、大学生にモテモテだったじゃん?」


 お客さんで来ていた英の同級生に、めちゃめちゃ話しかけられて盛り上がってたの見たぞ?


「……男にモテても嬉しくないっすよぉ」


 ま、詳しく言えば英の所属するラグビー部の男連中に、だからな。


「……まぁ、うん、どんまい」


「……あぁ、彼女欲しい」


 コイツ、顔は悪くないしガタイも悪くない、というかヤバい(ゴリマッチョ)からカッコいいと思うのだが、向こうでは一切モテていなかった。

 こっちに来てからも相変わらずの様で、ナンパに失敗した、と飲みながら愚痴っているのをよく見かける。


「よし、取り敢えずミーティング終了。

 明日からの準備は交代制だから確認してから帰る様にな。

 んじゃ、お疲れー」


『お疲れ様(っす!)』








 ◇ ◇ ◇



 オープンから一ヶ月が過ぎた。

 流石に常に満席状態は落ち着きを見せ始め、程良く忙しいと言った具合であり、充実した日々を過ごしていたある日。


「いらっしゃいませー!

 あ!イワンさんにマゼラさん!

 お久しぶりです!」


「久しぶりじゃな、賑わっておる様でなにより」


「咲も元気そうでよかったわ」


「はい!お陰様で!

 テーブルにお座敷、お得意様専用でカウンターがありますけど、ご希望はありますか?」


「カウンターじゃな」

「えぇ」


「それではこちらへどうぞー」


 ん?親父にマゼラ?

 正月以来だが、日本に戻ってきてたのか?

 前会った時はお互いそれぞれ海外に居たはずだが……。


「久しぶりじゃの、ゴウ」


「おう、二人ともこっちに来てたのか」


 咲に案内され、テーブル席と座敷席があるホールとキッチンの間に存在する隠れスペースに二人がやってきた。

 ここは知り合い限定のお得意様専用カウンター席

 である。


「良いお店じゃない、繁盛している様で何より。

 それにこのカウンターも注目浴びなくて助かるわ」


「エルフやダークエルフは美形ばっかだからなぁ」


 サラやミラも含め、エルフとダークエルフは全員美形なので視線が鬱陶しいと、マゼラには前に愚痴られた記憶がある。


「二人とも何飲む?」


「ビールじゃ」


「私はおすすめの赤ワインで、食べ物に関してはお任せで」


「ワシもじゃ」


「はいよ、バロンー。

 生に赤ワインおすすめで、カウンターに宜しくー」


 俺の声に反応良く返事をするバロンの声に二人して笑っている。

 その後、二人の箸と酒はどんどん進み、落ち着いた所でようやく本題の様だ。


「前にお主のビルで喫茶店をやると話をして居たじゃろ?」


「あぁ、工事に関しては完了してるし、予め必要な物も既に揃えてるんじゃなかったか?」


 うちのビルが完成した段階で、親父の喫茶店も完成している。


 建築段階から親父の喫茶店も含め、三つの店舗は契約が決まって居た為、用途別に追加工事も同時進行で行っていた。



「うむ、それでワシに関しては明日から営業を開始するのでな。

 前祝いで顔を出そうと思っておった所に……」


「私の方も来週には開店できる状態になったから、ついでに一緒に祝いに来たって訳よ」


 なるほど、それでか。

 ちなみにマゼラもうちのビルで自分の店を出すのである。


「へぇ、もう勉強は済んだのか?」


「ふむ、問題無い筈じゃよ」


「私の方も問題は無いわね。

 あとはお客さんを待つのみ、って言ってもあなた達のところと違って、私の店は完全予約制にするつもりだから気楽にのんびりやるつもりよ」


 マゼラは自身の薬学の知識に加え、地球での薬学の知識を得ていた。

 そして何よりも地球の美容に特に興味を示し、世界中の美容を学ぶ為、海外を飛び回っていた。


 それにしても女性限定とは聞いていたが、完全予約制とは……凄い人達が通いそうである。


「ゴウ、お主は飲まんのか?

 飲めるのなら奢るぞ?」


「ん?あぁ、ならありがたく貰おっかな」


「えぇ、今日はお祝いだもの。

 どんどん飲んで良いわよ?」



「……お手柔らかにな」







 その後、普段はアクの強い面々に囲まれている為保護者ポジの二人が、珍しく飲み潰れて四階の俺の部屋に泊まることになったのは、良い思い出である。







第十六話になります。


少し期間が空いてしまい申し訳ございません。

ストックの中で問題点を発見し、話を遡り影響する部分から丸ごと書き直しておりました。(現在投稿済みの話に影響はございません)


そしてリアルの方も多忙となり、今後も隙を見て投稿を続けるので温かく見守ってくれると幸いです。


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