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第十一話 相談

 



 ◇ ◇ ◇


 これは親父達が異世界からやってきて二週間が経ったある日。


 昼頃、急に英と和寛から「今日何とか時間を作ってくれないか?」と謎に畏まって連絡があった。

 特に急ぎの予定が無い俺は、その日の夕方、集合場所の寿司屋へとやってきた。


「いらっしゃいませ」


 おぉ、綺麗な女将さんだな。

 っていうか、ここ絶対高いだろ?

 あいつらが指定した店だから、こっちに払わせる意図は無いんだろうが……大丈夫か?


「あの、四宮か高梨で予約してると思うんですけど……」


「はい、四宮様ですね、お待ちしておりました。

 お連れ様は既にいらしておりますよ。

 こちらになります」


 そう言って、二階の座敷に案内されると。


「おう、豪よく来たな」


「豪ちゃんそんな所に立ってないで、座って座って」


 そこには何故か和寛の両親がいた。


「あれ?二人も呼ばれた感じ?

 ってかうちの英と、和寛はまだなんすか?」


 和寛の父、和一さんと、母の早苗さんは俺の第二の父と母と言っても過言では無い存在で、昔から家族ぐるみで仲が良く、和一さんには特にお世話になった。

 ちなみに俺が異世界に行ってた事実を知っている人達でもある。


「ごめんなさいね?

 和寛は残業みたいで……少し遅れて来るみたいなの。

 英ちゃんはちょうどお手洗いに行ったの」


「なるほど、公務員って大変なんすねぇ」


 公務員って定時で出退社してるもんかと思ってたわ。

 全国の公務員の皆さん、すいません。


「まぁ職種によっても様々だけどな?

 警察は大変だぞぉ、昔のお前みたいなガキを相手にする時なんて、特になぁ?」


「はぁ、またその話……もう昔の事なんで。

 いい加減忘れてくれないっすか?」


「ハッハッハ、そりゃ無理だな!

 あんな喧嘩ばっかしてた悪ガキそうそう居ないからな!っていうか居てたまるか!

 しかもそれが、友達の息子で、うちの倅の幼馴染なら尚更だ。

 それに、あれだけ呼び出されたら忘れる方が無理って話だ」


 はぁ……、和寛の父は今も現役の警察官で、昔俺はしょっちゅう、いや、常に叱られてた。

 喧嘩してるといつも現れて、怒られた記憶が懐かしい。


 和一さんが当番の日は俺が大人しくなると分かった警察側によって、もはや俺が喧嘩すると必ず現れる俺担当警察になっていた。

 それに和一さんは強面で、俺の喧嘩相手達はビビっていたが、俺は幼い頃から知ってる父さんの友達で、幼馴染の父親だった為、怖いと言う印象は無かったんだが……この人滅茶苦茶強いんだ。


 空手に柔道、合気道もやってるんだっけか?

 他の悪ガキ共には絶対手を出さずに補導する癖に、俺は知り合いだからって常にボコボコにされていた。

 そりゃ大人しくもなる筈である。


「はぁ、この間和寛からチラッと耳に挟んだんすけど、今署長さんって聞きましたよ?」


「まぁな、どっかの悪ガキのケツ追っかける必要が無くなったお陰で、書類仕事が捗るわ捗るわ。

 で、気が付いたら署長なんてガラでもない椅子に座ってたんだよ」


「はいはい、そりゃめでたい事で」


 いちいち嫌味言いやがって……。

 今戦ったら絶対俺の方が強いからな?

 ……みっともないからやらないけどさ。


「おっ兄貴、お疲れー。

 和さんもう少しで来るってさ」


 トイレから英が戻ってきた様である。


「よし、先に始めてるか、早苗」


「はいはい、豪ちゃん達は何飲む?」


「「生で」」


 おい、被らせるな弟よ。


「ふふ、兄弟ね」


「へへっ」


「なんで照れてんだ、お前は」








 その後、仕事終わりの和寛も合流して、五人で高級寿司を堪能していると。


「豪、今日は話があって呼ばせてもらったんだ」


「ん?まぁ、何があるんだろうな……とは思っていたが……何かあったのか?」


 そりゃ、英と和寛に呼ばれたのに和寛の両親が居るんだ。

 しかもこんな良い店にわざわざ予約までしてるしさ、逆に何も無い方が怖いわ。


「豪には前話しただろ?……咲の事」


 和寛の口から咲ちゃんの名前が出た瞬間、空気が重くなる。


「あぁ、病気の話だろ?

