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第十三話 バカンスだけじゃない?

 



 ◇ ◇ ◇


 沖縄に来て二日目。

 俺は民宿の大広間に全員を集めていた。


「取り敢えず今後の予定を話すから、ちゃんと聞けよ?」


 俺の言葉に多少ザワザワしながらも、一応こちらを見ている異世界組。

 何となく教師にでもなった気分である。


「ここに来るまでの一ヶ月弱で、大体の常識なんかは身についたと思う。

 異世界での力を隠す事無く活かして、生きて行くつもりなら、余裕で生きていけるだろう……が。

 ……もう分かるだろ?魔法なんか使ってみろ?

 絶対目立つからな?そして、俺は面倒事が嫌いだから余程のことじゃ無い限り助けてやらねーからな?」


 一部以外は分かっているのだろう、大体の奴らが微妙な表情を浮かべる。


「そこでだ、まぁ目立つな、とは言わん。

 そういう職業もあるからな、俺が言いたいのは地球の常識の範囲内で動けよ?という事だ。

 別に何やってくれても構わんが、地球風に言えば非科学的な超常現象は起こすなよ?って事。

 取り敢えずここまで分からない奴は?」


 よし、なんとか大丈夫なようである。

 何人か危うい奴がいるが、そいつらは後から話すか……。


「取り敢えず、全員の口座に一千万ずつ振り込んである。

 多少多い気もするが、俺からの選別だと思ってくれ」


 俺の発言に、俺以外の全員が驚いている。

 そりゃそうだ、一千万である。

 何もせずに暮らしてても一年は余裕で暮らせる。

 しかも今から一年の間、民宿の宿代に携帯代。

 その他税金に、民宿での飯代に関しては全て俺持ち。


 よほどのアホじゃ無い限りここに居る一年で溶かすやつは居ないだろうが……。

 お小遣いで月八十三万なんて超贅沢だからな?

 特にニヤニヤしてる酒好き共が心配だが……。


「言っておくが、特別な理由がない限り追加援助はしないからな?

 普通に足りなくなったなら、後は自分で働いて稼げよ?」


 ザワザワうるさいが大丈夫であろうか……。

 要するに手切金だからな?俺に迷惑かけたら地獄の果てまで追いかけてぶっ飛ばす。


「おーい、よーく聞け!

 未成年、つまり十八歳以下の数人は、もしもの時俺が面倒を見るつもりでいるが……。

 ほとんどの成人してる奴に関しては、最長でも面倒見るのはこの一年間だからな?

 いくら別の世界だからって全部俺が面倒見ると思うなよ?

 一年たってもプラプラしてるやつはぶっ飛ばすからな?」


 何故か最後のぶっ飛ばす発言で大人しくなる一同。

 俺の事だからやりかねないって事か?

 ……やかましいわ!


「よし、それじゃあこうやって説明するのはこれで最後だ。

 後は各々今後の人生を考えて、一年の間で何とかする様に。

 ここから出て自由にする際は、色々手続きなんかがあるから、予め言っておく様に!

 勝手にいなくなるなよ!マジで面倒なんだぞ!

 あとここにいる間は、せめて民宿の人には迷惑をかけんなよ!


 あっ勿論、俺にも迷惑かけんなよー、マジでぶっ飛ばすからな?

 もし何かわからん事があったら……英に聞け。

 以上、解散!」


「おい、兄貴!」


『はーい』

『うむ』

『了解!』


「おい!」


 よし、英も絶好調だな。  




「ねーねー、豪にい!」


「ん?どうしたんだ?咲ちゃん」


 俺がバラバラに行動し出す異世界組を若干心配になりながら眺めていると、今回、何故か同行に名乗り出た咲ちゃん(和寛の妹)が俺に話しかけてきた。

 十年ぶりの再会だが、あの頃はランドセル背負ったちみっ子が成長したものである。


「英くんって、豪にいの店で働くんだよね?」


「ん?あぁ、そうだな。

 何故かは知らんが、大学卒業後はうちに就職するって言われてさ」


 あの日働きたいと言われた後も、特に詳しい事は聞いていないが、何やらやる気がある様なので大丈夫だろう。


「アルバイトで良いからさ……私も働かせて欲しいんだけど……」


「まぁ、あいつ以外にもアルバイト入れるつもりだったから良いけど……何でまた?」


「私、英くんが大学行ってる間、病気でずっとウチにいたんだけど、豪にいのおかげで治ったでしょ?

 そろそろ社会復帰しようと思ってるんだけど、いくら病気とは言え、高卒じゃなかなか良い所がなくてね?

 そしたら、豪にいがお店やるっていうし、正社員のお給料も福利厚生も良さそうだしね!

