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【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
第四章 モントルビアの王宮

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魔物について

真っ赤になってうずくまってしまったリィカを見ながら、アレクは肝心な事を思い出す。

「結局、剣技がどういうことになっていたのか、聞いていないんだが?」

平然とした顔のアレクを、リィカは赤い顔のまま睨み付けた。




「原理としては、魔石の加工とおんなじだと思う」

若干赤みの残る顔で、リィカが説明を始めた。


二人の距離は遠い。手を伸ばしても届かない。

距離を取るリィカを、アレクは止めなかった。


「魔石を魔道具の形にするのに魔力で形作るんだけど、アレクが剣技を使ったときもそうだった」

最初は、普通だ。風の剣技を発動させるから、風の魔力を剣に纏わせた。

その後、剣技を発動させるとき、アレクが上乗せするように魔力を剣に送った。その上乗せした魔力が風の魔力に干渉し、形を変えていた。



「…………へえ」

説明をされても、アレクは分からなかった。

そんな事したか? という疑問は飲み込んだ。言えば、暁斗と同じだ。


「魔力を上乗せって、どうやるんだ?」

だが、そんな質問をすれば、飲み込んだ意味はほとんどない。

リィカの視線は、呆れたものに変わった。


「アレクが自分でやったんだよ」

「……………そう言われてもなぁ。ただ、普通に放つだけじゃ無理だろうから、もっと細く尖れ、鋭くなれ、と思っただけだぞ」

「それでいいんじゃないの?」

簡単にリィカが言った。


「……は?」

「魔道具を作るのも、無詠唱で魔法を使うのも、突き詰めればイメージをどれだけできるかだから。イメージできれば、魔力がそれに沿って動いてくれる。ただ、イメージって曖昧な部分も多いから、魔力の流れを自分で感じることができないと、同じ事を再現するのは難しい」

「…………へえ」

アレクはそれしか言えなかった。リィカがさらに続ける。


「練習してみたらいいんじゃないかな。何回もやれば、感覚をつかめるかも知れない。剣技をコントロールできるようになったら、無詠唱にも近づけると思うよ」

「そうだな、やってみるか。リィカも協力してくれるよな」


「協力? でもわたし、剣技のことは分からないよ。暁斗……はムリそうだけど、泰基に教えてもらった方がいいんじゃない?」

リィカは首をかしげる。こういうとき、鈍いのは感謝するべきだよな、とアレクは内心思いつつ、表情には出さない。


「タイキさんにも教えてもらうさ。でも、リィカにも協力して欲しい」

「……うん。わたしでできることなら、協力するけど」

簡単にリィカが頷く。


(本当に俺、悪い男になった気分だ)

アレクが何を考えているかなど、リィカはきっと想像もしていない。



※ ※ ※



リビングにユーリが顔を出した。

「アレク、リィカ。……なんでそんな離れて話をしているんですか?」

呆れたように言うユーリが、アレクを横目で見る。一体何をしたんだ、と言いたいのが分かったアレクだが、黙殺した。


ユーリとしては、せっかく二人きりにしてあげたのだから、リィカとどうにかなってしまえと思ったのだが、この調子ではそれはなさそうだ。


ユーリは諦めつつ、要件を伝えた。

「マルティン伯爵がいらっしゃいましたよ」

他の仲間たちと一緒に、チャドを伴ったマルティン伯爵もリビングに入ってきて、リィカが立って深くお辞儀をする。


「どうしたんだ? 呼んでもらえれば行ったぞ?」

「Bランクの魔物二体と戦ったと伺って、さぞお疲れかと思ったのですが、お元気そうですね。であれば、確かに呼び出しても良かったかも知れませんな」

マルティン伯爵がニコニコ笑う。その視線が、一瞬リィカに、その首筋に行ったのが分かって、アレクは冷や汗をかく。


考えずとも、丸見えの場所だ。

つけるなら、見えない場所、服で隠れる場所に付けろ、とそういえば教わった、と今頃思い出しても遅い。


「その二体の魔物について話を伺いましてね。時間がないので簡単ですが、調べたんですよ。それを皆様にお伝えしたくて伺いました」

アレクの表情が、真剣なものに変わった。



※ ※ ※



マルティン伯爵の話が始まるまで、多少の時間を要した。

お茶を出しに来たメイドが、リィカの首筋の痕に気付いて、問答無用で連れ出したからだ。

戻ってきたリィカは、首にスカーフを巻いていた。その顔は、若干赤い。


ちなみに、仲間たちは誰もその痕を見ていない。メイドの行動が理解できなかった一行だが、泰基だけは何となく分かったのか、苦笑していた。

その目は、切なそうだった。



魔族の男の、実験の成果、という単語から、アレクたちは魔物の能力について、ルイス公爵たちに話を行っていた。

マルティン伯爵は、それを元に調べてくれたようだった。


サイクロプスは力の強い魔物だが、逆に言えばそれだけ。回復能力はなく、剣技に似たものを発動させる事も不可能。

カークスも炎は吐くが、三つの首同時に吐くだけだ。タイミングをずらして連携させる事は無理。炎の壁での防御などしない。


基本的に、巨人の魔物は知能が低い。そのため、注意するべき点にだけ注意すれば、Bランクの中では、比較的倒しやすい魔物だと言われている。


「かなりの可能性で、実験とやらは魔物の強化の実験でしょう。しかし、サイクロプスの最期を伺った限りでは、まだ成功している訳でもないのでしょう」

マルティン伯爵は、話を締めくくった。


「……魔物の強化か」

つまり今後も強化された魔物が出てくるかもしれない、と言うことだ。

厄介だった。



※ ※ ※



アレクは王子だ。

王族が、その血を次代に残すのは義務だ。そのため、十五歳になる少し前、子を残すための授業を受ける事も義務だった。


それでも、アレクは自分には必要ないと言った。

しかし、結局は一人じゃ恥ずかしいという兄のアークバルトに引っ張っていかれ、二人で授業を受ける羽目になった。二人の方が絶対に恥ずかしい、というのがアレクの感想だった。



果たして、あの授業を受けたことが良かったのか悪かったのか。

アレクは一人、マルティン伯爵に呼び出されていた。

リィカの首筋についたキスマークについて懇々と説教されて落ち込みつつ、そんな考えが頭をよぎっていた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 学園の貴族クラスでは性教育の授業があるのかと思ってしまいました(^_^;) 王子2人に教えたのは誰なんでしょう?R18なら女性(メイド?)が実践で、なんですが(^o^;)
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