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第一話 帰還

初投稿になります。

読み専でしたが、今回書かせて頂きました。

何卒温かい目で見てくれたら幸いです。

 

 ◇ ◇ ◇


「なぁゴウ、本当に行ってしまうのか?」


 そう悲しげに言ってくるのは、サラ。

 俺と同じギルドに所属する冒険者だ。

 エルフにしては珍しく多種族に対して偏見が無く、ある日突然うちのギルドに転がり込んできた変わり者の一人。


「……まぁな、そもそも俺が冒険者やってるのだって帰る方法を見つける為だって言ってるだろ?

 それに、昨日で親父や、皆にも話は通してある。

 悪いが……考えを改めることは無い」


 少々冷たいと思うかもしれないが……これに関しては考えを改めるつもりはない為、仕方ない。


「ったく、そんなメソメソすんなよなぁ?

 ゴウが帰りにくいだろー?」


「っ貴様!私はメソメソなどしていない!」


 俺と会話していたサラに話しかけたのはブラード。

 熊の獣人族で身長が二メートルは超える大男だ。

 ちなみにブラードも冒険者で、サラと他二人でパーティーを組んでいる。

 その後もギルドの冒険者やら、受付嬢やら、その他、顔馴染み達から囲まれていると……。


「お主ら!良い加減にするんじゃ!

 いつまでピーピー騒いでおる!

 ゴウが故郷に帰るのは前もって皆に知らせてある筈じゃ!

 それに昨日はお別れ会と称してギルド内で馬鹿騒ぎしたばかりじゃろ!……全く、ギルドの金を湯水のように使いおってからに……」


 あー、これはまた始まるなぁ……。

 今のがこのギルドの長、ギルドマスターのイワン・アウグストである。

 このモードに突入すると長い長い説教タイムに突入するので、ここは逃げるに限る。


「じゃ、じゃあお前達、元気でなー!

 親父も世話になった!長生きしろよ!」


『えっー!おーい、ゴウ!』


 親父の長くなりそうな説教から逃げる為に全力で走る。

 後ろからの慌て恨めしそうな……

 いや、今生の別れだからきっと悲しそう……んん、声を聞きながらも振り返らずに街の外へと進む。

 そして、街門へと辿り着くと……


「おう、ゴウ別れは済んだのか?」


「おう、何とかな。

 今日は偶然マルコが当番なのか?」


 そこには顔馴染みの門番、いや、俺の一番初めに仲良くなった友達のマルコが立っていた。


 この街に初めてきた時に門番をしていたのがマルコだ。


「いや、まぁ流石にお前と会うのが最後だからっていうか……」


「相変わらず見た目に似合わずセンチな奴だな……」


 こいつ…山賊の親分みたいな見た目してるくせに、身内に関してはめっちゃセンチメンタルな奴なんだよなぁ、しかも既婚者で子持ち……解せん。


「まぁ、わざわざありがとうな。

 じゃ、また何処かで会えたらな」


「おう、気を付けてな……」


「ははっ、そんなん初めて言われたわ。

 嫁さんと娘さんに宜しくな」


 こうして、この世界で仲良くなった奴に別れも言えたところで、気兼ねなく帰ることが出来るな。


 ……そう、地球へと……。







 ◇ ◇ ◇


 その後、数日ほど慎重に旅を続けてようやく目的地に辿り着いた。


「懐かしいな……ここで目が覚めたんだっけ」


 深い森の中にある小さな祠。

 ここが俺がこの世界に来た時に最初に居た場所だ。


「いきなり異世界って小説じゃあるまいし……って前は思ってたけど、実際に体験するとはなぁ……。

 ま、帰れるから良いけどさ……さて」


 俺が地球へ帰還する為には、ある魔法道具が必要なのだ。

 その魔法道具を探す為に、とにかく旅に出まくった記憶が懐かしい。

 苦労の果てに手に入れた魔法道具を取り出し、祠へ置き、魔力を注ぎ込む。


「さて、前例がないからどうなるかは知らんが、多分大丈夫な筈……ってか、ここまで来たら何があろうが意地でも地球に帰ってやる」


 ゴウの魔力によって魔法道具が発動した瞬間、辺り一面が光に包まれる。

 そして光がおさまると、そこにゴウの姿はなかった。








「ふむふむ……なるほど。

 これは……うむ、問題無さそうだ。

 これでやるべき事がようやくハッキリした。

 フフフ、用が済んだら、彼奴らにも教えてやるとするか……」







 ◇ ◇ ◇


 目が覚めると、俺は再び森の中へいた。


「あれ?俺の記憶だと家への帰り道、住宅街のど真ん中に居るはずだったんだが……ん?」


 魔法道具の不具合か?と考えていると、右手に違和感を感じた。

 何かと思い、右手を見ると何故か身に覚えが無い一枚の紙が握られていた。

 転移前にはこんな物を持っていない、怪しさしかないのだが、とにかく中身を見てみると。




 ーーー 


 拝啓 高梨豪 様


 突然のお便り申し訳ございません。


 私は地球があるこの世界を管理する者で御座います。

 初めに今回の異世界への転移の件、そしてそれに対する説明や謝罪が遅れてしまい、誠に申し訳ございません。

 まず、貴方様があの世界へと転移することになった理由を説明致します。



 恥ずかしながら私の手違いによるものでして、気が付き何とか修正しようとした頃には、既に転移後でした。

 貴方様からすると理不尽と思われるかも知れませんが、基本的に管理者同士のやり取りや、私共が貴方様など人類や、物、動植物など下界のものに干渉する事が禁じられているのです。


