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【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
第四章 モントルビアの王宮

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捕縛

馬車の中、話をしているのはほとんどベネット公爵だった。

たまに応じているのが、アレクと泰基だ。


雑談と言っていい話だったが、ベネット公爵が何かを思い出したように顔をしかめた。

「忘れておりました。――勇者様、殿下。北の三国が、魔王軍に滅ぼされました」


馬車の中に驚愕が走った。

が、すぐにアレクが落ち着きを取り戻す。


「……魔王の誕生から二ヶ月で、三国とも落ちたのか。早いな」

「ええ。あとはルバドール帝国頼みですね」


そうも言っていられないんだよ、とアレクは心の中でつぶやく。

どうしても、魔族が入り込んでいた事は、報告せざるを得ない。

それだけ伝えたら、リィカと合流してさっさとここを出て行く。


北の三国が落ちた。

のんびりしていられない理由ができたのは、好都合だ。



※ ※ ※



北の三国、と言われているのは、ルバドール帝国の北にできた、三つの国のことだ。


魔王が誕生し、魔王軍が南下して攻めてくると、ルバドール帝国よりも魔国に近い北にある国は、滅ぼされる事がほとんどだ。

それは分かっているだろうに、気付けば、北に新しい国が毎回のようにできるらしい。


その北の国々が長く持ちこたえられるほど、ルバドール帝国の負担は少なく済むが、今回は早かった。

(もしかして、魔族が入り込んで、内部から滅ぼされた……?)

その可能性に思い至って、アレクは顔をしかめた。



※ ※ ※



リィカは遠ざかっていく馬車を見て呼吸を整えた。

あの馬車に掲げられていた紋章を見て、まさかと思った。

手が震えるのを、押さえられなかった。


アレクたちの会話は聞こえていた。

あの男の放つ言葉が恐ろしくて、後ずさりしてしまった。

結果としては、それで良かった。


一人で残されたが、怖くて王宮になど行けるものではなかった。



動揺していたリィカは、気付くのが遅れた。

リィカの目の前に、兵士らしい服に身を包んだ男が立つ。


「え…………っが……ガハッ……!」

疑問に思う間もなく、突然、その兵士の男が、鞘に入ったままの剣で、腹部を殴ってきた。

溜まらず、うずくまるリィカは、そこで自分が兵士に囲まれていることに気付く。


別の兵士が、やはり剣を鞘ごと振り上げる。

「――――――っ!」

首の後ろを強打され、あまりの痛みに悲鳴すら上げられない。

気を失わないようにするので、精一杯だった。


「……ほう。今のでも意識を保つか。旅に同道するだけあって、平民にしてはマシか」

リィカの正面にいる、最初に腹部を殴ってきた男がしゃべった。


「その顔と体で、勇者様や殿下方をたらし込んだんだろうが、我が国ではそんな女を自由にはさせぬ。――捕らえろ」

「……な……に……」


痛みで何を言われたか、理解できない。

だが、男の指示で、兵士たちがリィカに近寄る。

荷物も剣も取られ、両腕を後ろに取られて、拘束された。

それに驚く間もなく、身体を抱えられ、馬の背にうつ伏せに乗せられる。


「……………っぐ……!」

最初に殴られた腹部が圧迫され、思わずリィカは呻いてしまう。

が、兵士たちが、それを気にすることはなかった。


「帰還する」

リーダーの指示で走り出した馬の背で、リィカはさらに痛む部分が圧迫される。

歯を食いしばって耐える以外、できることはなかった。


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