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【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
間章

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光の女神ヴァナ、闇の女神ダーナ

ヴァナは、一度チラッと名前を出したことはありますが、ダーナは初出。

この世界の神様のお話と、この世界についての話になります。

細かいところは気にせず、どうかサラッと読んで下さい。

「つかれたぁ。ただいま、ダーナ。ヒロインちゃん達、どうなった?」

「おかえり、ヴァナ。色々分かったことがあるわ」

「えっ!? 良いこと? 悪いこと?」

「……んー。どっちもかしらね」



ここは神達の住まう神界。

ここで、神は自らが作り出した世界の行く末を見ている。


ヴァナとダーナも同様だった。

二人の女神は、自らが作り出した世界に起こっている出来事について、頭を悩ませているところだった。




「まず、“乙女ゲーム”の知識がある子だけど。この子だけなのは確かだわ」

双子の女神の眼前に大きく映し出されたのは、アルカトル王国の王太子の婚約者、レーナニアの姿だ。


「この子だけ? ヒロインちゃんは違うの? あの子だって魔力暴走辺りの件からして、おかしかったよね?」

今度はリィカの姿が映し出される。泰基と話をしている映像だ。


「勇者の父親だっけ? 勇者が二人召喚されたのも初めてだけど、これがどうしたの?」

「この二人が話していたの。ヒロインはゲームの知識があるわけじゃないけど、“混ざり者”ではあるようなのよ」

「ええっ、そうなの!?」



この世には、神の数だけ、たくさんの世界が生まれている。

それぞれの世界は独立しているが、時々それらが混ざり合う現象が起こる。

歴史や世界観、物や生き物、人の魂に至るまで。

違う世界からやってきたものを、神たちは“混ざりもの”と呼んでいた。



※ ※ ※



神は、与えられた世界を自由に創造できる。

歴史が動き始めてしまえば干渉はできないが、創造の段階なら何をしようと自由だ。

とは言っても、ほとんどの神は細かく世界を作らない。


ヴァナとダーナもそうだ。人間と魔族を配置し、魔力と魔法を与えただけ。後は、その世界の行く末をずっと見守っている。



ある時、一部の神、特に女神達があるモノに魅せられた。

最初の世界である地球に生まれた、乙女ゲームと呼ばれるモノに。


魅せられたゲームの世界を、自らが与えられた世界にそのままそっくり作り上げた。

――ここまでならば、問題はなかったのだ。


だが、その女神達は、乙女ゲームに詳しい人間の魂を、自らが作り上げた世界に無理矢理連れてきたのだ。

混ざり合いは自然現象だ。それを故意に行うのは、決して許されない禁忌の行為だ。



だが、禁忌が行われたことにすぐには気付く者はいなかった。

気付いたときには、世界がボロボロになっていた。


連れてこられた人間が、自らがヒロインだと、主人公だと勘違いして、ゲームの知識を駆使して、傍若無人な振る舞いをして、世界は少しずつ壊れていった。

ゲームの時間が修了した後、世界の破壊は加速した。簡単に世界が壊れた。



禁忌を犯した女神は処分された。

だというのに、同じ事をする女神が続出した。


ついに、地球の神でもあり、神たちのリーダーである主神から、ゲームの世界を自らの世界の中に作り上げることが禁止された。

それ以降、神達の間では“乙女ゲーム”は禁句だ。



しかし、真面目に取り組んできたヴァナとダーナに悲劇が起こった。

世界の混ざり合いが起こったとき、乙女ゲームの世界が自らの世界と混ざってしまったのだ。


混ざり合ったものが、目に見えない人の魂などである場合、神であっても分からない。しかし、世界が混ざれば流石に分かった。

双子の女神は、主神に泣きついた。

まだ乙女ゲームの悲劇は記憶に新しい。その結果、主神は限定的ながら、世界への干渉を許可してくれた。

それが、ゲームの知識を持つ者の、記憶への干渉だ。


“混ざり者”は、時期の前後はあれど、ほぼ必ず前世の記憶を取り戻す。それは、神にもどうすることもできない自然現象だ。


ゲーム知識を保持する者の何が厄介かと言われれば、ゲーム知識という名の、未来を知っている事だ。

だから、その時期だけをずらす。その未来を知るタイミングを、すでに起こってしまった後にしてしまえば、それは未来を知ることとはならない。



