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【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
第十七章 キャンプ

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馬車の上のリィカ

 女性兵士に案内されて、女生徒達のいる方へと移動したアレクは、リィカを見つけて怒鳴った。


「おいリィカ! なんでそんな所にいるんだ!」


 御者台にいると聞いていたリィカは、馬車の()にいた。女性兵士は、そんなリィカを見て、絶句している。


 声が聞こえたのか、リィカがアレクの方を見た。そして、アレクの耳元でリィンと音がする。


『どうしたの、アレク』

「あっちはバルとユーリがいるから、俺はこっちに来たんだよ。あまり馬車には近づけないが。それよりなぜそんな所にいる?」


 馬車の上は多少の傾斜はあるが、そこまででもない。いていられないことはないだろうが、見ていて危ないし、怖い。だというのに、リィカはノンビリ座っている。


『大丈夫だよ。こっちの方が見晴らしがいいから、よく見えるし。魔力だけで探るの、面倒だから』

「魔物からも狙われるだろう!」

『ちゃんと防御もしてるから、大丈夫』


 それでも危ないことに変わりないだろう、と思ったアレクだが、リィカが普通の《防御シールド》を使っているとは考えにくい。おそらく混成魔法を使っているのだろうと思えば、確かに襲ってきているDランク程度の魔物に破られるものではない。


「馬車、揺れるんだから気をつけろよ」

『それもあっての《防御シールド》だよ』


 どうやら準備万端らしい、と判断したアレクは、ため息をついて、男性兵士たちと合流することにした。心配すらさせてくれないリィカを頼もしく思うべきか、寂しく思うべきか、少し悩んだ。



※ ※ ※



 リィカはアレクの姿を見送りながら、怪しい魔力を探る。感じるのは、魔物の魔力だけで、魔族らしいものはない。


 この間のマンティコア、そしてこの大量の魔物が、魔族の、ひいてはカストルの仕業だったとして、カストルは何を考えているんだろうか。


 リィカは、魔国のために何かしたいと思っている。何ができるか、まだ分からなくても、もう二度と魔王が生まれないように、勇者を召喚しなくて済むように、その道を探りたい。


 けれど、カストルはどう思っているんだろうか。この裏にカストルがいるとしたら、カストルは魔国を変えることなど、望んでいないんだろうか。あくまでも、人の豊かな土地を奪うことを、望んでいるのだろうか。


『リィカ、絶対とは言えないが、おそらくカストルも転生している。"日本人"の記憶があると思う』


 泰基がそう教えてくれたとき、リィカは絶句した。そう気付いたのが暁斗で、その理由が「ゲームに良く出てくる武器を作ったから」なのは、ちょっと笑ったが。


 けれどそう考えると、カストルの作る魔道具なんかも納得がいく。暁斗の相手に人間であるダランをぶつけたことも、理解できる。暁斗が人相手に殺し合いなどできないことを、日本人の記憶があれば容易に想像できるだろう。


 だが、魔族としてだけじゃない、別の記憶もあるのなら、なおさら魔族としてだけではなく、もっと広い考え方ができてもおかしくないとも思う。人と手を取り合う道を、選ぼうとは考えなかったのだろうか。


 ガタン、と馬車が揺れて、リィカは我に返った。御者台だと前方しか見えないので上によじ登ったのに、考え込んでいては意味がない。


 ちなみに、スカートではない。四日目にグループ行動で動くから、はいているのはキュロットのようなものだ。ジャージではないが、そういう感じの学校指定の制服である。流石に、スカートだったらよじ登るのは躊躇した。


 御者にはギョッとされたし、レーナニアたちにもそういう顔をされた。時々兵士たちからの視線も感じるし、目立ってはいるんだろうが、この場所の方がやりやすい。


「アレクが来てくれたから、地上は気にしなくていいかな」


 助かったといえば助かった。空からの魔物は、大体打ち落としているが、地上の魔物の方が数が多い。そちらも気にしていたが、下手をすると兵士たちに当たってしまうので、結構な気を遣いながら魔法を放っていたのだ。


 魔法の練習をしておいて良かった。凝縮魔法のコントロールは、魔王対戦時よりさらに上がっている。それでも、うっかりがないとは言えない。


 飛んでくる魔物目掛けて、リィカは何度目になるか忘れた凝縮魔法を、放ったのだった。


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