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【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
第十九章 婚約者として過ごす日々

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異端狩り

「僕たち、アレクとリィカがモントルビアに行っている間、もう一度あのキャンプ場に行ったんですよ」


 二人で行ったわけではなく、バルの父親である騎士団長に言われて、軍と一緒に行ったらしい。そこであのドラゴンと戦った場所も含めて、もう一度視察をしたらしい。


「んでまぁ、一言で言やぁ、異常だと言われた」


 一体どんな戦いをしたらこうなるのか。一番ひどいのはリィカが《天変地異カタクリズム》を放った場所だが、それ以外も相当だ。


「学園に現れたマンティコア、そしてこの間のキャンプ。その時いずれも僕たちの実力が"異常"だと思われかねない戦い方をしています。もちろん、周囲にどんな目で見られるかなんて、気にしている余裕はありませんでしたけど」


「今回の襲撃じゃ、まさに異常だ。魔法を封じる陣の中で魔法を使ったんだからな」


 リィカは唇をかんだ。魔法を使わなければ勝てる相手ではなかったから、どうすることもできなかった。悔やんだところでしょうがないが、もっと何かできなかったのかと思う。


「昔はそういうこともあったらしいですよ。多くは、時の権力者が自分より実力もあって人気もある勇者が、自分を追い落として王になろうとするんじゃないかと疑心暗鬼に陥って、人々を扇動して勇者を追い出した、みたいなことが」


「勇者は魔王を倒したような、とんでもねぇ実力の持ち主。もし放置して人々を虐殺し始めたら誰も止めらんねぇ、とかって理由を付けてな。異端狩りをしていたわけだ」


 ユーリとバルが、交互に淡々と説明する。聞いているリィカが辛くなってうつむいてしまった時だ。


「とまあ、親父がんなことを言ってたが、いざそんなことになったら、自分が先に暴れるから心配するなと言われたな」


「え?」


「父様も似たような感じです。国王陛下や王太子殿下も。魔族がそれを狙ってきても、自分たちがそれに惑わされることはないからと。もし惑わされてしまったら、いつでも好きに自分たちを害していいと」


 キョトンとしているリィカに、バルもユーリも笑う。


「まあだから心配すんな。カストルの策が空振りに終わるだけだ」

「……うん」


 リィカは頷いた。確かにそうだ。長くなくても交流してきたから分かる。そんな事態にはならないと信じられる。


「とは言っても、説明する必要は出てきちゃいましたね。言わないという選択肢は、あまりいい結果にはならなさそうです」

「今日わたし、学園終わったらお城に行くけど、その時に言う?」


 行くのは、襲撃についての聞き取りのためだ。ある程度のことはアレクが話しているだろうが、リィカが何も話さないというのは無理だった。


「そうですね、僕も一緒に行きますよ。バルはどうします?」

「行く。っつーか、あんまり一人で行動しねぇ方がいいぞ」

「ああ、確かに」


 リィカが一人でいる所を狙われたことを考えれば、それももっともだ。リィカも改めて気をつけようと思いつつ、思考はカストルのことにうつった。


「策が空振りになるとして……その後、どうするつもりだろう」


 学園でこの一年しっかり学んで知識をつけて、そしてその後魔国について考えようと思っていた。けれど、カストル側はそんなものを待ってくれる様子はなさそうに思える。


 リィカの言葉に、バルもユーリも、何も言えなかった。



※ ※ ※



「現状、一番効果がありそうなのは、ティアマトか」


 カストルはつぶやいた。

 強化した魔物であるマンティコア、新しく生み出したティアマト、自動発動する魔封陣。それらの検証をしてみての感想だ。


 ティアマトがいれば、世界中の人々を殺し尽くせる。人の目につかない場所にティアマトのタマゴを置いて、そして魔物を生み出させればいいのだから。そして、生み出す魔物は次第に強力になっていき、最終的にはAランクの魔物だらけにできる。


 そのタマゴを複数、設置すればいい。いくら勇者一行であっても、世界中の魔物を倒せるわけではない。ほぼ無限に魔物を生み出せるティアマトと勇者一行では、先に限界が来るのは勇者一行の方だ。


 だがそれをするには、魔族側にも危険が及びかねない。それで勇者一行を倒すことが叶ったとしても、放たれてしまったAランクの魔物の始末が大変だ。だから、できればそれは最終手段にしたい。


 けれど、それよりも何よりも。


「私自身の手で、勇者一行を倒したい」


 戦うなと命令した魔王のホルクスはもういない。


 誰よりも魔国の未来を案じていたホルクス。そのために、何としても兄であるカストルを生かそうとした。その気持ちは分かっている。だから、カストルも魔国の未来のために動いている。


 本来であれば、勇者一行にちょっかいを出さず、自分の存在を気取らすことなく動くのが最適なのだろうが。


 それでも、自分自身の望みを消すことはできないと、カストルは静かに笑ったのだった。


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