9 もはや慣れてきました
ステンドグラスから差し込む柔らかな光が、外から見るよりも広かった教会内部に差し込み、宙を舞う埃がキラキラと輝いています。
中にいた受付と思われるシスターに案内され、奥へと進みます。洗礼専用の部屋なのか、礼拝室と同じくらいの広さのある部屋には、私と同じくらいの子供とその家族と思われる二百人くらいの人がいます。
友達を探していたのか、きょろきょろと辺りを見回していた紺色の髪と黄色い瞳の女の子と目が合うと、ピシリと固まりました。…あれですかね、私は今世も人間に生まれたと思っていたのですが、実はメデューサとかにでも転生してたんですかね。
数秒経って復活した女の子が、パチパチと瞬きをしながら頬をつねっています。それはあれですか?夢かどうか確かめているんですか?現実ですよーと伝わるようににっこりと微笑んだら、女の子がぶっ倒れました。
ーーー女の子がぶっ倒れました!?
ええええ!?な、なんで!?なんでぶっ倒れたの!?あああ、会場がザワザワしてきました。
ごめんなさい!理由は全く分からないんですけど私のせいです!
「あらあら、貧血かしらねえ。…アイリス?」
「お、お母様。どうしましょう、あれ、私のせいです」
「「は?」」
ですよね!?意味わかりませんよね!?ずっと後ろで静かにしてたお父様が、思わず声を出してしまうくらいよく分かりませんよね?
「目が合ったので笑ったら、こうバターンと。…どうしてぇ」
「…笑ったら。ああ、なるほどねぇ」
「と、とりあえず謝ってきます!」
なぜか遠い目をした2人を置いて女の子の元へと向かいました
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「あ、あの」
「は、はい……っえ゛」
女の子の横にいたお母さんらしき人に声をかけると、こちらも固まりました。ちょっと慣れてきましたね、メデューサ現象。慣れたくはないですけど。
「あの、理由は分からないのですが、私と目が合ったらなぜか娘さんが倒れてしまって…すみませんでした」
「……へっ!?い、いいいいえ!お気になさらず!」
私が頭を下げたことに気がつくと固まっていた状態から復活しました。ちょ、ちょっと、『こんなの謝るようなことじゃないですから!』って言いながら娘さんの肩を全力でゆするのやめてあげてください!首がグラングラン揺れてて怖いです!
しかし、それが良かったのか少し唸ってから女の子が目を覚ましました。遠くて黄色に見えていた瞳は、近くで見ると金色をしていて、黄金と見間違うようでした。
「「……綺麗」」
思わず口から出たその言葉は女の子のものと重なりました。