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【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
第三章 魔道具を作ろう

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魔道具を作ろう①

何やら暗い雰囲気になってしまったバルとユーリに、サルマとフェイもがリィカたちに顔を向けるが、リィカたちもよく事情は分かっていなく、困惑するだけだ。


「……あ、すいません」

ユーリがバツが悪そうな顔をして謝ってきた。


「……あー、悪いが、今の話、アレクには内緒にしてくれ」

「それは構わないけど……」

バルの言葉に、困惑しながらもリィカは頷く。泰基も頷くが、暁斗はやや躊躇った。


「その、さ。内緒でいいの? 隠されるのって、あまり嬉しくないと思う」


「……どうしても、あいつが突っ込んで知りたがったら、おれかユーリが話す。今さらの事だし、知った所で大丈夫だろうが、わざわざ話すことでもねぇからな」


「……うん、分かった」

躊躇いながら頷く暁斗に、バルが「悪いな」と声を掛ける。


アレクの、一番辛かった時期と繋がってしまうだけに、どうしても慎重になってしまう。

過保護と言われれば否定できないが、ほっとけないのだから、しょうがない。



「話の腰を折って悪かった。続けてくれ」

バルがサルマに向かって言う。


サルマはなおも戸惑っていたが、声を掛けられて、ふー、と息を吐いた。

「魔力病の人、アレクの関係者? ま、ワタシらから何か言うことはないから、安心して。で、どう? 魔道具作り、やってみる?」


改めて聞かれて、顔を見合わせたのは、無詠唱で魔法を使える四人だ。

無言で顔を見合わせて、やがてリィカは、サルマに向き直る。


「やってみたいです」

「オレもやる! 目指せ魔法のバッグ!!」

「お前、そればかりだな。けれど、旅が楽になる物が作れるなら、チャレンジしてみてもいいな」


暁斗、泰基と続けば、ユーリが顔をしかめた。

「みんな、やるんですか?」


「ユーリだって興味持ってるのに、やらないのか?」

泰基が意外そうに言ったが、ユーリの表情は変わらない。

「使うのは楽しそうですけど、作るのは面倒そうじゃないですか」


その言葉に、リィカも意外そうな顔をした。

「でもユーリ、最初、料理習うときも、似たような事言ってたよね」


「今じゃすっかり嵌まってるよな。やり始めたら、お前が一番のめり込むんじゃないか?」


「……う、い、いや……それとこれとは……」

リィカと泰基に続けて言われ、ユーリが呻くと、サルマが笑った。


「決まり。四人ともやるってことだね。――フェイ、あんたも教えてあげられる?」

「………………うん」

人見知りの神官は、少し長めの沈黙の後に頷いた。



※ ※ ※



魔道具は、大まかに二種類に分けられる。


例えば、カセットコンロや馬車みたいに、普通に形作ったものに、魔法を封じ込めた魔石を埋め込むもの。


そして、風の手紙(エア・レター)や、魔法のバッグの魔道具版のように、魔石そのものを加工して作る物だ。

魔石を加工して作る魔道具は、難易度が跳ね上がるらしい。



「まず、魔石に魔法を封じるのをやってみてもらおうかと思うけど、やった経験は……」

サルマが言い切る前に、四人が首を横に振る。


「……そうだよね。魔石、安物で悪いけど、あげるから、まず生活魔法を封じ込めてみようか」

これは別に難しくもなんともない。大体の魔法使いや神官ならできる。

四人とも一発でクリアだ。


「それじゃ、次だ。魔法そのものじゃなくて、属性の魔力を封じ込めるって説明で分かるかな? 馬車の魔石に、風魔法を封じたと言ったけど、それも、風属性の魔力を封じたんだよ」

リィカとユーリは、ピンとこないが、暁斗と泰基は何となく分かったらしい。


「あれかな。剣技を使うときみたいな感じ?」

「この属性の剣技を使うぞ、と思えば、その魔力が集まってくよな」


サルマは頷く。

「オリーが言うのには、大体剣技を使うときのイメージでいいらしいよ。ただ、魔力を集めてすぐに撃つだけの剣技じゃ、魔石には封じ込められない。しばらくその魔力を維持しなきゃなんないけど」


「うん、できる」

「むしろ、それなら、リィカとユーリより、アレクとバルの方がいいかもな」

泰基に視線を向けられて、バルが頷くと、サルマが唖然とした。


「なに、それもできるの? すごく難しいって聞いたけど」

「まあな。でも、慣れちまえば、そうでもねぇぞ」

「……あー、そう」


何なのこの子たち、とサルマは思ったが、ふとバルが視線を外に向けた。

と同時に、馬車が止まる。


「魔物だな。結構、数がいそうだ」

馬車から降りるバルに、リィカたちも続く。


「ちょっと……数がいそうって……」

「大丈夫です。馬車の中にいて下さいね」

慌てるサルマに、リィカが言って、馬車の中に押しこんだ。



「……中で何をやっていたんだ? 賑やかな声が聞こえたぞ」

アレクが少し不機嫌そうだ。

必要な事とは言え、一人で外に出ていたのは、面白くなかったのかもしれない。


「悪かったな、アレク。これが片付いたら、交換すっから」

バルが笑いながら、アレクの肩を叩いた。


「何のんきに話してんだよ。魔物だろ!? 数が多いんだろ!? 大丈夫なのか!?」

叫んできたオリーに、アレクが冷たく言い放つ。


「大丈夫だ。中に入っていろって言っただろう」

「ここがボクの席だから、動かないよ」

「……勝手にしろ」


妙に対応が冷たいアレクに、伺うような視線が集まる。


「延々と……とにかく延々と、本当か嘘か分からない勇者伝説について語られたんだ。適当に聞き流していると、怒られるし」


「……そりゃあ、お疲れさんだな」

「他人事みたいに言っているが、今度はバルの番だぞ」

バルが、そうだった、と嫌そうな顔を浮かべたが、表情が変わった。


「……おしゃべりはここまでだな」

バルとアレク、そして暁斗が向けた方向に視線を向ける。


そこにいたのは。

「……オ……オーク……!」


オリーが悲鳴を上げた。

豚の顔を持つ、二本足で歩く魔物が、そこにいた。


次回、第三章ほぼ唯一のバトルパートです。

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