表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
第十七章 キャンプ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

567/678

馬車の中

 集合時間は朝早くだったにも関わらず、出発したのは午後になってからだった。それでも教師のハリス曰く、今までよりは早いらしい。


 Aクラスの面々が、荷物について自重したおかげでもある。自重しても、それでもまだ多いと減らされて泣いていた生徒がいた。


「……不安だなぁ。本当に大丈夫なのかな」


 泣いていた生徒の一人、フランティアが馬車の中でつぶやいた。十分に厳選して最小限に減らしたつもりなのに、それでも減らされたのだ。


「バルに荷物のこと聞かなかったの?」

「聞いたけど、それだけでいいはずないって思って」


 結局聞いた以上に増やして、聞いたくらいに減らされてしまった。エレーナも似たように不安そうで、それを言えばレーナニアもそうだ。

 平然としているのはミラベルとセシリーだ。


「二人は平気なの?」


 旅慣れていないという点では、二人も同様のはず。そう思ってリィカが聞くと、ミラベルは素っ気なく言った。


「別に。家にいてもそんなに物があったわけじゃないしね。あるもので間に合わせるしかないでしょう」

「…………」


 何とも返答に困る内容だった。

 公爵家なのに物がないはずないのだが、その理由については察するにあまりある。


「あたしも別にねぇ。田舎にいた頃、父親に連れられてキャンプしたとか結構あったし」

「そうなんだ。……じゃあ、セシリーも料理とかもできるの?」


 リィカはほんの少しの驚きを交えて、聞き返す。旅ではないにしても、野営経験があるなら、全くの未経験より全然違うだろうと思う。


「できなくはないけど、あたしのグループの料理担当は多分、レーナニア様になるん……」

「無理ですっ! 調理場で料理が出来ることとは別物でしょうっ!?」


 セシリーに話を振られたレーナニアが叫んで、リィカは目をパチパチさせた。


 セシリーはレーナニアやアークバルトと一緒のグループだ。他にも、セシリーと剣の授業で三位争いをしている男子生徒、そして魔法においてリィカやユーリに次ぐ実力を持つ人が、同じグループになっている。


 生徒ではあっても、次期国王と次期王妃であるから、その身の安全を考えて同グループに実力者を宛がったらしい。


 リィカたちが旅から戻ったことで、グループを変えようかを教師たちは本気で悩んだらしい。結局変えずにそのままになったが、安全を気にしてくれると有り難い、と実は言われていたりする。


「レーナニア様、料理ができるんですか」


 まさか公爵令嬢が料理ができると思わずに言ったリィカの言葉に、馬車の中に沈黙が降りた。


「あの……」


 何か言ってはいけないことを言ったのだろうか。皆が気まずそうな顔をしている。どうするべきか、謝るべきか。そう思ってリィカが口を開きかけたが、それより早くレーナニアが口を開いた。


「ええ、できます。色々あって、できるようにならざるを得なかった、という所ですが。最初の頃は大変でしたが、今では料理も楽しくなりました。……アレクシス殿下方から話は聞いていないんですね」


「……え?」


 苦笑しながらの言葉に、リィカは一言疑問しか返せない。そんなリィカに、レーナニアは説明したのだった。



※ ※ ※



「も、申し訳ありません……!」

「なぜ謝るんですか。必要ありませんよ。すでに過ぎたことですし、ただ何も知らないのも良くないですから、教えただけです」


 一通りの事情説明を終えて笑顔のレーナニアに、リィカは頭を下げた。何というか、とても重い話だ。それを語らせてしまったことが申し訳なかったと思うのだ。 


 断片はリィカも聞いた事がある。

 アークバルトが毒殺されかかったことや、食事が摂れなかったこと。その時のことをアレクが気にしていること。けれど、すべての事情を聞いたのは、今回が初めてだった。


 アークバルトとレーナニアは仲が良い。その婚約が政略的なものだと知った時には驚いたくらいに。でもそれは、乗り越えるべきことを乗り越えてきているからだ。


(だったら、婚約を解消したっていいなんて、そんなはずないのに)


 アークバルトが言っていたことを思い出す。あの時、レーナニアも異を唱えなかった。だけど、いいはずがない。いくら国のためだと言っても、二人は一緒にいて欲しいと思う。


(わたしは……)


 答えが出ていないわけではない。リィカはアレクがいい。ただ、頭にちらつく父親の存在があるだけで。


 自分も乗り越えなければならない。父親の存在から。自分がはっきりしなければ、アークバルトもレーナニアも、あるべきところに落ち着けない。


 何とかしなければ。

 そう思っても、どうすればいいのか、リィカにはまだ答えが見えなかった。


次からはまた一週間に一度の頻度に戻ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