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3.第二皇子の悲願(4)


 秀礼は夕刻にやってくるはずだった。だがどれだけ待っても冬花宮の庭に輿が着く気配はない。空は雨模様となり、湿った空気が屋内にまで入りこむ。肌に纏わり付いて気持ちが悪い。


「なかなかいらっしゃらないですね」


 藍玉が言った。淹れたての茶を(つくえ)に置く。このままでは秀礼が来るよりも先に夕餉の刻となりそうだ。

 そうしてしばし持っていると、震礼宮の者が訪れた。藍玉に通され、こちらの部屋にやってくる。秀礼が来たのだと思い立ち上がった紅妍だったが、やってきたのは()清益(しんえき)だった。


「申し訳ありません」


 清益はそう言って頭を下げる。いやな予感がした。期待し緩んでいた紅妍の表情が翳る。


「今日は秀礼様は来られないかと」

「何かありましたか?」

「急な来客がありまして、その対応で忙しいのです」


 秀礼の身に何かあったのではないことにほっと息を吐きながらも、残念に思ってしまう。

 その様子を眺めていた清益はくすりと微笑んだ後、懐から文を取りだした。


「こちらは秀礼様からの文です。何でも、私のいない時に読まれるようにと言付かっております」

「わたしに、ですか?」

「ええ。どうやら大事なことが書いてあるらしく、読ませてはくれませんでした。ひどいものですねえ」


 一体何が書いてあるのだろう。紅妍は文を受け取る。

 読ませてくれなかったと言っているが清益は文の内容が思いついているのだろう。訝しむ紅妍に告げる。


「……明日、私は所用があって震礼宮を離れます。どうかよろしくお願いしますね」


 謎の言葉を残して清益が去る。その意味がわかったのは文を開いた後だった。

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