 しかし、元は私の手違いの為、以前異世界側の管理者から伝えられたと思いますが、転移の魔法道具の在り処を教える事と、帰還した際に手紙での説明のみ許可が降りたのです。

 なので色々と手続きが長引きまして、連絡差し上げるのが、このようなタイミングになってしまった事、改めて申し訳ございませんでした。


 さて、貴方様にもお時間があると思いますので、恐縮ながら話を進めさせて頂きます。

 まず異世界へと転移した場所と同じ場所に帰還する件ですが、周囲の目もあると思い、勝手ながら付近の森の中へと変更させて頂きました。


 異世界で培った能力や身体機能はそのままとなっておりますので、危険はほぼ無いと判断いたしました。


 そして、こちらも私の干渉ができない事なのですが、異世界で過ごした時間と同じ時間こちらの地球でも過ぎております。


 私の方で調べた結果、豪さんは異世界で過ごした十年間、こちらで行方不明という扱いになっているので、十分考慮した上、お戻りいただいたらと思います。


 それと、先ほども申しましたが異世界で培った能力や身体機能がそのままとなっておりますので、今後の身の振り方を十分考慮したうえでお過ごし頂きたく思います。


 ……なるべく平和に過ごして頂けた方が、こちらとしても非常に助かります。


 最後になりますが、本当に申し訳ございませんでした。

 貴方の今後の人生が良いものとなる事を望んでおります。


 ーーー




「はぁ……マジかよ」


 まずため息が出るのは許して欲しい。

 だって、誰がミスで異世界へと飛ばされたと思うよ?

 小説とかなら大義名分があるじゃん?勇者として魔王を〜とか、戦争で〜とかさぁ……まぁいいけど。


「それに十年間行方不明の奴ってヤバすぎるだろ。

 万が一ニュースとかになってたら笑えねぇぞマジで」


【速報】十年間もの間行方不明となっていた当時十六歳の高梨豪さんが無事発見されました!

 ……ってか?

 当時事件って取り上げられてたら、それこそ警察モノだろ?

 てか、絶対警察には行かなきゃだよなぁ。

 あの親でも一応捜索願位出してるだろうしなぁ……。


「やばい、あれだけ地球に戻ってきたかったのに、家には帰りたく無くなってきた。

 いや、まぁ、仕方ないか……帰ろ」






 その後、途中野生動物に追いかけられながらも何とか森から出て、十年ぶりに俺は懐かしき実家の前にいる。

 そして……


「はぁ……どうやって入ろ」


 そう、俺はどうやって家に入るか悩んでいる。


「おっす!久しぶり!元気?」


 いや、これは間違いなく母親に叱られる。


「ただいま〜今日の飯何〜?」


 これも間違いなく叱られる。


「今まで申し訳ございませんでした!」


 これもボツだな……てか、そもそも俺が悪いわけじゃ無いから開き直って良いのでは?


「久しぶり、実は異世界に行っててさぁ、ようやく帰ってこれたわーマジで」


 叱られるってか病院に連れていかれそう。


「あぁーどうし…「うぇー!!兄貴!」」


「あ?」


 一人であーだこーだ悩んで居ると、後ろから声がした。

 振り向くとそこにはまるで消滅寸前のレイスの様な顔をした、恐らく我が弟だろう人物がいた。


「ああああ、兄貴!兄貴なのか!?

 いや、その悪人面は間違いなく兄貴でしょ!

 え、?ま、まじ?本物?なんで?

 今までどこに…「ちょーっと待て」」


「えっ…あ、はい」


 俺の一言ですぐ黙る俺の弟らしき人物。

 さっきから、らしきって言うのはこいつが成長しているからである。

 転移前、当時の俺が十六歳。

 こいつが俺の五つ下で十一歳だったのだ。

 あれから十年と言うことはこいつは今二十一歳。

 十一歳の記憶でいきなり二十一歳を見たところで本人かどうか分からなくなるのは仕方ないと思う。


「あー、お前もしかして、英か?」


「もしかしなくてもそうだよ!俺だよ!英だよ!

 産まれてからずっと兄貴に弄られ虐められ、挙句の果てにはほぼパシリだった英だよ!」


 おいおい、俺がそんな悪い兄貴みたいな……そもそも、お前が……。

 いや……うん、当時はそうでしたねー。

 でもさ?愛情の裏返しっていうかさ?

 ……はい、ごめんなさい。


 帰還した俺はまず弟に会い、昔のことを説教された気分になるのであった。





改めまして、初投稿になります。


恥ずかしながら初心者ですので、投稿頻度もまちまちになる可能性もありますが温かい目で読んでくれたら幸いです。


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