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【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
第三章 魔道具を作ろう

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確信

暁斗、幼児化します(笑)。

リィカの伸ばした手が、暁斗の頭に置かれた。


そして、手がそのまま後頭部に移動していくのを感じて、暁斗はくすぐったい気持ちになる。

父の、ぐしゃぐしゃ撫でる手とは全然違う、優しい手つき。

すごく恥ずかしいけど、でも、どうしようもなく、嬉しい。


「――これで、いい? 暁斗」

「もう少し、撫でて」

おねだりすれば、また手が優しく動く。


(母さんの手も、こんな風に優しかったのかな)

もしそうなら、もう二度と母のことをキライだなどと言えない。



『成功したら、頭を撫でてほしい』

暁斗は、リィカにそうお願いをしていた。


どうして、そう思ったのかは分からない。

でも、優しいリィカに、母の姿を重ねてしまったリィカに、何となく甘えたいという気持ちはあった。

その気持ちが、もしかしたら、父がリィカに指輪を渡したのを見て、高まったかもしれない。


男性から女性に送る指輪と言われて、真っ先に出てくるイメージは、エンゲージリングだ。だから、どうしても、特別な意味を感じてしまう。


父が渡したのは指輪じゃなくて、魔道具だ。だから、そこに特別な意味はないはずだ。

それでも、高まった気持ちは、どうすることもできなかった。



教えて、と頼めば、引き受けてくれた。

自分のやりたいことを後回しにして、自分を優先してくれた。

怒っても、見捨てる様子もなく、頑張れと言われて、嬉しかった。

最後まで、ちゃんと付き合ってくれた。



他の誰かから聞いた話じゃなく、夢の中の母親じゃなく、自分が何となく抱いていた、母親のイメージ。

こういう人だったら良いな、と思っていた母のイメージに、リィカは、合いすぎるくらいに合っていた。


同い年なのに、変なのは分かってる。

でも、本当にリィカが前世の記憶を持っていたら、精神面ではきっとずっと、自分より年上だから。


(もう少しだけ)

その手の優しさに、浸かっていたい。




暁斗が何も言わないからだろう。リィカはずっと頭をなで続けていた。

少しうつむいた暁斗の顔は、恥ずかしそうで、でも嬉しそうに口元が綻んでいる。

そんな二人を、泰基は呆然と見ていた。


何かを言おうと口を開いて、でも結局何を言いたいのか分からない。

やがて、暁斗が、頭を撫でていたリィカの手を取った。


「――ありがと、リィカ」

照れくさそうに笑った暁斗の顔は、見たことがあるようで、初めて見る表情だった。


(ああ、そうか。あの表情は……)

まだ剣道を習い始めたばかりの頃。

子供の剣道大会に出場したとき。

余所の子たちは、両親そろって応援に来ているところが多かった。


勝って両親のところに戻って、父親に褒められると、笑いながら得意げな顔を浮かべる。

暁斗も、そんな顔はたくさん見せていた。

でも、母親に褒められた時の子供の顔は、ちょうどあんな照れくさそうな顔だった。



(どこまで、気付いているんだろうか)

暁斗は、凪沙を知らない。


だから、自分が気付いた、凪沙の表情とか仕草とか、そういうもので気付けるはずもない。

それでも、きっと何かを感じてる。



(もう、確信がないとかは、無しだな)

間違いない。リィカは、凪沙だ。

暁斗の頭を撫でる手が、顔つきが、完全に凪沙だった。


(まずは、リィカと話そう)

この馬車での移動中は無理だろうが、モルタナに到着すれば、二人で話せるチャンスもあるだろう。

そこからスタートだ。



――しかし、そんな泰基の覚悟とは裏腹に、モルタナで話のできるチャンスが巡ってこないことを、今はまだ知らなかった。


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