学園ランキング戦
次の日学園に行くと、いつもと違い全体的にピリピリとした空気を肌で感じる。
なんかこういう雰囲気は戦いの前って感じで個人的には好きな空気だ。
中庭の方で人が集まってざわざわしている。
学園ランキング戦のトーナメント表が発表されたようだ。トーナメント表はランダムで作成されているため、誰と戦うかは全くの謎である。
いきなり最強の人に当たる人もいれば、最弱の人に当たる人もいる。運も実力のうちと言う人がいるのも納得だ。
行って自分の場所を確認すると、俺の対戦相手は魔法で隠されている。
わかるのはBブロックの第5試合ということだけだ。
本人しか名前を見ることが出来ない魔法なんてものすごく凄い。
ここまで徹底されているので、自分から発言しない限り対戦相手もわからない。
わからないものを考えても仕方ないので、俺はトーナメント表を離れて、Bブロックの会場へと移動する。
トーナメントは全部で6会場に分かれて行われ、それぞれの会場まではかなりの距離がある。けど転移魔方陣に乗ってあっという間なので、実際距離はあまり関係ないのだ。
俺が気にしているのはただ一つ。
この会場にアサヒが居るかどうかだけだ。
アサヒが居るか居ないのかで、俺のやる気は大幅に変化する。
なので、さっそくアサヒを捜すか。
俺はアップも兼ねて軽く走りながら会場を見て回る。
ピーン。
俺のアサヒレーダーがこっちだと反応している。
俺は直感に導かれるまま走り出すと見事にアサヒがいた。
やっぱり愛があればなんでも出来るんだな。うんうん。ん?
アサヒが誰かと話していると思ったら男のようだ。
なんということだ、まさか告白?
俺が弱いばかりに他の男が・・
くそ~弱い自分にイライラしてしまう。
アサヒより弱い俺は彼女の恋を邪魔する資格はない。ないけど・・ないけど・・やっぱり何話してるか気になるよね。
俺はこっそりと柱から覗き込む。
告白じゃありませんように、告白じゃありませんように。
そう祈りながら聞き耳を立てる。
「離して下さい!」
「いいじゃんかよ。どうせ彼氏以前にクラスで浮きまくって友達すらいねぇんだろ。俺と付き合おうぜ。」
「お断りします。」
「いいねぇ。その反抗的な態度。屈服させたくなるわ」
なんだこの状況は?
告白してるような気もするけど、脅迫してるような気もする。よくわからない状況だな。
「おらっ、こっちこいよ。」
「痛い、離して。」
ただわかってることもある。
俺は即座に二人の間に割って入り、男の手を掴む。
「おい、変態。アサヒが痛がってるだろ。この手を離せ。」
「誰だ、てめぇは。邪魔なんだよ。」
男の手のひらに火の玉が集まると俺の腹近くで爆発する。
ボンっ
その爆発の勢いのまま俺は少し後ろへと飛ばされる。
腹は痛いが堪えられるレベルだ。
服を見ると丸く焦げていた。
火の魔法の中でも爆発させることに特化した魔法使いなのか、手のひらに魔力を集中させるのには気づけたが避けきれなかった。
この男、変なやつだけど結構強いかも。
「やっぱり爆発はいいよな・・」
男は俺の方を見て両手を広げると手のひらに魔力を集中させて、何度も爆発させる。
キーンコーンカーンコーン
「学園生は所定のエリアへ移動してください。」
緊迫した空気を切り裂くかのように始業のチャイムが鳴り響く。
男はやる気を失ったのか満足したのかはわからないが、去っていった。
くそ~俺が弱いばかりにあんな男にアサヒが襲われるなんて。悔しい。
「アサヒ大丈夫?」
「助けて頂いたのには感謝します。けどそれでアタシより強くなったつもりですか?あなたはアタシより弱いんだからもう話しかけないで下さい。」
そう言うとアサヒは足早に立ち去っていった。
一度も振り返ることはなかった。
体張って守ったつもりなのに、少し酷くないですか?
俺泣いちゃうぞ。
「はぁ~チャイムもなったしそろそろ俺も行かなきゃ。」
仕方なく歩きだそうとするとお腹に痛みが走り、片膝を地面についてしまう。
やっぱりさっきの男けっこう強いわ。アサヒのメンタル攻撃もあって思ったよりもダメージあるかも。
はぁ~これこらランキング戦なのになぁ。
もう身も心もボロボロだ。
俺勝てるかな・・
俺は少し休んでから、会場の観客席に転移される指定の場所へと移動する。
観客席に転移すると既に第四試合も終盤になっていた。
ものの数分しか経っていないのにここまで進んでるってことは実力が圧倒的に違うもの同士の戦いだったんだな。
って第四試合ってアサヒが戦ってるじゃん。
しかも相手は上級生っぽい。それなのになんか圧倒している。
ふぅ~アサヒが傷つく姿を見なくて良かった。
なんかいろいろ痛いけど、そろそろ俺も準備するか。
アサヒの試合を最後まで見たかったのだが、俺は第五試合なので、控え室の方に移動する。
移動して控え室に座ると同時に大きな歓声が聞こえてくる。
おそらく決着したのだろう。
「次の人入場して。」
係りの人が声をかけてくれる。いよいよか。
いや~緊張するな。