 だから、アルバイトから正社員目指すよ!」


 んふーという効果音が聞こえてきそうなくらい、気合いが入っている、かあいい…っと、いかんいかん。


「なるほどなぁ、取り敢えずアルバイトって事で進めるけど、機会を見て正社員にするから、よろしくね?」


「ほんと!?ありがとうー!」


「ほんっと、兄貴は咲ちゃんに甘いよなぁ……」


 うるせぇよ、お前達三人もこうやって可愛けりゃ可愛がってやったさ……多分。


「ま、取り敢えずあと一年もあるんだ。

 そのうちアイツらの中からも働きたい奴が出てくるかもだし、出てこない時のことも考えて、一年で準備しとこうぜ?」


「おう!」「うん!」


 その後、俺たち三人はひとまず海にて遊び回ったのだった。








 ◇ ◇ ◇


 沖縄に来て一週間が過ぎた頃、俺と英、そして咲ちゃんはようやく店の業務内容について話をしていた。

 いや、決してこの一週間遊んでいたわけでは……すいません。


「……なるほど、なら味付けは変えない方向でいくんだな?」


「おう、そもそも爺ちゃんの店は後継者がいないから閉めたんだ、決して客足が途絶えたわけじゃない。

 むしろ惜しまれてまでも閉めた店だ、変に味付けを変えて客足が途絶えても困る。

 変えるより追加して、客の反応を確かめてみるってのはアリだけどな?」


「確かに……」


 俺と英が話し合っていると……。


 コンコン。


「あっ、私出るね!」


 部屋にノックの音が響き、咲ちゃんが確認しに行った。


「……なんでお前にやけてんの?」


「……もし結婚したら、こんな感じなんかな?って思って」


「きも」


 なんで今の流れでその思想になるのか……全くもって不思議である、コレが彼女ができる奴らの思想なのだろうか……いや、そんな訳ないな。

 英が俺に対してぐちぐち文句を言っているのを聞き流していると。


「豪にいー、イワンさんだよー」


「おー、どうぞー」


 咲ちゃんが言う通り、我らがギルドマスターであるイワン・アウグストが入ってきた。


「親父どうしたんだ?」


「お主が言ってあった様に、ここを出て自立しようと思うての」


「……なるほど」


 何、まだ沖縄に来て一週間だぞ?

 まぁ異世界組の中でまとも代表みたいな人だから、俺に気を遣ってるんだろう。


「まぁやりたい事が見つかったなら良いんだけど……別にゆっくりしても良いんだぞ?」


 一年間期間を与えた側として、最後の一日までダラダラ過ごされるのは、勝手ながら多少思うものがあるが……たった一週間で出ていかれるのも中々寂しく感じるものだ。


「うむ、ゴウの気持ちは嬉しいんじゃが……。

 他の奴らと違ってワシは生い先短いからのぉ。

 やりたい事も見つけたのでな、早めに動いておこうと思うたのじゃよ」


 またまた、親父エルフで今五百歳くらいだろ?

 エルフの寿命はざっと千年って前に聞いたぞ?

 あと、五百年は軽く生きるだろ……。


「まぁ、いいけどさ。

 ちなみに何やろうとしてんだ?」


「うむ、それについても話があるのじゃが……ゴウ、お主の建設中のビルはテナントとして二階を貸すつもりなのじゃろう?」


「あぁ、正確には二階と三階の合計六店舗分を貸し出すつもりだな」


「ふむ、なら何処でも良いのじゃが、一部屋貸して欲しいのぉ」


 まぁ、話の流れ的にそうなんだろうと思ったが……。


「いいけど、何をするつもりなんだ?」


「喫茶店じゃ」


「ブッ、喫茶店……」


「……なんで笑っているんじゃ?」


 いやいや、あのギルマスの親父が喫茶店だぞ?

 他のギルドの冒険者達から化け物ギルドの長って言われてた親父がだぞ?

 笑ってしまうのは仕方ないと思う。


「ごめんごめん、バカにしてるわけじゃないんだ。

 ただ、あの親父が喫茶店ってイメージが湧かなくてさ……」


「むぅ、まぁ仕方ないのぉ。

 兎に角、その準備で色々動こうかと思うての」


「ふーん、店舗の方はどうする?

 早めに注文するなら、ビル完成に間に合うと思うぞ?……まずは聞いてからだけどさ」


「うむ……取り敢えず保留とさせてくれ。

 色々見て回るつもりじゃからのぉ、考えが決まったらワシの方から連絡するわい」


 なるほど、それにしてもなんで喫茶店なんだろう?

 既に喫茶店のマスターに居そうってか、確実に似合ってはいるけどさ。







第十三話になります。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

是非、評価、感想など頂けると幸いです。


それでは次話もお楽しみください。

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