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【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
第四章 モントルビアの王宮

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ルイス公爵VS国王

サブタイ、VSなどとなっていますが、戦っている感はゼロです。すいません<(_ _)>

戦いが終わり、一行は結局またルイス公爵の屋敷に戻ってきていた。

暁斗、泰基、バルの三人はダメージを受けているし、リィカは魔力が空になった。

すぐに旅立てる状態ではなかった。



水蒸気爆発スチームバースト》後も、少しは魔力を残していたリィカだったが、魔族との戦いで上級魔法を使ったことで、魔力が尽きた。

立っていられず地面に座り込んだ。


「僕たちみたいに魔力の多い人は、魔力が空になると力が入らなくなるとは聞いたことありますが……」

ユーリが首を傾げる。完全に魔力が空になった事がないので、実際にその状態を見たのは初めてだ。


「つまり、今リィカは力が入らなくて、立つこともできないってことか?」

アレクはなぜか楽しそうだ。近づいてくるアレクに、リィカは嫌な予感がしても、動くことができない。

そして、あっさり横抱きに抱えられた。


「――アレク!! 少し休めば、魔力なんて回復するから! アレクだって疲れてるでしょ!」

「心配するな。俺はほとんどダメージを受けていない。リィカ一人抱えても大したことない」

そのやり取りを笑顔で見ていたルイス公爵が、今夜一晩泊まるように勧め、一行がそれを受け入れた形だ。




リビングに通される。

リィカはソファに下ろされると、大きく息を吐いた。

だが、自然にアレクが隣に座り、体を支えるように腰に手を回されて、硬直する。


「……アレク、わたしは衰弱しているわけじゃないの。魔力が切れただけ。もう自分で動けるから」

「そうか」

短い返事をしただけで、手を離してくれる様子はない。


(本当に嫌なら、そう言えばいいんだけど)

少し前、サルマと交わした会話を思い出す。サルマに似たような事を言われた。

けれど、拒否する言葉が出てこない。諦めつつも受け入れてしまっている。


アレクが好きかどうかは分からない。しかし、アレクに心配されて守られるのも悪くないかも、と思っていることに気付いていた。



※ ※ ※



ルイス公爵は、屋敷でのんびりはできなかった。

捕らえた王太子とベネット公爵の対応がある。

ジェラードは現場に残した。被害自体は少ないとは言っても、貴族街にあれだけ大きな魔物が現れたのだ。混乱しないわけがなかった。


屋敷内の使用人の人数は、決して多くない。

忙しいだろうに、主人の自分が屋敷にいられず、勇者たちの対応を使用人たちにお願いすることに、申し訳なさも立つ。が、使用人のトップである執事はあっさり言った。


「全く手が掛かりませんから、問題ありません。むしろ、もう少し用事を言いつけて頂いた方が、やりがいがあっていいのですが」

「………そうか」

困った顔をしたルイス公爵が返せたのは、その一言だけだった。




王宮へ向かったルイス公爵は、王太子とベネット公爵を、貴族用の牢に入れる。

王太子は離せ、出せとうるさい。

ベネット公爵は、「なぜ平民が……」と呪詛のように繰り返している。


国王の下へと向かうが、妙に城内が静かだ。誰とも行き会わない。

疑問に思いつつも、国王の私室まで行けば、さすがに兵士が二人立っていた。


国王の護衛だけあって、ルイス公爵はあまりいい感情を持たれていない。それを知りつつも、城内の状況について確認する。そうしたら、隠そうともしない呆れた視線を向けられた。


「ご存じないのですか? 貴族街に魔物が現れたそうです。それで、安全な場所に避難しているんですよ。国王陛下も寝室に籠もられています。城内でも奥まった安全な場所ですから」

ルイス公爵は、あんぐり口を開けた。

呆れたのはこっちだ、と思う。


「現れたのは貴族街だ。城内じゃない。避難させるべきは街の人々だ。その指示を出すべき人間が、真っ先に避難してどうする?」

ルイス公爵の語尾に被るように、私室の扉がバタンと開いた。


「お主ら、やはり私は城内からも出る! 街中の魔物など放置……」

言いかけた国王の言葉が止まる。正面にいるルイス公爵を見て、その形相が歪んだ。

「……フェルドランド!! なぜ、貴様がここにいる!?」

「国王陛下には、ご機嫌麗しく」


麗しくなどないだろうが、わざとらしく頭を下げて挨拶を述べる。

国王は実の兄ではあるが、しばらく兄と呼んでいない。名前で呼ばれるのも、実に久しぶりだった。


「ええい! 貴様に用などない。下がれ! 私は忙しい!」

「魔物を放置して、逃げるおつもりで?」

「私が移動すれば、そこに人が集まる! そこが新しい王都だ!」

集まるわけがないだろう、と思うが、口には出さない。出したところで意味はないからだ。


「Bランクの魔物が、二体現れたそうですね。無論、私も存じておりますよ」

「――Bランク!?」

「――二体だと!?」


反応したのは兵士二人だ。国王は目を大きく見開いて、口をパクパクさせるだけ。

ルイス公爵は口の端を上げる。国王のこの顔を見られたのだから、良しとしよう。


「おや、ご存じなかったのですか? ですが、ご安心を。二体とも勇者様ご一行によって倒されておりますよ。私は目の前で彼らの戦いを見ましたが、凄まじかったですよ。特に、平民出身という魔法使いの少女。混成魔法まで使ったのですから、驚きです」

「…………は?」

なおも呆けたままの国王に、ルイス公爵は意地悪く笑いかけて、本題を切り出した。


「そのBランクの魔物が街中に現れた原因が、王太子殿下とベネット公爵です。目撃証言がありました。目こぼしできる事案ではございませんので、捕らえて牢に入れてあります。詳細をお話し致しますので、このままお時間頂戴致しますね?」


この国王のことだ。下手すれば、無罪放免にしかねない。

現場に残ったジェラードに、できるだけ目撃証言を集めておけ、と伝えてある。おそらく、いくらでも出てくるだろう。


場所が貴族街だというのも、ある意味幸運だった。貴族たちからの不満も出るだろう。

その上で、国王の下す判決がどのようなものになるのか。


(その結果次第では、私ももう遠慮はしない)

ルイス公爵は、覚悟を決めていた。


結果がどうなるかは、まだもう少し後の回になります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 子供が王太子だけというのは悲劇ですね。 しかし、全ての元凶はコレを王にしてしまった先王の気がする。
[一言] 王の裁定の結果次第ではルイス公爵が王を追放して王になるのかな。王太子の下にまともな王子、王女はいないのかな。
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