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【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
第一章 魔王の誕生と、旅立ちまでのそれぞれ

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出会い

 それから約一ヶ月後。リィカは、国立アルカライズ学園の門をくぐっていた。


「うわぁ、大きな学校だなぁ……」


 思わず感嘆が零れた。渚沙の記憶にある学校とは比較にならないくらいに大きいし、広い。足を止めて眺めてしまう。


「どうした、大丈夫か?」

「ふえっ?」


 突如かけられた声に、間抜けな声が漏れた。声を掛けてきた人を見て……目をパチクリさせた。


 髪が黒い。

 この世界では初めて見た。けれど、渚沙の記憶では当たり前にあった髪の色。思わず目の色を確認するが、色は黒ではなくみどりだった。


 そんなリィカに、目の前の男性は不思議そうにした。


「大丈夫か? お前、新入生だろう? 早くしないと入学式に遅れるぞ」


 まあ俺も新入生だけどな、と目の前の男性が笑う。それでリィカも、ハッとした。

 時間ギリギリというわけでもないが、ゆっくりできるほど余裕があるわけでもない。お礼を言おうと口を開きかけて、()()に気付いた。


「…………だ、大丈夫、です。ありがとう、ございます」


 喉に引っかかりながらも、何とか言葉を発する。だが目の前の男性は、何も感じなかったようで、笑って立ち去っていった。


 男性の制服のブレザーの胸ポケットには、この国の紋章の刺繍がしてあった。リィカのものにはない。刺繍があるのは貴族だけ。つまり、あの男性は貴族なのだ。


 別に不思議でもない。この国立の学園は貴族が多く通う学園だ。平民は数える程度しかいない。圧倒的に貴族の方が人数が多い以上、出会う確率も貴族の方が多い。


「……はぁ、良かった」


 リィカは貴族が苦手だ。

 全部が全部、嫌な貴族ばかりじゃないと兵士から話を聞いたことはある。しかし、村にいたときに出会った貴族は、怖い人だった。何もなくて良かったと胸をなで下ろす。


 去っていく男性の後ろ姿を見た。

 ふと、キラッと髪が光った気がした。


「あれ?」


 黒いと思った髪色が金色に見える。なぜと思ったが、そんな場合ではないことに気付いた。


「わたしも急がなきゃ!」


 早くしないと遅刻してしまう。そう思って、リィカは走り出した。



※ ※ ※



 ――がしかし、いきなりリィカは迷子になっていた。


「どこ行けばいいの……?」


 慌てて校舎に入ったのはいいが、行くべき教室が分からなかった。

 事前に教えてもらっていた内容によれば、中に入ればすぐに分かるということだったが、案内の看板があるわけでもないし、全く分からない。


 どこかで聞いた方がいいんだろうかと思ったとき、声をかけられた。


「君は平民だろう? なぜここにいる?」


 門のところで出会った男性もイケメンだったが、こっちもイケメンだ。明るい金髪に、群青色の目。どこかの漫画に出てきそうな王子様っぽいイメージだ。そして、胸のところにある刺繍。間違いなく貴族だ。


 怖い感じはしないけれど、それでも相手は貴族だ。それだけで身がすくんでしまう。


「ここは貴族用の校舎だ。平民が一人で入るのはやめた方がいい」

「……あっ!」


 言われてリィカは思い出した。

 校舎は、貴族用と平民用の二つがある。貴族用の校舎は、人数が多いということもあり、大きく豪華だ。当然目に付きやすい。リィカは何も考えず、目についた校舎に入ってしまったのだ。


 そこまで気付けば、平民用の校舎へ向かえばいいだけ。しかし、目の前の男性に何をどう言えばいいのかが分からない。下手なことを言って、相手を怒らせでもしたら大変だ。


 ということを半ばパニックになりつつ考えた結果、リィカの足が一歩後ろに下がった。


「じ、実は、迷ってしまいまして……、その、ごめんなさい!」

「おい?」


 大きく頭を下げつつ叫ぶように謝罪の言葉だけ口にして、そのまま回れ右して逃げ出した。驚いたような声は聞こえたが、構わず走ったのだった。



※ ※ ※



 一度外に出れば、平民用の校舎はすぐ分かった。貴族用のそれに比べれば、小さくて質素だが、だからといってボロいわけではない。清潔に保たれているのがよく分かる。校舎に入れば、教室もすぐ分かる。中に入って適当に席に座る。


 そして思い出すのは、先ほどのことだった。


(どうしよう、逃げてきちゃった)


 二回連続で貴族と会って、精神的に限界だった。理由を説明すればそうなるが、それで相手が納得してくれるのかと言えば、リィカだったら絶対に不満を覚える。

 教室内にいるのは、十名程度。この中からリィカを見つけることなど簡単なことだろう。


(無礼者とか処刑だとか言われたら、どうしよう……)


 始まってもいない学園生活だが、すでに先行きが暗く感じたリィカだった。


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