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【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
第三章 魔道具を作ろう

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魔道具を作ろう②

魔道具作りは順調だ。

属性の魔力封じも、あっさりクリア。剣技を使えないリィカとユーリも、さほど苦労することなく、できた。


ここで苦労するかと思っていたサルマは、あまりにも簡単にクリアされて、驚きを通り越して呆れていた。



今度は魔石そのものの加工だ。

例えば、風の手紙(エア・レター)みたいに、耳に付けるようにするには、その形に変えていかなければいけない。


「ナイフなんかじゃ削れないからね。魔力で形を整えるんだ」

言って、サルマが手本を見せてくれる。

四角い魔石が、サルマの手の中で形を変えていくのを見て、一同が驚く。


「魔力を出しながら、こういう形にしたいってイメージすると、その形になってくよ。後は、少し難易度は上がるけど、属性付きの魔力でやると、その後の魔法付与が楽になる。

 例えば、風の手紙(エア・レター)なら、風が基本となる魔道具だから、風属性の魔力を使うようにすればいい」


暁斗が、はい! と手を上げた。

「魔法のバッグは?」

「現状、不明。だから、お手上げなのさ」

不満そうな暁斗に、サルマは笑う。


「四属性と光、どれでやっても駄目だった。闇魔法は試したくても試せないしね」

「「闇魔法……!?」」

泰基と暁斗の声が被った。


光魔法があるなら闇魔法があってもおかしくない、とは考えていた。

しかし、日本でよく読んだ小説なんかでは、闇魔法の立ち位置というのは、作品ごとにバラバラだ。

ごく普通に存在しているものもあれば、悪いものの代表として存在するものまで。

今まで闇魔法が欠片も話に出てこなかったので、何となく聞きにくかった。


「そう言えば、お二人は知らなかったですね」

ユーリは、二人に闇魔法についての説明をしたことがなかったと思ったが、今は後回しだ。


「後で、説明しますよ」

それだけ言って、ユーリは目の前の魔石に視線を戻す。

なんだかんだ言っていたユーリだが、やはり夢中になっていた。


そんなユーリにサルマが苦笑して、

「まあ、何でもいいさ。自由に作ってみて。何かいいアイディアがあったら、欲しいけど」

自分たちの考えだけでは限界だ。だから、飛び込んできた彼らに自由に作らせてみたい。

それがサルマの本音だった。



(魔道具作り、か)

オークとの戦闘後、馬車の中に入ってきたアレクは、夢中になっている一同を見渡す。


最初は色々警戒したものだが、話を聞けば納得だ。

魔石にしても、魔道具にしても、小さい物がほとんどだ。

だから、荷物の場所が取られないんだろう。



魔石を持って集中しているリィカに近寄っていく。

声をかけるのは流石に憚られるが、真剣な顔をしているリィカを眺めているだけで、楽しい。


やがて、ふぅ、と一息ついたのが聞こえたので、アレクは声をかける。

見れば、リィカの魔石は円球になっていた。


「何を作るつもりなんだ?」

「……ぴゃっ!?」

リィカが、やたらと可愛い悲鳴っぽい声を出した。


「……ア、アレク、いつの間に、そこに」

「さっきからずっと。――それで?」

「……暖かいお風呂に入りたいなぁって思って」


熱湯アクア・カリエンテ》という混成魔法もあるにはあるが、難しい。

浴槽をどうするのかを考える必要はあるが、とりあえずそこは後回しだ。


「へえ、いいね、それ。ワタシもアルカトルで入浴したことあるけど、気持ちよかったもんねぇ」

サルマが、会話に入ってきた。


「アルカトルの入浴施設は、火と水の魔石をそれぞれ複数個使って成り立ってる、って聞いたことあるけど、それを一つでやっちゃおうってことか」

そして、マジマジとリィカの円球の魔石を見る。


「――リィカちゃん、水属性の魔力でやったんだね。難しいって言ったのに」

「分かるんですね」

「そりゃね。魔力を読めなきゃ、無詠唱も魔道具作りもできないさ」


この魔石の加工まで話が進めば、なぜ魔道具作りが無詠唱でないと駄目なのかが、分かる。

魔力で形を整える、など、普通に詠唱して魔法を使っている人には無理だ。


「次は火属性の付与か。水と火は反発するから、難しいよ。――と、待った。リィカちゃん、属性は何を持ってるの?」

オークと戦ったときは、水と風を使っていた、とオリーが言っていた。


「……実は、四つ全部持ってまして」

えへへ、と笑うリィカは可愛いが、サルマはそれどころじゃない。


「四つ!? そんな人、本当にいるの!?」

「アキトも四つ持っているけどな」

脇からアレクが口を出す。

リィカと二人で話をしていたのに、そこに割って入られて、口を挟めず、実は不満だったアレクだ。


サルマは、口をあんぐりさせる。

「……いや、属性四つ持ちって、相当に珍しいでしょうに、それが二人も……」


本当に、あんたら一体何なんだ、と思う。

それを聞こうと思わないのが、サルマ自身も不思議だが、あまり深く突っ込むべきじゃないと、商人の勘が告げていた。


(まあ、いいか)

少なくとも、悪い子たちじゃない。それは確かだ。


それよりも、サルマはアレクを見る。妙に、リィカとの距離が近い。

試してみようかな、という半分いたずら心で、サルマはリィカに抱き付く。


「きゃあっ?」

「……んな!」


悲鳴を上げるリィカと、いきり立つアレクを見て、サルマは確信する。

リィカ側は分からないが、少なくとも、アレクの方はリィカに気がある。


(これは、問い詰めないとね)

リィカとのガールズトークが、楽しみなサルマだった。


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