表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
第十七章 キャンプ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

589/678

VSドラゴン

「そういえば、リィカもユーリも魔力は平気か?」


 山に向かって歩きながら、アレクが思い出したように問いかけた。


 魔族らしい気配がするのは、山麓よりほんの少しだけ上に上がった辺りだ。山は高いが、上にいけば行くほどに道は険しく、生息している魔物も高ランクのものになる、と言われているから、魔族たちもあまり奥に入り込むのは避けたのか。


 そのおかげで、リィカたちもこれから夜になろうかという時間に、山奥に入らなくて済むが。夏で月明かりがある季節だとは言っても、夜間の登山は遠慮したいというのが本音だ。


 アレクの問いに、まずリィカが答えた。


「わたしは平気だけど、ユーリは大丈夫?」

「僕も何とかなりますよ。最初は心配しましたけど、ほとんど《結界バリア》しか使っていませんし」

「……《結界バリア》だけ?」


 リィカが首を傾げた。アレクとバルが疑問に思わないのは、理解することを諦めているからである。非常識を連発するリィカとユーリの魔法に、ツッコんでも無駄だと本気で思っている。


「《結界バリア》は形を自由に変えられるでしょう? それで、細く尖った棒をたくさん出して倒していました。リィカも、やろうと思えば出来るでしょう?」


「どうなんだろう、そこまで形変えられるかなぁ? 基本的に防御以外に使えると思ったこと、ないんだけど」


 ユーリは意地悪く問いかけるが、それにリィカは気付かず、頭に浮かべたのは自らがよく使う、火や水、風の混成魔法の《防御シールド》である。


 そのことにユーリも気づき、そうではなく通常の《防御シールド》だと言おうと思ったが、止めた。リィカにとって、すでに《防御シールド》と混成魔法がイコールになってしまっている。からかっても、開き直られて終わりそうだった。



※ ※ ※



「【隼一閃しゅんいっせん】!」


 前方から来るBランクの魔物を、アレクが剣技の一撃で仕留める。

 もう魔物は前方から来るのみだ。リィカの最強魔法が軒並み倒してのけて、その後キャンプ地周辺に残った魔物も全て倒した。今来ている魔物は、それ以降に生まれた魔物だろう。


「この先にいるのは、間違いなく魔族だな。三体か」


 アレクが苦々しく言って、リィカが頷く。


「うん。でも、ジャダーカとか知ってる魔族じゃないよね」

「……なぜ口から出る名前が、それなんだ」

「え、なんでって?」


 アレクの呆れ半分、嫉妬半分のツッコミに、リィカは聞き返した。そんなリィカに、ユーリは笑いたいのを必死に堪えて、バルが口を開いた。


「普通、この場合はカストルじゃねぇの? なんでジャダーカなんだよ」

「……あ、そっか」


 言われてみればその通りだ。裏で画策しているのはカストルであろうから。だが、どうしてもリィカはジャダーカの方が気になってしまうのだ。


「ジャダーカは、リィカの好敵手ライバルでしょうからね。でも、アレクの恋敵ライバルでもありますし……。いやぁ大変ですね」


 笑いをにじませたユーリの言葉に、リィカは首を傾げる。自分のライバルなのは確かだが、なぜアレクのライバルなのか。何が大変なのか、よく分からない。


(アレクもジャダーカと戦ったから、だからライバル……?)


 リィカの思考は完全にズレた方向に向かい、アレクが落ち込んでユーリは面白そうに笑い、バルは深々とため息をついたのだった。



※ ※ ※



 そんな緊張感のない状態も、距離がいよいよ近づけば四人の顔は真剣なものに変わっていく。

 全員がほぼ同時に、上空を見た。魔物だ。リィカが目を見開いた。


「ドラゴン……?」


 大きな羽を広げたトカゲ。日本のゲームなんかでよく見たドラゴンだ。アレクが頷いた。


「ああ、そうだ。気をつけろ、Aランクだ」

「うん」


 この魔力量でAランクじゃなかったら、その方が驚きだとリィカは思いつつ、その手から凝縮魔法を放つ。しかし、簡単に避けられた。

 同時に、その口に魔力が集まっているのを感じた。


「《結界バリア》!」


 ユーリが魔法を唱え、ドラゴンの口から炎が吐かれた。ユーリの顔が辛そうに歪む。攻撃が脅威だからではない。こんな森の中で炎を使ってきたからだ。木に火が燃え移るのが見えた。


「ギャウワッ!?」


 突然ドラゴンが悲鳴を上げて、炎が途切れた。そして、半分落ちるようにして、地面に足をついて、リィカを睨んだ。


「ああ、凝縮魔法ですね」


 ユーリが納得したようにつぶやいた。避けられたリィカの凝縮魔法だが、それを操作して魔物に命中させたのだ。


「《水塊アクアブロック》」


 リィカは魔物を見据えたまま、静かに魔法を唱えた。火は、途中で炎が途切れたおかげで、大きな火事にはなっていない。リィカの中級魔法一発で、簡単に火は消えた。


 そのままドラゴンとにらみ合いになる……かと思われたが、その前にアレクが動いた。


「【隼一閃しゅんいっせん】!」


 唱えられた、横に薙ぐ風の剣技はドラゴンに命中し、その腹から出血する。


「ギャゥワアアアァァアァァッ!」


 その攻撃の痛みか、攻撃に対応できなかった怒りか、ドラゴンが大きく叫ぶが、その時にはバルがドラゴンに近寄っていた。


「【獅子斬釘撃ししざんていげき】!」


 土の直接攻撃の剣技が、命中する。ドラゴンは驚いたような顔をして、そしてほとんど何もできないまま後ろに倒れた。


「……少し、解体したい気持ちもあるが」


 すでに事切れているドラゴンを見ながら、アレクがつぶやく。ドラゴンの肉は果たして美味いのか、興味を隠せないアレクだが、リィカとユーリとバルのジト目に気付き、コホンとわざとらしく咳をした。


「まあ冗談はおいとくして、行くぞ」

「本当に冗談ですか?」

「いいから行くぞっ!」


 ユーリのからかいに、アレクはごまかすように叫んで走り出した。そして、三人も後を追い、それから魔族の姿を目に捉えたのは、すぐのことだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