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【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
第四章 モントルビアの王宮

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現状確認①

説明回です。

③まで続きます。すいません……。

次の日の朝。

アレクたちは、国王たちと一緒に朝食を摂っていた。


「勇者様。やはり本日もこのままお留まり頂きたいのだが、よろしいだろうか」

顔をしかめたくなるのを泰基は我慢しつつ、国王に向き直る。


「昨日のうちに、ほぼすべての国と面会を果たしたはずですが、まだ必要でしょうか?」

「ええ。もしかしたら、追加の質問等があるかもしれませんし。長くいられないのは承知しておりますが、本日は留まって頂きたい」

答える国王の表情は読めない。


「さすがに、明日の出発はお止めいたしませんので、お願いしたい」

最低限言いたかったことを先に言われ、仕方なく頷いた。



※ ※ ※



「……もうあと一日かぁ」

部屋に戻って、暁斗が力なくつぶやく。

「ごめんな、暁斗。……我慢できるか?」

「……うん」


昨晩、暁斗はまた母親が殺される瞬間の夢を見て、飛び起きた。

「母さんなんか……」

いつもみたいにつぶやこうとして、でも言葉が止まった。


リィカを思い出す。頭を撫でてくれた、優しい手。

泣きたくなるのを、必死で堪えた。

しばらくして、落ち着いて思ったのは「リィカに会いたい」だった。



※ ※ ※



コンコン

ドアをノックされ、ユーリが誰何する。


「アルカトルの大使殿より連絡がありまして、皆様に屋敷に来て頂けないか、との事です」

入ってきたメイドに言われ、一同の、特に暁斗の顔が明るくなる。

「すぐに向かうと伝えてくれ」

アレクの返事に、メイドは一礼して出て行く。


「リィカ、いるかな」

暁斗の声は弾んでいた。



屋敷に到着すれば、出迎えたのは、昨日と同じくチャドだった。

だが、どこか表情が硬い。


「……何かあったのか?」

アレクが聞けば、チャドはサッと視線をそらせる。


「主よりお話がございますので」

嫌な予感がした。



通されたのは、昨日と同じ部屋だ。

そこに、マルティン伯爵以外にもう一人先客がいて、アレクが目を見開く。

「ジェラード殿!?」

「久しぶりだ、アレクシス殿」

ジェラード・フォン・ルイス。この国で、アレクが信頼できるといった公爵家の長男だった。



全員が着席し、各人の紹介が済んだ所で、アレクが口を開いた。

「なぜジェラード殿がこちらに?」

「マルティン伯爵とは懇意にさせてもらっていてね。力を貸して欲しい、と頼まれたものだから」

意味ありげにマルティンを見るジェラードに、アレクの嫌な予感は増していく。


「……何があった?」

「それをご説明させて頂きますが、皆様、どうか落ち着いて話を聞いて下さい。怒鳴る程度であれば構いませんが、ここから飛び出して殴り込みにいくのは、ご勘弁下さい」


マルティンの不穏な前置きに、不安を隠せない。

アレクは手を握りしめた。

「……さっさと言え」

マルティンは、一礼した。


「話は、昨日保護を頼まれました、リィカ嬢についてです」

誰かの、息を呑む音が大きく響く。


「昨日、おそらく、アレク様方がベネット公爵の馬車に乗って、去った直後くらいでしょう。兵士たちがリィカ嬢と思わしき女性を剣で殴り、犯罪者だと連れ去った所を、多くの者が目撃しています」

「……………………え?」

つぶやいたのは、誰だったのか。


「その場で言い渡されていた罪状は、『勇者様と王子殿下を誑かした事』だそうです。ほとんど抵抗することなく、馬に乗せて連れて行かれたようですね」

「………………なに、それ? …………たぶらかした……って、なに?」


暁斗が身を乗り出す。顔が真っ青になっている。

腰が椅子から浮きそうになっているのを、泰基が押さえ込んだ。

だが、泰基もそんなに状態は変わらない。

アレクも、自分の顔から血の気が引くのを感じた。

手を握る。ここで動揺していても、何にもならない。

呼吸を整える。


「…………なぜ、そんな理由で。いや、そんな罪状を突きつけたのなら、当事者は俺たちだろう。俺たちは、何も言われていない」

マルティンは、沈痛な顔を浮かべる。


「ええ、そうですね。この場合、加害者がリィカ嬢なら、被害者は勇者様やアレク様です。被害者に何も話がいかない、というのは、普通であればあり得ません」

マルティンは、一度言葉を切る。


「ですが、その前にまず、リィカ嬢の居場所の確認をするべきだと判断致しました。しかし、私では流石に調べられない。そこで、ルイス公爵にお願いしたのです」

視線を向けられたジェラードは、頷いて話を引き取る。


「普段からマルティン伯爵にはお世話になっているからね。――調べてみたけど、兵士に連れてこられて、城の地下牢にいれられて、今現在もそのままだ。それは間違いないよ」

「…………地下牢」

アレクが軽く息を吐く。バルとユーリも、少しだけホッとした様子を見せる。


「うん。牢ではいかなる暴力も厳禁だ。矛盾しているけど、ある意味身の安全は確保されている。もう一つ知らせておくと、魔封じもされていない。魔封じの枷はしっかり管理されているから、例え一つでも数が違えばすぐに露見する」

「……………そうか」


魔法が封じられていないなら、リィカにできることは多い。

そう簡単に、危険な目には合わないだろう。


「……まふうじのかせ、とはなんだ?」

泰基の、誰にとも知れない疑問に答えたのは、マルティンだ。


「罪を犯して捕らえた者に、自由に魔法を使われては困りますので、その魔法を使えないように封じるための枷です。魔法が使えなくなるだけでなく、両手の自由も封じられます。間違っても盗み出される事のないように、管理が厳重なのです」


「……リィカが、それを付けられなかったのは?」

「兵士に、無抵抗で捕らえられた事が理由の一つでしょう。もしそこで魔法を使って抵抗していれば、間違いなく付けられたでしょうし、罪状がさらに増えた可能性もあります。

 後は、平民が魔法を使えるわけがない、という驕った考えがあったのではないかと」


泰基が、大きく息を吐く。

驕った考えでも何でも、それが良い方に働いたのであれば、良かったと思うしかなかった。


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