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【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
第二章 旅の始まりと、初めての戦闘

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ボーイズトーク

「んで、アレク」

「リィカと何があったんですか?」

夜、ベッドに横になったアレクに、バルとユーリが問い詰めた。



アレクに指先にキスをされて真っ赤になったリィカは、そのまま部屋を飛び出した。


そんなリィカを呆然と見送り、何もなかったような顔をしているアレクに、問いたげな視線が集まったのだが……、


「何で二人なの? オレも街の中見たいし、一緒に行きたい」

という、何も分かっていない勇者様の発言に気を削がれ、すっかり問い詰めるタイミングを逃した。


暁斗は、バルとユーリが一緒に出かけようと言ったら、それであっさり納得した。



部屋は、三人部屋が二つだ。

一つは、アレク・バル・ユーリが使い、もう一つは、リィカ・暁斗・泰基が使っている。


それを知った時のアレクは、ひどく不機嫌そうな顔をしたが、「個室がねぇんだよ」というバルの言葉と、「衝立はありますから」というユーリのフォローに、渋々諦めた。



リィカは、流石に食事時には顔を見せたが、明らかにアレクを避けようとして、しかし気にせず隣の席を確保したアレクの方を、できるだけ見ないようにしていた。


考えてみれば、結構長い時間、二人きりだったのだ。

ほとんどがアレクは寝ていたが、起きていた時間もあったはず。


前々から、アレクがリィカを意識していたことに気付いていた二人としては、ここは問い詰めないわけにはいかなかった。



バルとユーリの問いに、アレクは「んー」と言うだけだ。


「リィカのあの反応、単に恥ずかしくなっただけじゃねぇ。ちゃんと意味分かっての反応だろ?」


「平民出身のリィカが、その意味を知っているはずありませんよね。誰かが教えない限りは」


バルとユーリは、尋問さながらに問い詰めるが、アレクは口を開かない。

だが、容赦するつもりはなかった。


「しかし、いつからだ? 意識はしていても、まったく自覚してる風はなかったよな。リィカと話すアキトやタイキさんを、よく睨んではいたが」


「明らかに変わったのは、旅立ち前のパーティーじゃないですか? 名前を呼ばせようとしたときのアレ、無自覚だったら絶対にやらないでしょう」


「ああ、確かにな」


アレクは、内心で呻いた。

何も言っていないのに、なぜか全部見透かされている。

そんなアレクにお構いなしに、さらに話が続く。


「リィカから相談されたことあるんですよ。アレクと話しているとよく不機嫌になるんだけど、どうしたらいいのか、と。気にするなと言っておいたんですけどね」


アレクの我慢は、ここまでだった。

「何で、リィカがお前に相談するんだよ!?」


ガバッと跳ね起きて叫べば、二人がしてやったりとばかりに笑った。

やばい、と思って、また横になってふて寝を決め込もうとしたが、遅かった。


「ほれ、いいからサッサと吐け」


「王太子殿下一筋のアレクに、好きな女性ができたんです。喜ばしいじゃないですか」


「ああもう、うるさい! 大体、お前らはどうなんだよ!? 気が付いたら婚約者なんか作って、それを俺に一言もなく! 俺が知ったの、父上と兄上に教えられてだぞ? 何で知らないんだ、と言われても、俺の方が聞きたいっての!」


しかし、それで参る二人ではなかった。

「今は、おれたちの話はいいんだよ」


「というか、好きな女性、という言葉は否定しないんですね。いや、良かったです」


ぐ、と呻いたアレクは、枕に顔を埋めた。

「…………………ああ、もう。何でお前らに話さないといけないんだよ」


「言ったじゃないですか。王太子殿下のことしか考えていないアレクが、心配だったんですよ」

「どこが心配だ!? 面白がっているだけだろう!」

結局また跳ね起きて、アレクは叫んだ。


「それに、言う羽目になったの、ユーリのせいだからな! まったく意識されていないの、分かっていたのに……」

そこまで言って、しまったという顔をして、口を覆う。


「……疲れているから、もう寝るな」

ずっと寝ていて体力が落ちているから、とかもっともらしいことを言って横になるが、すでに遅い。


「そこまで言って、逃げんな」

「僕のせいってどういうことですか。気になるじゃないですか」


ニヤニヤ笑っているバルと、ニコニコ笑っているユーリを横目に睨み付ける。

しかし、顔を上げる勇気は持てず、枕に顔を埋めて、ボソボソと言った。


「……ユーリ、言っていただろ。《回復ヒール》の練習をしているときに。回復の力が外に漏れているから、体を密着させれば回復効果があるかも、って」


「……え、ああ。確かに言いましたけど……、もしかして密着されて、それだけで告白しちゃったんですか? あれ、でも、《回復ヒール》も使えるようになったんですよね?」


確かにリィカからそう聞いた。

一度使って見せてもらおうと思いながらも、ここまでその機会がなかった。


「最初から使えたわけじゃない。使えるようになったのは、俺が目を覚まして、落ち着いてからだ。川から上がって、まだ出血が治まってなかった時は、パニックになっていて、それどころじゃなかったみたいだ。だから……」


ためらったが、話さないとこいつらも納得しないだろう。

聞いて後悔しろ、と思いながら、アレクは続きを口にした。


「ユーリに言われた言葉を思い出して、そして、ずぶ濡れでもあったから、あいつ、服を脱いで下着姿になってたんだよ。その状態で、俺に抱き付いて《回復ヒール》をしていた。

 で、俺が目を覚ました後も、服を着るのなんか後回しだ、って下着姿で、俺の世話をしようとするから……」


「……すいません。分かりましたので、もういいです」

話の途中で遮ってきたユーリは、顔を手で覆っている。


「うるさい。話せって言ったのは、お前らだろ。それで、言ったんだよ。好きな女の子にそんな格好されていると変な気持ちになるから、服を着てくれってな。――これで満足か?」

最後はもう自棄である。


「……えーと、なんかすいません」

「……あー、うん、まあ、なかなか大変だったな」


ユーリは顔を手で覆ったまま、バルは完全にそっぽを向いている。

二人とも、微妙に耳が赤い。


「……言っとくが、想像したら殺すからな」

アレクの低い声に、冗談じゃない響きがある。


ユーリの身体が、一瞬ビクッと跳ね上がったのを見て、アレクが睨む。

バルは何も反応を見せなかったが、ボソッと言った。


「親父に言われたな。……一度くらい着替えとかノゾキしてみろって」

「ほお? どういうことだ?」

「待て、アレク。おれじゃねぇ。親父が言ったんだ!」

「で、それを実践しようと?」

「しねぇよ! 命がいくつあっても足りねぇだろうが!」

「……まあまあ、二人とも落ち着いて……」



そんなくだらない会話で、夜も更けていく。


書いてて楽しかった。

今さらですが、シリアスは終了。

第三章を挟んで、四章になると、またシリアス度が増します。

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