夜中の誘惑
「ちょっとコンビニ行ってくるわ」
「は!?ちょい待ち」
おもむろに立ち上がる彼女の腕を思わず掴む。
ついさっきまで2人で撮り溜めたアニメを見ながら
ダラダラ晩酌をしていた。
今日はちょっとガッツリ系で言ってたから、多分
甘いものが欲しくなったんやと思う。
その気持ちわからんこともないけど。
時刻は間もなく0時・・・
何故、一人で行こうとしたんや。(しかもTシャツ短パンの
部屋着でorz)
「どうせ甘いもの食べたいとかやろ?アイスストックは?」
「最近目ぼしいのがなくて、延期してたらもうなくなった」
「じゃあ、僕が行く」
「自分で選びたいもん」
「こんなんあるでって電話したるやん」
「さっきちょっと寝かけてたやんか。ほぼ横やしすぐ
帰ってくるって」
「そういう問題じゃありません。夜中やし。どうしても
一人でって話なら、せめて着替えなさい」
「上羽織ったら大丈夫やって。ダッシュで二分やで?」
「ほら、着替えんのめんどくさいやろ?」
「じゃあ、一緒に行こうや。私は上を羽織って行く。
和也は眠たいけど私に付いてきてくれる。はい、これで
お互いめんどくさいこと歩み寄って解決!ほら、早く」
全く解決にはなってない案を無理やり叩きつけられ、
渋々ボディガード役として、連れて行かれる。
店に入り、珍しく深夜にいる顔見知りの店員さんに
軽く挨拶をして買い物を始める。
「何にしよっかなー」
「アイスちゃうんかいな」
「もしかしたらお菓子とかジュースが美味しそうなんあるかも
知れんやん?」
「まぁ、ぼちぼち見なさいな」
彼女はちょっと難しい顔をしながら、店内をウロウロしている。
選び切らんのやろなあ。
3分ほどして、「じゃじゃーん」という声で現れ、
「決めました!このクレープと新発売のカフェオレにします!
で、このエクレアはまた半分こしよー」
とニコニコしている。
あー両手いっぱいに持って可愛いなあ。
1つでも多く食べれる方法を見つけたんやなあ。
「後、見てー!明太帆立おにぎりやって!」
「絶対美味しいやつやん、買ってみよ」
「和也の好きが詰まってるもんな」
「この時間からのおにぎりはアウトかもやけど、誘惑には勝てん」
「あたしの気持ちが分かるじゃろ~」
「芽衣は負けすぎな。じゃあ、僕M○Wにしよっと。ほら、カゴ入れ」
「いいよ。あたしが誘ったんやし」
「いいよ。僕も買い物してるんやし」
「では、ゴチになります」
当初予定してた倍ほどの買い物をして、家路に向かう。
一瞬繋いでた手をおもむろにほどき、
「見て見て!にゃんこの目!」
そう言いながら、頭の上で丸を作り、無邪気に笑う。
外灯に照らされた影で猫の目に見えるというもの。
何やそれ、可愛すぎるやろ。
「和也もやろ!にゃんこの目!」
「・・・・にゃんこの目」
「もっとさー、あっ!」
「何?」
「今、黒猫走ってった!あたしらのにゃんこの目で
呼び寄せたんかなあ?」
「呼び寄せるって何やねんな」
「黒魔術みたいな?」
「かけるなかけるな」
「あーやっぱりエクレア食べて、クレープを和也と
分けよかなあ」
「別に両方食べたらええのに」
「いやー最近ここのお肉が・・・・」
「夜中にコンビニでスイーツ買ってる時点でアカンけどな」
「ぐっ、痛いところをっ」
「じゃあ・・・・帰っていっちょ激しい運動でも致しますか?
(ニコニコ)」
「・・・・いや、二日に分けまーす」
「なんでやねんな、ボディガード代やん」
「ツケでお願いしまーす」
「そんなんあるかあ!」
「あはは、早よ帰るよー」
あっという間に家まであと数歩。
たまには夜中コンビニも悪くないかな。