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【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
第二章 旅の始まりと、初めての戦闘

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剣を使うか否か

「そうですね。僕も剣を教えて欲しいです」


皆が唖然としている中、ユーリまでそう言い出した。

後衛組二人の発言に、他の四人が慌てた。


「いや、だから、全員で力を合わせて戦おうって話だろう?」


「おれたちだって、無詠唱に対処できない分、お前らに頼る事になるだろうし」


「そうだよ。今度はオレもちゃんと戦えるし、大丈夫だよ」


「大体、そんなすぐに使えるようになんか、ならないぞ」


順番に言葉を発する四人に、リィカもユーリも意見を変えることはなかった。


「いつも絶対に全員が一緒に戦えるわけじゃないと思う。一人で戦ってても、魔法を唱える時間くらい、ちゃんと稼げるようになりたい」


「後衛だから戦えません、なんて言っていられないと思うんですよ。アレクもバルも、無詠唱での魔法発動を諦めるわけではないでしょう?」


「……そりゃそうだが。……危ないだろ」

後衛の二人が前衛に出る必要は、まったくないのだ。


「前衛を押しのけて前に出る気はありませんよ。ただ今後も、前衛がいないのに近接戦闘をしてくる敵と戦う事になる可能性は、ゼロじゃありません」

アレク、バル、暁斗が困ったような顔をしている中、泰基は少し考える。


「今さらの質問で悪いんだが、魔法使いとか神官とかって、魔法を使う用の武器はないのか?」


日本のゲームなどでは、魔法職は杖を持っているが、二人は最初から手ぶらだ。

ユーリは意味が分からないという風に首をかしげる。


答えたのは、リィカだ。

「武器は何もないよ。魔法は、自分の手から使うものだから」


その答えに、ユーリだけでなく、アレクとバルも、不思議そうな顔だ。言うなら「何を当たり前の事を言っている?」だろうか。

泰基と暁斗は、理解できた。それだけに違和感もある。


こちらの世界の常識はもちろん、日本のゲームなどの知識がなければ、迷わずに答える事はできない。

暁斗は、いつだったか父と話をした、リィカが転生したんじゃないか、という話を思い出していた。


「……なるほど。魔法の方で武器が何も必要ないなら、剣を持つのもいいかもしれないな」

泰基は、その違和感を押し隠して、話を続けた。


「基礎だけでも押さえておけば、確かに、全然違うだろうと思う。――良かったら、俺が教えるよ」


「本当!?」

「助かります、タイキさん!」

リィカとユーリが嬉しそうに声を上げる。


「ちょっと待て。本気なのか、二人とも?」

アレクが困惑した声を出す。

「それに、何でタイキさんが教えるんだ? 駄目とは言わないが、俺たちとは剣の使い方が違う。だったら、俺たちが教えた方がいいはずだ」


「お前もバルも、人に教えるのは慣れてないだろ。俺はあっちでも教えていたし、基礎だけだったら違いはないから、問題ない」


身体の仕組みというか、動かし方というか、そういったものは異世界であっても違いはないのか、剣の基本的な動作というのは、ほとんど変わりがなかった。

そこからさらに発展させていくと、色々違いも出てくるのだが、泰基が教えると言っているのは、基礎だけだ。




アレクは兄のアークバルトに剣を教えた経験があるが、アークバルトはなかなか上達しなかった。


泰基がアルカトルの王宮にいるときに、偶然教えている場面に遭遇したのだが、黙って見ていられなくて、横から口を出してしまった。

その結果、アークバルトが格段に上達してアレクが落ち込んだ、というエピソードがあったりする。




「剣の選び方なんかは分からないから、その辺りはアレクとバルに頼みたい」

言われて、アレクとバルは困った顔だ。


「……そもそも、俺は二人が剣を使う事自体、納得しているわけじゃないんだが」

「僕はやりますからね」

「わたしも、やる」

二人の宣言に、アレクは何とも言えない顔をした。


「……諦めるしかなさそうだぞ、アレク」

バルのその言葉に、アレクは観念した。


「分かったよ。じゃあ明日、剣を見に行こう」

そこで、何かを思いついたようにニカッと笑う。


「ユーリの剣は、バルが選べよ。リィカの剣は、俺が選ぶから。――明日、二人で出かけようぜ?」

「……………ひえっ!?」


アレクはいたずらっぽく笑うと、リィカの手を取る。

その指先にキスをすれば、リィカは変な声を上げて、顔が赤く染まった。


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