4 恒例行事になるのか?
「あ、あの」
「う、うん!どうしたんだい?アイリス」
「お、おとうさま…と、おかあさまとおよびしてもいいでしょうか…?」
普通、子供は親にこんなことは言わない。こんな言い方をすれば、また2人を傷つけてしまうだろう。だが、これは私たち3人にとってはきっと必要なステップなのだ。
2人もこの3日の間に覚悟していたのだろう。一瞬悲しそうな顔をしたものの、すぐに笑いかけてくれた。
「ーーもちろんだよ。忘れてしまったとしても、アイリスは僕らの可愛い娘だからね」
「そうよ。それに、敬語なんて使わなくていいのよ?アイリス」
「あ、ありがとう。おとうさま!おかあさま!」
嬉しさのあまり、駆け寄って抱きついてしまいました。
「じゃあ、そろそろ朝食にしましょう?」
「そうだな。実はもうお腹がペコペコなんだ」
「はい!」
そう言ってお父様とお母様は私をぎゅっと抱きしめた。
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あれから数日。お父様とお母様との仲は非常に良好であります!でもまあ、2人は美男美女な上に性格もいいんですよ?私がよっぽど捻くれてでもいない限り、仲良し三人家族は必然なのですよ。
さて、素晴らしすぎるスタートを切れた私ですが、実は最近やりたいことがあるのです。
ーーそれは勉強!
日本で高度な教育を受けていた身としては、勉強の大切さを知っているつもりです。それに、悔いを残さず生きるを掲げる身としては、お勉強も頑張りたいのです。だって、天使みたいな見た目のお嬢様がバカって…残念すぎませんか?それこそ、悪役令嬢転生もののヒドインじゃないですか。ああいう子にはなりたくないのですよ!
それに加えて、マーガレットさんによれば、ロックベル家にはそれなりの蔵書があるらしいです。さすが王都一の商家。どんな本かは分かりませんが、本も読むタイプのオタクだったんですよ、私。本があるなら読まねば無作法というもの…。そんなわけで、まずは読み書きを学びたいのです。
そんなわけで、お父様に交渉しましょう!ちょうどそろそろ晩御飯の時間だしね?食堂へレッツゴー!
「おとうさま!あの、おねがいがあるのです!」
「どうしたんだい?私にできることならなんでもするよ?私の天使」
そう言ってでろっでろに緩んだ顔で返すお父様。いくらイケメンとはいえ、その顔はまずいのでは…?
あと、愛娘の頼みとはいえ、間髪入れず了承するのは商人としてどうなの…?
「べ、べんきょうをしたいのです!」
「…勉強?」
「はい!マーガレットさんにきいたのですが、わがやにはほんがたくさんあるのですよね?それに…」
「それに?」
「はやいうちからべんきょうをすれば、おとうさまとおかあさまのおやくにたてるかな…と」
これも本心からだ。前世で孝行できなかった分、今世の両親の役に立ちたい。
ピシリ、とまた空気が固まった。もう空気が固まるのは恒例行事か?恒例行事になるのか??
「……ア、アイリス〜〜!!!!」
「アイリスー!!」
そして、満面の笑みの美男美女が勢いよく抱きついてきたのだった。