アサヒはどこだ?
戦闘している生徒を避けながら、ゾンビと極力戦闘を避けて最短ルートでアサヒのもとへと向かう。
さっきブーンを倒したのはここのハズだけど。いない。
どっかに逃げたのかな?ってきり戦ってるのかと思ったんだけど。
「アサヒの気配。あっちか・・」
今来たのと同じ方向からアサヒの気配を感じる。
逆戻りかよ。面倒くさいな。
それよりも気になるのはアサヒの気がいつもより、弱ってる。これは急いだ方がよさそうだ。
前方から複数のゾンビが向かってくる。
「人間相手じゃねぇからな。手加減なしで殺す。」
俺は異空間から剣を2本取り出すと、ゾンビたちを木っ端微塵に切り刻んでいく。
いや~久しぶりに手加減なしで切るから楽しいね。
俺はこの学園に入るにあたって師匠と約束していたのだ。
人間相手にはちゃんと手加減すること
だからブーンの時は手加減し過ぎた結果負けてしまった。本気だせば秒殺出来るのだが、そういうわけにもいかないんだよね。
いろいろ事情があるのよ。まあそのあと半殺しにしたのは少しやり過ぎたかなと今は思う。
スタジアムの観客席に戻るとゾンビたちと生徒たちの必死の戦いが続いていた。
一体一体はたいしたことないが、やはり数に苦戦しているようだ。
そんなことよりアサヒはどこかな、どこかな・・あっちか!
その気配の先には中央に立つ、黒いフードがたっている。
アイツの近くからアサヒの気配がする。
いって見ればわかるか。
「おい、お前アサヒを返せ。」
「おやおやまさか大人ではなく、子供が私に最初に話しかけるとはな。我が名は・・」
おいおいこいつ勝手に自己紹介はじめそうな雰囲気だな。
「誰だっていいよ、さっさとアサヒを出せ。」
「魔王四天王が・・」
「さっさと出せよ~」
「アンデッド使い・・」
「興味ないからさっさとこっちの用件に答えろよ。」
「人の話を聞かない子は早死にしますよ。」
フードを外した男は肌の色が薄い紫で耳は縦に長く伸びている。そして額には赤い石が輝いている。この特徴から敵が魔族だということがわかる。
まあよく聞こえなかったけど、魔王なんとかって言ってたもんな。大して驚かないよね。
この学園の土地は魔族が住む魔界からかなり離れた場所にあるため珍しいだろうが、俺は魔界で半年ぐらい前まで修行してたので、驚くというよりはなんか懐かしい感じがする。
「その言葉そっくりそのまま返すよ。」
こいつアサヒのこと話す気があるのか?面倒だから殺しちまうか。けど異空間に飛ばされてたら助けるのに骨が折れるよな。
「早死にしたいなら殺して差し上げましょう。」
魔族の後ろに複数の魔方陣が展開され、ゾンビたちがまたわらわらと出てくる。
「さっさと殺してやるからアサヒの居場所をいいな。」
面倒な敵だな。こういう質より量の敵嫌いだわ~
自分で向かってきなさいよ。
「やれ、ゾンビたち!」
俺は双剣を構えて自分の間合いに入った敵を真っ二つにしていく。
弱いがやっぱり数はいるな。
こうなったら一気に蹴りをつけるか。
「武装、十花剣」
俺の掛け声と共に異空間から10本の剣が現れる。
この10本はさっきブーンの時に出した剣とは雲泥の差がある名刀たちである。
そして、俺の服装も先ほどまでの制服から紺の 甚平に白い衣を着た姿へとかわる。この白い衣は操縦の衣といって魔力で剣を操作するのに全てを細かく指示しなくてもある程度は俺の考えを読み取って自動で剣を動かしてくれる便利な衣だ。
「舞え、剣たち。」
俺の一振りで剣たちは四方八方へと飛んでいき、ゾンビたちを蹴散らしていく。
その隙を見て俺はナイフを異空間から取り出して魔方陣へと投げつける。
ナイフが刺さった魔方陣は動きを止め、消えていく。
魔方陣は低燃費で効率がいいのだが、陣を消されるとすぐに消滅するというデメリットがあるのだ。
「アサヒはどこだ?」
「まさかこんなにあっさりゾンビたちを倒すとはな。仕方ない私は直接手を・・」
「アサヒはどこだ?」
アサヒの気配が弱くなっている。早く見つけないと。
こいつご託ばっかりで面倒くさい。
少し怒ったのか俺に向かってくる、魔族の男は絶対的な自信を持って右手で俺に殴りかかってくる。右手には腐敗の魔力が込められているようで、触ると超危険。
なら触らなきゃいいだけだな。
俺はその魔族の拳を軽く交わして、右手の剣を振り下ろす。
「ギャーー私の腕が!高貴なる私の腕がぁーー」
殴りかかった右手をきれいに一刀両断する。
魔族は右手を抑えながら、叫び回る。
この様子からしてコイツは何も知らないな。
だって知ってたら、こんな絶体絶命の時に人質出さないなんてありえないよね。
「いけ、剣たち。十花乱舞」
我を忘れてのたうち回る魔族は、そのまま剣たちに貫かれて撃退された。
さて、ここからが問題だ。
アサヒはどこにいるんだ。
「ユーチャック、困ってるみたいだな。今から英雄が困ってる他の会場に助っ人に行くんだが一緒にくるか?」
振り返るとそこには、サン、ジャンク、ムーンが立っており、三人からは戦闘の後が服装から見てとれる。
けっこう戦ったんだな。
「他の会場ってかなり離れてるだろう。どうやって行くんだよ。」
「お前はバカか?俺は英雄になる男だぞ。助ける声がすればどこへだって一瞬で行けるんだよ。」
「お前の異空間魔法はマーキングした場所にしかいけない。だからこの一週間かけて、各地に異空間魔法のマーキングをしてたことは黙っといてやるのが、勇者らしさだよな。」
ほ~コイツ異空間魔法が使えたのか。
しかも全部の会場に行けるなんて凄いじゃん。
確かにこの会場からアサヒが離れている可能性はあるな。
異空間魔法か。考えてもなかったな。
意識を集中させてみると確かに近くではなく、かなり遠くにアサヒの気配を感じる。
「サン、困ってるんだ。助けてくれ。アサヒがいる会場へ飛んでくれ。」
「むむ、困ってるだと、英雄に任せるがよい。全員捕まれ、行くぞ。」
やっぱりサンは乗せやすいな。困ってるって言えばたいてい全部解決だぜ。
「サンシャインワープ」
光に包まれた俺たちは別の場所へとワープする。