 まさか……咲ちゃんになんかあったのか?」


「いや、咲は相変わらず家で暮らしている。

 定期的に病院にも通っているし、別に症状が悪化したとかでは無い。

 俺の話は、お前の異世界の知り合い達の事だよ」


 ん?どういう事だ?

 確か和寛はまだ誰にも会っていない筈。

 あいつらが会ったのはうちの家族だけだからな。


「ん?あいつらがどうしたんだ?

 まだ会ってないよな?お前」


「うん、会った事ないよ。

 豪は前に自分は魔法苦手って言ってたよな?」


「あぁ、全く使えないわけじゃないが、俺が使える魔法はほとんど戦闘向きじゃないからな……」


 以前、和寛と二人で飲んだ時、お互いこれまでの事を色々話し合ったのだ。

 その時興味を持った和寛が、俺に色々魔法のこと聞いてきたんだっけ?


「その時お前に魔法で咲のことを治せるか聞いた事があっただろ?

 お前が回復魔法は使えない事、向こうの薬やポーションなんかは持ってるけど、正直怪我を治す程度で病気には効果が無いことも聞いた。


 ……だけどその時「俺の様に戦闘・討伐メインの冒険者もいれば、採集・探索メインの奴、薬学・回復魔法メインの冒険者もいたりする」って言ってただろ?」



 あっ……。



「もしその人が、こっちに来ているなら、咲のことを見てくれる様頼んでもらってほしいんだ!

 そして、可能ならば治してくれる事もお願いしたい!

 勿論、話を繋いでくれたらこちらからお願いしに行くつもりだが、まずはお前に話をしておくべきだと思ってさ。

 親友だから幼馴染だからって言うつもりはない、一人間としてのお願いだ!

 勿論断られても何も言わないし、俺たちの関係が変わる訳でもない!


 だけど……だけど、もし!!

 可能性があるならそれに賭けたいんだ!頼む!」


 ……言った、確かに言った。

 そしてその時言っていた回復魔法メインのやつも、こっちにきている。


 はぁ……本当に自分の間抜け具合に落ち込むわ。

 なんであいつらが来て二週間も経つのに、気付かなかったのだろうか。


「うん、そいつはこっちに来て今も俺の家にいると思う。

 んで、そいつに治してもらえる様に俺からもお願いしておくからさ。

 まず皆、頭を上げてくれ」


 そう、話していた和寛だけじゃなく、和寛の両親、英までも土下座で俺に頼み込んでいた。


「……いいのか?」


「あぁ、でも謝らせてくれ、本当にごめん。

 あんな言い方すれば、誰でも期待するよな……。

 それに俺もあいつらの事が衝撃過ぎて、咲ちゃんを治せる可能性があった事をすっかり忘れていた」


「豪、頭を上げてくれ。

 むしろ頭を下げなきゃいけないのは、こっちなんだ……ありがとう」


「豪ちゃんありがとうね。

 でもその方は協力してくれるかしら?」


 俺が謝ると、和一さんと早苗さんがお礼を述べる。

 そして、早苗さんはそいつが咲ちゃんを見てくれるか心配な様だ。


「それについては大丈夫っす。

 俺向こうでそいつに何個も貸しがあるから、咲ちゃんの件一個返されても足りないくらいなんで。

 そもそも貸し借り関係なく良い奴なんで、普通に頼んだら、了承してくれるっすよ」


「そっか……ありがとう」


 安心したのか和寛と英が泣きながら笑っている。

 早苗さんも涙を浮かべ、和一さんは堪えているのか、目を瞑っている。


「おいおい、まだ治るかすら分かってないんだぞ?

 そうやって喜ぶのは治った後にしろよ」


 ったく……とは言ったものの。

 あいつに会わせるのは少々、いや大分気が引ける。


 まぁ、腕は確かなのは事実……背に腹は変えられんか……。







第十一話になります。

ここまで読んで頂きありがとう御座います。


そして!なんと!初感想に初評価も頂きました!

本当にありがとう御座います、とても励みになります!!


評価や感想を頂けた事は、勿論有り難いのですが。

正直、評価も感想も無く、ただ完結するんだろうな、と思っておりました。


「気にせずに自己満足だけで書こう」と思っていた矢先の出来事で嬉しさが爆発しました。


今の所は順調ですが……毎日投稿が途切れても、完結までは頑張りますので、今後も温かく見守って頂くと幸いです。



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