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【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
第三章 魔道具を作ろう

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魔道具と勇者伝説?

「魔道具っていっても色々あるんだけどさ。一番売れているのは、こいつだよ」


サルマが、いくつかある荷から何かを取り出した。

抱きしめられていたリィカは、サルマが手を離した途端に距離を置いている。



取り出された物を見て、リィカがわずかに目を見張る。

バルとユーリは首を傾げ、泰基と暁斗は「あっ!」と声を上げた。

その見た目は、カセットコンロ、そっくりだった。



「簡易調理器、ってワタシらは呼んでる。枝とかが当たり前に取れるんなら、生活魔法があれば何の支障もないけどさ。砂漠地帯なんかいくと、思うように手に入らないこともあるからさ」



簡易調理器の脇にある蓋を開けると、そこに魔石が二つ収まっているのが見える。


その魔石に封じ込められているのは《ファイア》の魔法だが、調理器に合うように、多少のアレンジが加えられているらしい。


ボタンを押せば、中央とその前後左右、あわせて五つの炎が吹き出てきた。

きちんと鍋などが置けるようになっているので、それで料理を行える。

本当によくカセットコンロと似ている。



「調理器そのものは、そんなに壊れる代物じゃないけど、魔石は定期的な交換が必要だ。手を加える必要があるから、普通の生活魔法の魔石じゃ合わない。そんな訳で、定期的に魔石の注文が入るんだよ」


説明を受けて、リィカとユーリがマジマジと見つめている。

「……いいなぁ。わたしも欲しい」

「料理するとき、便利そうですね」


「気に入ってくれて、嬉しいけどね。旅に持って行くには、かさばると思うよ。……本当はもっと小さくするなりして、冒険者とかに携帯用として売れればいいなぁ、とは思ってんだけどさ」


リィカがコクコク頷く。

「うん。絶対売れると思う。旅してても、温かいもの食べたいし」


「……なかなか上手くできないんだけどね。まあ頑張るよ」


冒険者に売り出すとしたら、魔石の補充をどうするか、という問題もあり、簡単にはいかない、というのが現実だった。



「……なあ。砂漠地帯はもっと北だろ。だったら、何でこんな所にいるんだ?」

バルが聞けば、サルマは何を言ってるんだ、という顔をする。


「あんた、今のこの時期に北に行けって?」

「……………悪かった」

北は魔王が攻めてきているのだ。そうそう行けるものではない。


「早いうちに行って売って、さっさと戻ってくればいいんじゃないか、なんて話もしてたんだけどねぇ」


サルマに浮かぶのは苦笑だ。

チラッと視線が御者台の方に行く。


「……オリーがさ、勇者伝説大好きで、いろんな話を寄せ集めてるんだ。で、魔王が誕生したんだから勇者が召喚されたはずだ、実物が見られる、行くぞって、アルカトル王国に勝手に馬車を走らせた」

え、とサルマを凝視する。


「王都アルールで、きっと顔見せのパレードとかあるはずだ、とか張り切ってたんだけどね。いざ行ってみたら、まったくそういうのなくて、結局勇者を拝めずじまいでさ。でも、召喚された事は確からしいから、アルカトルから北上していけば、どこかで会えると期待してる」


すでに会ってます、とは言えない。

パレードは、そういう話は確かに国王からあった。嫌だと断ったのは、暁斗だ。

冷や汗をかいて固まっている暁斗を見て、泰基が怖々と質問した。


「……ちなみに、もし会ったらどうするんだ? いや、その前に、会った人間が勇者だって分かるのか?」


「そんなの、オリーに聞いてくれ。勇者に会えば、自分の勇者センサーが働くから絶対に分かる、なんて言ってたけどね」


世間に出回っている勇者の伝説というのは、様々だ。どこからどこまでが本当か嘘かが分からない。

見た目の特徴も、語られる話によって、マチマチだったりする。


きちんとした言い伝えを知っている、例えばフロイドみたいな人もいなくはないが、ほとんどの人は、知らない事実だ。



泰基も、暁斗も、顔が引き攣りそうになっている。


(勇者センサーってなに……?)

そのセンサーとやらがまったく働いていないことには、感謝した二人だった。


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