レーナニアがゲーム知識を持っていることは、毒殺未遂後の様子から間違いないと判断されていた。最もその動きから、記憶への干渉は完全ではないことも分かってしまったが。

その後も確認を続け、ゲーム知識を保持しているのは、彼女だけだという結論に至った。


だが、ヒロインだっておかしい。魔力暴走時、ゲームと違う道を進んだ。それが何故なのか、分からずにいたのだ。



「……召喚された勇者の奥さんで、母親?」

「みたいね」

「……待って、じゃあ勇者って……」

「ヒロインの、前世の魂に引き寄せられたのね。ヒロインに引き寄せられたわけじゃないからか、乙女ゲームの影響を全く受けていないわね。こっちの王子様にはゲームの強制力が働いているけど」

ダーナの言葉に合わせて、今度はアレクが映し出される。


「ゲームの流れで行くなら、この王子様と勇者とのヒロインを巡る三角関係になるはずだけど、勇者がゲームの影響を受けないせいで、完全にゲームとは流れが違っているわ。そのせいで、王子様もゲームの強制力なんか関係なくなっているしね」


「つまり!!」

ヴァナの目が輝く。

ダーナが思わず身を引いた。


「勇者がいれば、もう乙女ゲームなんか関係ない。世界が破壊される心配は、しなくていいって事ね!?」

「……なるほど。私は、先が読めなくなって困ると思ったけれど、そういう考え方も確かにあるわね」

やったやったと喜ぶヴァナに、ダーナは釘を刺しておくことにした。


「勇者が帰る可能性だってあるんだから、喜んでばかりじゃ駄目よ」

「今まで一度も帰ったことないんだから、大丈夫だって」

「それがそうでもないのよ」

今度は教会が映し出される。僻地にあるフロイドのいる教会。地下に、帰還の魔方陣が描かれている教会だ。


「……でも、ここの魔方陣、使えないよ?」

「前の勇者の時はね。でも今の勇者の場合、発動条件が整ってしまったでしょう? その条件を知る事さえできれば、いつでも帰れるのよ」

「……あー!!」

ヴァナが頭を抱える。次に出てきた声は半泣きだった。

「やだやだ、そんなのやだ。せっかく問題解決したと思ったのに。ねえダーナ。あの教会潰しちゃうか、森の魔女を殺しちゃうか、どっちかしちゃおうよぉ」


「……物騒なことを言わないで。私たちに許された干渉は、ゲーム知識保持者への記憶の干渉だけ。それも、ゲームの流れと違っているから意味はないけれど。潰すとか殺すとか、そんなの禁忌行為よ」


「じゃあ、主神に聞いてくる!!」

「……え?」

ヴァナの姿が、ダーナの前から消えた。


それを見て、ダーナはつぶやいた。

「……本当に主神に聞きに行ったの? 許可が出るわけないでしょうに」

まったくもう、とつぶやく。


別に乙女ゲームが悪いわけではない。

単に未来を知る者が、それを元に好き勝手なことをするから、世界が保たないだけ。

自然な流れでゲーム通りに事態が進行するだけなら、別に何も問題ない。


でも、勇者の出現でゲームから流れは逸れた。ヒロインを守る騎士ナイトが王子様だけになったせいで、ヒロインの負担が増している。

ゲーム通りなら、川に落ちても王子は大怪我しないから、その後ヒロインが無茶する事はなかったし、牢に入れられることもなかった。



ダーナとしては、ゲームがどうなるか先が読めないから、勇者にはぜひ帰って欲しい、というのが本音だ。

記憶の干渉が完全ではなかったとしても、効果はあるのか、レーナニアも目に余る問題行動は起こしていない。一番の懸念事項が問題なければ、ゲーム通りの展開になった方が分かりやすくていい。



ダーナは別の姿を映し出す。

「帰還の方法を知るとしたら、確かに森の魔女からしかないでしょうけど、彼女の寿命がそろそろ限界なのよね。果たして、間に合うかしら」


映し出されていたのは、黒い髪、黒い目の二十歳前後の女性。しかし、その表情は、ひどく老成したものだった。


これで間章は終了です。

明日から五章が始まりますが、前にも言ったとおりに、五章の第一話(明日更新分)は主人公たち登場しません。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] えーと、………(^_^;))) 女神とリィカ達との接触は、ないですよね?大分世界観が変わってしまうんですが(^_^;) というか、今回の話で大分世界観が変わってしまったんですが…………
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