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【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
第十八章 ベネット公爵家

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マディナ

「リィカは、王子様と一緒か」


 リィカの母マディナは、自らに与えられた部屋で、一人そうつぶやいた。

 知らないうちに貴族になっていたらしい娘は、今度は公爵なんてものになって、そして王子と夜を過ごす。


 全く想像もしていなかった未来。その未来が、自らを強姦したあの男の血によるものだというのが複雑だが、それでも幸せになる娘をとても嬉しく思う。


「……本当ですね。あの子を愛することができれば、私も幸せになれる」


 マディナはつぶやく。

 思い出すのは、未婚のまま妊娠したことで、家族や周囲の人から白眼視され、父親から勘当されて、行く当てもないままに彷徨っていたときのこと。


 多分、このまま死ぬのだろうと思った。クレールム村の村人に救われなかったら、きっとそうなっていたはずだ。


 助けられて、村長の妻に全てを話した。最後に「妊娠さえしなければ」とポロッとこぼした。その時に言われたのだ。


『どんな事情があっても、この子はあんたの腹に宿った、あんたの子だ。すぐには難しいだろうけど、愛してみようと思いなさい。あんたが愛すれば、この子も愛してくれる』


 そうなのだろうか。この子を愛せるのだろうか。愛せたとして、この子も同じ気持ちを持ってくれるのだろうか。


『そうしたら、いずれあんたの側からこの子が旅立つ時、幸せになる子を見て、あんたもきっと幸せになれるから』


 そう言われても分からなかった。それなのに、涙が零れてくるのを堪えきれなかった。


 そのまま村に迎え入れられて、穏やかな生活を送った。努力は必要なかった。どんどん大きくなるお腹とその中で動くのが分かると、この子が愛しくてしかたなかった。


 リィカが生まれてから、色々なことがあった。村に盗賊が現れたときのこと。領主である男爵にリィカが目をつけられてしまったときのこと。


 そして、魔力を暴走させて王都に来ることになった。魔王が誕生して、リィカが勇者と一緒に旅に出るなんて、とんでもない事態になった。


 マディナは、フフと笑う。旅から戻ってきたときのリィカは、何度も何度も「アレク」の名を嬉しそうに……そして悲しそうに話をしていた。リィカがその「アレク」をどう思っているのか、想像することなど簡単だった。


 騙されていなければいいなとは思ったが、その心配は杞憂だった。

 ベネット公爵の話をするために訪れた「アレク」も、本当にリィカのことを大切に思ってくれているのが、分かったから。


「ちょっと、寂しいけどねぇ。王子様と結婚なんかしちゃったら、気軽に会えなくなっちゃうでしょうに」


 贅沢は言わないが、もう少し近いところにいて欲しいと願ってしまう。


 結婚式には出させてくれるんだろうか。孫が生まれたら顔を見せてくれるんだろうか。

 ――でもきっと。

 こういうことを考えることができるというのが、幸せな証拠なのだろう。


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