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【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
第五章 デトナ王国までの旅路

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風の手紙

モルタナを出発してから五日。

順調にいけば、今日中に街に到着するはずだ。


モルタナからデトナ王国へ向かう途中の、一番近い街であり、唯一の街でもある。

その先も、小さい村は点在していて泊まることくらいはできるらしいが、大きな街はそこだけらしい。


休憩中、リィカの手にはBランクの魔物の魔石があった。モルタナで倒したサイクロプスの魔石だ。


強化魔法を覚えた後、リィカが一行に申し出たのだ。

成功するか分からないんだけど、という前置きから話は始まった。


風の手紙(エア・レター)を、Bランクの魔石で作ってみたい」

リィカのその申し出に、他の五人が思ったことは一つだっただろう。


「大きすぎないか?」

代表してアレクが言った。風の手紙(エア・レター)は耳に付ける魔道具だ。Eランクの小さな魔石で十分に事足りる。


リィカもそれは分かっている。けれど、一番の問題は、風の手紙(エア・レター)を持っている人全員に話が伝わってしまう、ということだ。

だから、魔道具作りを教えてくれたサルマからは、自分たち専用で、売り物にはならない、と言われた。

仲間内だけで話ができるものを作ることが、一番大切だ。


「Bランクの魔石を、六つに割った上で作ってみたいの。元が一つの魔石で作れば、その中だけで話ができないかなぁ、と思ったの」

なるほど、とユーリと泰基が考え込む。


暁斗は首をかしげる。

「どうやってその中だけでの話になるかどうか、確認するの?」

「サルマさんたちと一緒にいるときに作った風の手紙(エア・レター)があるから。それで確認できるよ」


サルマたちと一緒にいるときに作った風の手紙(エア・レター)

作った人が違えば、もしかして区別できるかと思って結局ダメだったが、リィカが作った物はそのままリィカが持っている。


ちょっと待ったとやや慌てたように、アレクとバルが切ってきた。

「それって、俺たちの会話があっちに聞こえているって事はないのか?」

「リィカの荷物、しばらくモントルビアの王宮にあったんだよな? 聞こえてたらマズいんじゃねぇの?」


「大丈夫だよ」

逆だって言える。サルマ達の会話が聞こえてしまうかも知れないのだ。


だから、そこはきっちりされた。どうやったかは不明だが、リィカが魔力を流し続けないと、魔道具は作動しない。ついでに、作動するとサルマ達の方に分かるようになっているらしい。


「今、サルマさん達がどこにいるかなんて分からないよね? どれだけ距離が離れてても、分かるのかな?」

「それも、不明」


暁斗の質問は、サルマ達も分からなかったことだ。

声が届く範囲を聞いてみたら、一キロは問題なく届いたけどそれ以上は不明、という返答だった。




結局、魔石も持っているだけではもったいない。やってみていいんじゃないか、という事になり、リィカの手にBランクの魔石が渡った。

魔石の加工は難航した。数日かけてようやく、六つに割る事ができたのだった。




道中の魔物は、Dランクが一番多いが、Cランクの魔物とも遭遇する。

一日に一匹か二匹くらいは出る。このメンバーなので何も問題ないが、実力がないと旅はきついだろう。


街道も、驚くくらいに人が少ない。

倒した魔物の魔石は、リィカの他に、ユーリや泰基といった魔道具を作れる面々が、喜んで手に入れている。


売れば結構なお金になるが、現状金銭に困っていない。魔道具で旅が楽になるなら、それに越したことはなかった。



※ ※ ※



「――できた」


六つに割るのは苦労したリィカだが、その後の加工はそこまででもなかった。

六つのうち二つ、風の手紙(エア・レター)が出来上がった。


肝心なのは、サルマ達の風の手紙(エア・レター)との区別ができているかどうか。

作った二つの風の手紙(エア・レター)は、ユーリと泰基に一つずつ渡す。


リィカ自身は、以前に作った風の手紙(エア・レター)を取り出して、魔力を流す。

『あれ、リィカちゃん?』

サルマの声が聞こえた。


今どこと聞いたら、今日中に一行がたどり着く予定の街にいるそうだ。

それを伝えたら、サルマが一瞬沈黙した。


『残念だけど、街中人が溢れてる。宿もいっぱい。街に来ても、泊まれないよ』

「えぇっ!?」

どうやらモルタナと同じく、魔物が強くて旅ができなくなった人で溢れているらしい。

残念すぎるお知らせだった。



気を取り直して、当初の目的を果たすことにした。

要件をサルマに伝える。


ユーリと泰基に合図をする。

二人が何かを話しているが、その声がリィカの持つ風の手紙(エア・レター)から聞こえてくる事はなかった。


「――成功した!!」

大声で叫ぶ。


「やったな」

「やりましたね」

泰基とユーリが称賛する。


『どうやって作ったの!?』

風の手紙(エア・レター)からは、サルマだけではなく、オリーの声まで聞こえた。



サルマ達に作り方を説明して(魔石は、BではなくCランクだと言うことにした)、連絡を切る。

街に人がいっぱいで宿には泊まれなさそうだ、と伝えたら、一同がとても残念そうな顔をした。


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― 新着の感想 ―
[一言] では、魔石を2つに割れば二人だけの専用通話が出来るということですね? アレクが所望しそうだ(^o^;)
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