3 決意しました
あれから3日、頑張って情報を集めた結果色々なことが分かった。
ここはフラワリア大陸のガーネットという国らしい。
私はガーネットの王都で一番の商家、ロックベル商会の一人娘でアリスティア=ロックベルという。
愛称は『アイリス』!そう、嬉しいことに前世の名前とおんなじ意味なんですよ!なんたる偶然…いや、必然という可能性も?まあ、今は関係ないのでこの話は置いときましょう。
年齢は予想通り3歳で、両親は父、オーキッドが22歳。母、マリアンナが20歳だそうだ。さすが異世界、子持ちでも若っかいな。
私は流行病で高熱が出て5日も熱が下がらず、その時に熱による脳へのダメージで記憶を失ったと診断されました。いや、実際は違うんですけどね?
きっと、この体の持ち主はその流行病で死んでしまって、なんらかの原因であやめの魂がその体に入った。なら、あやめの体すでに死んでいるのでしょうね。
親孝行もしていないし、まだまだやりたいこともあった。初めは信じられなかったけど、半月も経てばこれが現実であることをじわじわと実感していった。
『高野あやめは死んだ』と認めた日、それはもうたくさん泣きました。
平凡な見た目、運動は苦手、勉強は少し得意だったけど、それだけの。いつも一歩引いた地味な女ーーそれが高野あやめ。
そりゃあ、何度か変わりたいと思ったこともあった。何か得意なことや新しいことを始めようとしたけど、十数年積み重ねてきた暗い自分ではキャラじゃないとか、時間がないとか何かと理由をつけては諦めてきた。
こうして考えれば悔いだらけの人生ですね。でも、16歳だよ?これからやればいいって思っちゃうじゃん?
しかし、幸か不幸かもう一度生きる権利を与えられたのだ。
「なら、こんどはすきなように!くいのないようにいきてやろうじゃないの!」
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異世界転生4日目の朝、猫耳メイドさんことマーガレットさんに連れられて、食堂へと向かった。
マーガレットさんに扉を開けてもらって中に入れば、私を見た両親が数日前と同じように目を見開いてピシリと固まった。
何を隠そう、この3日私はマーガレットさんとしか会わず、会話しなかったのだ……さらに、それでさえも必要最小限。私が言葉を発した回数とか両手の指の数で足りますよ?あ、名前とか国名はマーガレットさんが教えてくれました。
記憶喪失と診断された私からすれば、両親といえども知らない人な訳で。2人は気を使って、私が自分から外に出るのを待ってくれていたのだ。
両親からすればずっと寝込んでいた娘が記憶喪失な上3日も引きこもっていたのだ。ひどく心配をかけてしまったようで、2人とも目の下に隈があり、少しやつれたように見える。
起きた時の溺愛っぷりから察するに、本当はすごく会いたかったはずだ。それでも私の気持ちを優先してそっとしておいてくれた、めちゃくちゃにいい人たちなのだ。美幼女な上に恵まれた両親とか、前世の私実は徳を積みまくっていたのか…?
まあ、そんな最高の両親を悲しませてしまったということは非常に心苦しいが、私も色々とショックだったししょうがないということにしておいて欲しい。考える時間とか、決心する時間とか必要だったしね?
そんなわけでやっと落ち着いたし、新しい人生ーー『アイリス』として好きに生きることにした私はまず、両親と会話を試みることにしたのでした。