5 美人の笑顔は時に怖いです
まだ3歳ということもあり、簡単な読み書きと算数をマーガレットさんから、礼儀作法をお母様から学ぶことになりました。
また、常識は普段の生活や食事の時のおしゃべりで擦り合わせるそうです。
そして、びっくりすることにお母様は元子爵令嬢でした!確かに物腰の柔らかさとか所作は美しいと思ってたけど…。
いいの!?御令嬢が『ぷちっと潰れる』とか言っていいの!?
ーーとまあ、気になることは色々ありましたが、お勉強ができるようになったことは万々歳ってやつですよ!
それから、この国の文字って形は違うけどアルファベットみたいなものでした。21文字の子音と5文字の母音からなっていて、ローマ字のように読むらしいです。
「よみにくい…でも、だんだんなれてきたなあ。それにさすがこどものからだ!きゅうしゅうりょくはんぱないや」
乾いたスポンジみたいに覚えられると勉強楽しいなあ。算数も一度は高校進学した身としては簡単すぎる。思わずニヨニヨしてしまいますよ〜!
おかげで『うちの天使は天才だ!!』なんて言われてるけど…まあ、喜んでくれているのなら良し!
唯一大変なことといえば礼儀作法です。前世でやったことがない上にお母様がめちゃくちゃ厳しい。
いや、表情とか言葉とかは優しいんですよ?でも、礼儀作法の時間中に少しでも背筋が曲がればそっと定規を服に入れられ、歩いているときにグラつけば頭本を乗せられて『アイリス?』とだけ言われるんです!
アドバイスはしてくれるのに、注意はほとんど言ってくれないんですよ?ただ、ニコニコとしたままじーっと見られるんです。美人の笑顔ってときに怖いんですね…。前世で16年生きてなきゃ恐怖で大号泣していた自信があります。
話を聞けば、お母様は子爵令嬢ながら貴族学校で常に成績上位をキープしていたそうです。自分に厳しく他人にも厳しくの方らしいです。……自分から頼んだことですし、そんな素晴らしい方に教えていただけるのですからつらくなんてありませんよ?本当ですよ?
たまに死んだ魚の目になる私を見かねてか、お父様が時折お茶に誘ってくれるようになりました。
「……アイリス、実は私もアリーの指導を受けたことがあるんだよ」
「えっ?おとうさまもですか?」
「うん。結婚したばかりの頃にね。『貴族と取引することを視野に入れているのであれば、学んでいて損はありませんよ』って。…でも、うん。あの指導はね…」
だんだんと死んだ魚の目になっていくお父様と思わず固い握手を交わしましたよ。お互いの乾いた笑いが部屋に響いていたので、非常に異様な光景だったでしょうね…。
そんなこんなで、無事(?)両親と仲を深められました!




