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【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
第十九章 婚約者として過ごす日々

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学園後期開始

「久しぶりの寮だー!」


 夏期休暇最終日、リィカは王宮から寮の部屋に戻ってきていた。

 アレクには渋られた。このまま王宮にいればいいと言われた。それに否を唱えたのは、レーナニアだった。


『わたくしも家へ戻ります。結婚して王宮に入ってしまえば、おいそれと戻ることは叶いませんから。今しかできない交流もたくさんあるのです。その機会を失うのは、リィカさんのためにならないと思います』


 真剣なレーナニアの言葉に、アレクはしばらく唸ったが、結局リィカが寮に戻ることを了承した。


 ただ、歩いて戻るというリィカの言葉は、あっさり却下された。襲撃された事実がある以上、文句も言えない。馬車だって変わんないんじゃないかなと思ったのだが、素直に送られて戻ってきた。


 夕飯時は、ミラベルやセシリーと久しぶりに顔を合わせた。そして部屋へ戻り、明日からの授業に備えたのだった。



※ ※ ※



 長期休暇前までが前期、そして今日からは後期の開始だ。

 そしてこの後期開始の日は、休暇前に行った中間期テストの結果が発表されている日でもある。


「――え」

「やりましたわっ!」


 その結果を見て愕然としているのはアークバルトであり、喜んでいるのはレーナニアだ。その喜びのまま、隣にいたリィカに抱き付く。


「ありがとうございますっ! リィカさんのおかげです!」

「い、いえ、わたしは、何も……」


 リィカは筆記試験の結果を見る。そこにあるのは、()()一位の名前が二つ。もちろん、アークバルトとレーナニアだ。決して勝てたわけではないのだが、今までずっと二位に甘んじてきたレーナニアだから、追いついただけでも嬉しいようだ。


 ただ、本当にリィカは何もしていない。してもらった方なので、お礼を言われると違和感があってしょうがない。


 視線をずらしていく。思っていたよりも上位に自分の名前があった。アレクはもちろんバルよりも上だ。残念ながらユーリにはまだまだ届かないが。

 リィカもレーナニアの背中に手を回した。


「わたしの方こそ、ありがとうございます。レーナ様のおかげで、成績がずいぶん上がりました」

「それこそとんでもありません。リィカさんが努力されたからですよ」


 お互い少しだけ体を離して、顔を見合わせて笑う。美少女と美女が見つめ合っているのは、絵になる。周囲からの注目を集めているが、二人は気付かない。


「はぁ……。まぁ抜かれなかっただけ、まだ良かったか」


 大きくため息をついて、アークバルトがぼやく。そして、アレクを見た。


「全く。アレクが勉強から逃げるから、追いつかれちゃったじゃないか」

「俺のせいですかっ!?」

「そうだよ。人に教えるのってね、本当に勉強になるんだよ。一人で勉強してても限界があるんだから」

「……いや、だって、別に」


 ジト目に耐えきれなかったか、アレクが視線を逸らす。アレクの名前は、残念ながらかなり下位の方だ。一年のブランクがあり、モントルビア行きでさらに数ヶ月のブランク。勉強しなければ、そうもなるだろう。


 もったいないなぁ、とリィカは何度思ったか分からないが、また思う。ちゃんと勉強すれば、あっさりと上位にいきそうな気がする。


 リィカはさらに結果を見ていく。魔法の実技一位は揺るがなかった。ユーリと同率なのも、まぁそうだろうと思う。さらに結果を見ていって、ほんのり笑みを浮かべた。ミラベルの名前が、真ん中よりも上にあるのを見つけたからだ。


 次に目をやったのが、剣の実技試験だ。こちらも同率一位の名前が、変わりなくアレクとバルだ。さらに見ていって、そこにあった名前に驚いた。


「カタル……」


 平民クラスのリーダー的存在だったカタル。一年生のとき魔物に怯えるリィカを、何度も誘ってくれたカタルの名前が、上位に入っていた。


「ああ、リィカさんはご存じなのですよね。その方の名前、去年の中間期あたりから上位に食い込みだしたんですよ」

「順調に順位が上がっているね。今、平民クラスで一番注目されている人だよ」


 レーナニアとアークバルトの解説に、そうなんだと思いながら、名前を見る。リィカが剣士との戦い方を学べたのは、カタルがいたからだ。強いと思っていたけど、こうして名前を見ると、やっぱりすごかったんだなと思う。


「ところでリィカ。彼はどういう人?」

「……え?」

「人格とか学園卒業後の進路希望とか。何でもいいから教えてくれないかな?」

「……ええっと」


 何食わぬ顔で聞いてきたアークバルトに、リィカは顔がヒクついた。平民の情報は、貴族には秘匿される。もちろんリィカは知っているが、だからといって言い触らして良いわけではない。アークバルトの方が、それは承知しているはずだ。


 レーナニアかアレクか、誰か止めてくれるかと思ったが、そんな様子はなく、むしろリィカの返事を興味深そうに待っている風がある。


 リィカが困っていると、アークバルトが残念そうにした。


「ポロッと言ってくれたら、儲けものと思っていたんだけどね、しょうがないか。少なくとも、リィカが悪感情を抱く人じゃなさそうだということが分かったから、満足しておくよ」

「……ふぇ」


 そんなことは一言も言っていない。言っていないが、おそらく表情に出たんだろう。意識すれば隠せるが、こういう何気ない場所で、表情を悟られないようにするのは難しい……というか、無理だよなぁと思うのだった。



 ――だが、リィカは思わぬ形で、カタルに再会することになる。


 それは、後期最初のホームルームでの、担任のハリスからの話だった。


「かなり例外的な話になるが、このクラスでの次回の剣術の授業から、平民クラスの生徒が一人入ることになる。覚えておいてくれ」


 この発言に、教室がかなりザワついたのは、言うまでもなかった。


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